650ccとは思えない湧き上がるトルクに興奮!

ロイヤルエンフィールド INT650 試乗【良き時代の英国クラシックの香りを現代の感性で再び……】

“バイクの最新技術”と聞くと、よりハイスペックなマシンや多彩な電子制御のための言葉に思えるが、ロイヤルエンフィールドはクラシックフィーリングを再現することに重点をおき、その技術を投入。ライダーに寄り添うような優しさと安心感を追求し続けている。尖った部分がなく、どこまでもフレンドリー、速度を問わずバイクの楽しさを教えてくれるのがINT650だ。


●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム

木漏れ日が似合うバイク、それがINT650だ。空冷エンジンを搭載するどこか懐かしいそのスタイルは、今となってはとても希少な存在。オーソドックスなバイクらしい魅力が詰まっている。

ロイヤルエンフィールドは空冷パラレルツインを熟成させ続ける

深緑の隙間からINT650に光が降り注ぐ。メッキパーツはキラキラと輝き、アルミ地肌のクランクケースカバーやエンジンのフィンは優しい輝きを放つ。梅雨の合間を見つけ走り出し、熱のこもった市街地を抜けて山の中に飛び込むと、冷涼な空気とクラシックバイクのようなディテールに癒される。

ロイヤルエンフィールドのINT650は、左右どちら側からでも絵になりやすい。このスタイルはどんな景色にもすぐに馴染むから、行く先々で自然と写真の枚数が増えていく。

2018年に登場したアップハンドルのINT650とカフェレーサーのGT650は、2022年モデルよりユーロ5仕様に。昨今、空冷エンジンは数を減らしていく一方だが、ロイヤルエンフィールドは規制にしっかり対応している。エンジンフィーリングはユーロ4と変わらない印象で、力強さと明確なトラクションは健在だ。

バイクに興味を抱き始めた少年時代に憧れた英国のバーチカルツインやビッグシングルのバイク達より、車体は2回りほど大柄で重量もあるけれど、ロイヤルエンフィールドのINT650とGT650は当時を雰囲気を現代に再現している。

その車体構成はとてもシンプルだ。パラレルツインエンジンをイギリスの名門であるハリスフレームに搭載し、英国クラシックを感じさせてくれるディテールが溢れる。ロイヤルエンフィールドは、現在インドのメーカーだが、R&Dはイギリスで行い、良き時代の英国気質を追求し続けている。

648ccの空冷パラレルツインエンジンは、厳しい規制にも対応。燃調のセッティングも素晴らしく、現代的な走りにきちんと順応している。

金属パーツが多いのもINT650の特徴。素材の仕上げにもこだわっている。クランクケースカバーは磨くほどに輝きを増すアルミ地肌仕上げ。

アップハンドルのINT650は未舗装路にも入っていける安心感。どんなシチュエーションでも瞬時に景色と馴染むのは、トラディショナルなスタイリングだからこそ。

最新の空冷パラレルツインがここにある

身長165cmの僕の場合、車格はそこそこ大柄に感じるが、それが大らかな乗り味とこの存在感に繋がっている。シート高は805mmとこのクラスにしては標準的。跨ると自然な場所にあるハンドルに手を伸ばし、同じく自然な場所にあるステップに足を乗せて走り出す。

どこにも難しさはなく、1つ目のカーブでINT650とライダーは一体感を得ることができる。趣のある空冷エンジンは極低速から明確なトルク感を伝え、スロットルを開けるのが本当に楽しい。

低速域の逞しさは648ccとは思えないほどで、270°位相の不等間隔爆発を楽しむ。爆発間隔の広いこの設定は、ドゥカティなどの90°Lツインと同じで、2000〜3500rpmくらいまでで十分な気持ちよさを味わえる。

ジワリとゆっくりアクセルを開けてもスルスルと加速できて扱いやすいが、ワインディングでは意外なスポーツ性を披露。立ち上がりではシフトアップは早めに済ませ、2000〜3500rpmくらいをキープ。そこからスロットルを素早く大きめに開ける。すると、後輪から感じるトラクションがより明確になるのだ。

最新のインジェクションや点火の制御、そして空冷ならではの特性がこの走りを可能にしている。ここでジワリとアクセルを開けると、このエンジンが持つ本来のトラクションが得られないため、ある程度は大胆な操作が求められる。また、クラシカルな外観からは想像がつかないほどシフトタッチがよく、これもスポーティな走りに貢献している。

走り出した瞬間からバイクとライダーがバランスするハンドリング。座る位置や荷重コントロールにしっかりに応えてくれるスポーティさを持っており、キャリアを問わずバイクの本質的な楽しさを教えてくれる。

前後ブレーキはディスク。唐突に立ち上がらない過渡特性を備え、扱いやすさが光る。タイヤはフロントが100/90-18、リヤが130/70-18となる。

GT650よりも馴染みやすい寛容なハンドリング

前後18インチが生み出すハンドリングは大らかだ。後輪を軸に自然なフィーリングで前輪が追従してくる抜群のバランスで、これはセパハンのGT650よりも馴染みやすいキャラクター。ライダーはバイクの動きに逆らわずに乗り、シートに身を委ねればどこまでも軽快にコーナリングを楽しむことが可能だ。

クラシックスタイルだから、空冷のパラツインだから……。実は僕も2018年にINT650が登場したばかりの頃は、そんな先入観を持っていた。しかしながら試乗すると、見た目と走行時のギャップの大きさに驚かされた。走り出した瞬間に「こんなバイクを待っていた」と強く思い、その高いスポーツ性に夢中になった。そしてその好印象は5年経った今もまったく色褪せていない。むしろ、こういったナロータイヤや空冷エンジンのバイクが淘汰される近年において、このパッケージはまずます希少な存在といえるだろう。

フロントフォークはインナーチューブ径41mmの正立。リヤは2本ショック。しっかりとしたフィーリングで高荷重にも耐える足まわりだ。

エメラルドグリーンのあしらいが斬新なタンク。様々なカラーバリエーションが用意されているのも嬉しい。タンクキャップはエノット風で、イギリスを感じさせてくれるディテール。

高速巡航も得意。だから長距離が苦にならない

こういったクラシカルなフィーリングを持つエンジンは高速道路の巡航な苦手なケースもあるが、INT650は長距離も得意だ。100km/h区間も120km/h区間も、簡単に周囲の流れをリードして走れる。120km/h巡航時は振動が大きくなるが、100km/hから120km/hまでの加速はとても気持ちが良い。

また相性もあるとは思うが、薄くて上質なシートによってお尻が痛くなりにくかったのも好印象。だからこそ、もっと遠くへと距離を伸ばしたくなる。

少年時代に憧れだった本物の英国クラシックは、現実的な使用勝手を考えると大人になったいまでも遠い存在だ。しかし、英国クラシックのバイクらしさや美しさは、今でも憧れの存在。この埋めがたい現実において、一つの解決策を提案しているのがロイヤルエンフィールドだ。英国クラシックの雰囲気を継承しつつ、モダンな走りかなえてくれる稀有な存在である。

電子制御満載のバイクが多い中、このシンプルな作りはとても希少。INT650は、いまシンプル・イズ・ベストの良さを教えてくれる数少ない一台だ。

ロイヤルエンフィールド東京ショールームでは試乗車も用意しているので、是非とも足を運んでいただきたい。

昔ながらの2眼式のメーター内には、アナログ式のタコメーターとスピードメーターを装備。マフラーエンドは往年のイギリス車を思わせるリバースコーン形状。歯切れの良いエキゾーストノートを奏でる。

薄手で硬めのシートはライダーの荷重変化をきちんと感じ取ってくれるスポーティさと長距離でも疲れにくい上質さを持っている。

どのアングルでも絵になるため、写真の枚数がどんどん増えていく。ロードバイクなのに深緑の中でも映える。

アップハンドルのINT650のハンドルはラバーマウント。ちなみにセパハンのGT650はフロントフォークにダイレクトマウントのため振動は大きめ。長距離はポジションも含めINT650の方が楽だ。サイドカバーにはパラレルツインの文字が。エンジンは前傾して搭載されるためバーチカル(直立)ツインではない。

アルミバフ仕上げの左右のエンジンカバー。放置すればくすんでいくけれど磨けば光る。オーナーが育てるディテールだ。丸みを帯びた独特の形状はとても触り心地が良いのも印象的。

主要諸元■全長2119 全幅788 全高1120 軸距1398 シート高805(各mm) 車重217kg(装備)■空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ 648cc 47.7ps/7150pmm 5.33kg-m/5150rpm 変速機6段 燃料タンク容量13.7L■ブレーキF=φ320mmシングルディスク+2ポットキャリパー R=φ240mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=100/90-18 R=130/70-18 ●価格:94万7100円(キャニヨンレッド、オレンジクラッシュ、ヴェンチュラブルー)、96万8000円(ベーカーエクスプレス、ダウンタウンドラッグ、サンセットストライプ)、99万8800円(マーク2)※写真はダウンタウンドラッグ


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