バイクの免許、取ろう! と思ったことは、実は20代後半にもあった。当時は見送ったのだが、40歳で免許取得にチャレンジするにはいくつかのきっかけが重なったのも大きかった。乗ってみたいと思えるバイク・ヒマラヤに出会えたこと、そして何よりも原田哲也さんの走りを間近で見たことだ。とはいえ、私“クールデビル”時代のことを詳しく知らず、無知ゆえの無礼があったのではないかと今更ながら反省する次第。
●文/まとめ:ミリオーレ編集部(村田奈緒子) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
20代後半、好奇心と勢いだけでは進めなかったバイク免許
少し個人的な昔話をしようと思う。
20代後半、私はある出版社に転職をし、そこで出会ったのがバイク編集部の人たちだった。当時の編集長は私が大学の後輩と知ると、他部署の新人にも関わらず結構可愛がってくれた(と思っている)。
その編集部のメンバーはバイクが本当に好きで、バイク以外のことはできない(と思われる)人ばかりで、そんな彼らが心底惚れているバイクというものに一度は乗ってみたいな〜と思ったのだ。
だが、教習所には足を踏み入れなかった。ちょうどその当時は周囲でバイク事故も多く、悲しい別れもあった。そして怯んだのだ。単なる好奇心と勢いだけでは進めなかったし、バイクってやっぱり怖いなという思いが色濃く広がったことを今でもよく覚えている。
だから、バイクへの軽い好奇心は元々なかったかのように小さくなっていった。仕事で忙しくしたり、他のことに興味関心がむくうちに、バイクへの気持ちはやがて無になった(と、つい最近まで思っていた)。
やりたいと思ったらやっておかないと人生なにがあるか分からない
無になったと思っていた気持ちがわずかに残っていることに気づいたのは、30代後半のこと。このとき私はガンを患っていた。幸いなことに初期の発見だったが、検査〜入院・手術、通院治療、投薬治療と怒涛の変化はなかなかハードで、仕事との両立や自分の体調や気持ちを落ち着かせるのに1年ほどかかった。
健康って大事だと痛感した反面、人生やりたいことはやっておかないと! 明日なにがあるか分からないのだ! と強く思った。そして、やっておきたいことをぼんやり考えたときに、バイクに乗ってみたい気持ちがふんわり再浮上。とはいえ、バイクは怖いイメージがあったので、この段階では決意には至らず。でも街中でバイクを見かけるたびに再び目がいくようになっていったのもこの頃だった。
元世界GP王者の華麗な走りに魅了されて
バイクへの思いが少しばかり高まりつつある中、2020年の筑波サーキットで開催された耐久茶屋の観戦が私の背中を押した。
このときの耐久茶屋には、元世界GPチャンピオンの原田哲也さん、マジカルレーシングの蛭田 貢さん、そしてMIGLIORE ディレクターの小川がチーム参戦。年齢も違えば、職業も異なる男たちがバイクを囲んでキャッキャしている様子は、心底楽しいんだろうなぁとハタから見ていても分かるほど。ルマン式スタートはドキドキしたし、レースが始まればどのライダーも懸命にマシンをコントロールしている感じがして、終始ハラハラしながら観戦した。
が、そのなかでも明らかに走りが違うライダーがいた。それが、原田さんだった。素人の私が見ても「なんて無駄がなくて、きれいなんだろう!」と思うほどだ。前を走るバイクを迷いなくサラリと抜くときも、コーナリングのラインもどれもが惚れぼれするほど美しい。
私にとってそれまで工業製品の塊という認識だったバイクがまるで俊足の動物のように思えたし、バイクってこんな風に乗ることができるんだ!と、感心したのだ。
そして思った。人生1度は、バイクに乗りたい。
意気込んだ教習所通いは、梅雨時期スタートが決定
そんなこんなで、恐れ多くも元世界GPチャンピオンの走りに大いに感化されて決意したバイク免許取得。冬は寒いからと言い訳をしつつ熱意は冬眠させ、念願の教習所に赴いたのは40歳の春のこと。気合い十分にプラン料金全額を握りしめて行ったわけだが、受付早々に出鼻をくじかれた。
「いまオプション(料金をプラスして最短での受講がかなうコース)を追加しても、最短で2ヶ月先のスタートになります」
図らずも梅雨時期に教習スタートという条件を提示されたわけだが、もう戻りません! 普通二輪+大型二輪の2車種プランにオプションとやらも追加して申し込みを完了。ルンルンしながら帰宅したのだが、このときの私は2ヶ月後に始まる挫折の数々をまだ微塵にも想像していなかった――。
次回は、自分の不甲斐なさに少しばかり涙した教習所でのアレコレをお伝えする予定。当時は、もうバイクになんか乗れなくてもいいとまで思い詰めたどん底を振り返りま〜す。
I want to go to the Himalayas someday with Himalayan!
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