
●文/写真:モーサイ編集部(高田胤臣)
“人+たくさんの荷物を運べる”ことが大事
1990年代頃だったろうか、日本でピックアップトラックがちょっとしたブームになったのは。ローダウンしたり、派手なカラーリングにしたり、カスタムも流行った。
ちなみに、タイでも少し前までは(2000年代初頭ぐらい)ピックアップトラックが人気の車種だった。といっても、“カッコいいから”というような理由ではなく、ピックアップトラックとしての本来的な使い方=“人+たくさんの荷物を運べるから”というのが人気の理由だった。
近年はタイも経済成長が進み、都市部ではセダン/ワゴン/SUVなど、いわゆる“乗用車”の数も増えてきたが、収入に対しクルマの価格は高く、関税等の影響もあり、安い車種でも日本の1.5倍以上はすると思っていい。
それゆえ、クルマよりも安価なバイクに乗る人がまだまだ圧倒的なのだが、ピックアップトラックが人気だった理由と同じく、バイクもまた実用性を重視した使われ方が多い。
そのため、タイでは“独自の改修”が施されたバイクを見かけることが珍しくない。
市場では荷物運び用や屋台バイクが走っている
“働くバイク”といえば、東南アジアなどでは当たり前の職業としてバイクタクシー(以下バイタク)がある。本来の役目は、大通りから小道の奥へ行き来するための交通手段だ。しかし、意外かもしれないがバイタクは基本的にノーマル状態のままが多い。
ちなみに、車両は運転手の持ち込みが基本。若いライダーはスポーティーなバイクが好きなので、それをそのままバイタクに使っているケースも。シートが細く狭い車種のバイタクにたまたま当たってしまうと、乗客としては乗りにくくて仕方ないのだが…。
では、タイで見かけるバイクの“独自改修”はどういうものが多いかというと、目的はシンプル=荷物運搬用である。
比較的簡単に作れるからだろうか、なかでも主流なのは、バイクをサイドカー化して荷台を付けたものだ。市街地では市場や商店で、地方であれば農家が作物を運ぶために使われる。
そういったバイク(サイドカーと言ったほうがいいのだろうか?)を職人技で作る整備工場があって、溶接でバイクに荷台を直付けするのかと思いきや、荷台はアタッチメントで取り外しが可能な構造となっているなど、いろいろ手が込んでいる。
また、タイ人は過積載など考えずに大量に荷物を積み込むため、素材も鉄からステンレスまでさまざまなバリエーションがある。
なかには荷台がそのまま屋台となっているバイクもある。かなり横幅があるので、曲がる際には相当危なっかしい気がするのだが…。
タイにも車検制度のようなものはあるが(以下、便宜上“車検”と表記する)、その規則は緩く、こうした独自改修が多く行われる要因となっている。
クルマでさえ、新車から7年間は車検がなく、そのあと毎年ある車検においても、ブレーキの具合がちゃんとしているかチェックする程度のものだ。
バイクの車検は新車から5年と短いとはいえ、実態はあってないようなもの(ただし、ここ数年で違法マフラーや違法カウルなど車検ではじかれるようになった)。
それに、警察は基本的に働くバイクを取り締まることはない。一般の人が乗るバイクにはいろいろと難癖をつけて罰金を徴収するが、仕事で使われるバイクは、仮に違法改造であっても放っておいてくれるようだ……
※本記事は2021年10月8日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
房総半島の意外な魅力「素掘りトンネル」 東京から小一時間で行けるのに意外と秘境感あふれる千葉・房総半島。ここには味わい深い素掘りのトンネルが多数存在する。そんな異次元空間を求めて、半日だけショートツー[…]
量産車とは異なる無骨さを持ったカワサキ Z750 turbo 【1981】 洗練されたスタイルで後に登場した量産車とは異なり、武骨な雰囲気の外装が目を引くカワサキのプロトタイプは、1981年の時点では[…]
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
ヤマハ RZV500R「2ストV4エンジン搭載で衝撃のデビューを果たしたYZR500レプリカモデル」 ライトウエイトピュアスポーツからレーサーレプリカへの橋渡しであり、起点とも言えたヤマハ RZ250[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
クルマの世界では「並列」表記はほぼ見かけない カタログやメーカーwebサイトでバイクのスペックを眺めていると、エンジン種類や形式の表記で「直列」や「並列」という文字を見かける。いずれもエンジンブロック[…]
実燃費の計測でおなじみだった「満タン法」だが…… エンジンを使った乗り物における経済性を示す指標のひとつが燃費(燃料消費率)だ。 「km/L」という単位は、「1リットルの燃料で何キロメートル走行できる[…]
ボクサー誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカー。 そのBMWが[…]
日本のハイオクは海外ではレギュラー!? オートバイに限らずクルマでも輸入車はほぼすべてハイオク指定。世界に誇る高性能な日本車は、基本的にレギュラーガソリンの給油で事足りる。 そういうところが日本の技術[…]
「緑のおじさん」こと「駐車監視員」の概要 緑のおじさんは、正式には「駐車監視員」と言い、警察から業務委託を受け、駐車違反車両の取り締まり業務に当たる人を指す。 緑のおじさんと呼ばれているものの、18歳[…]
人気記事ランキング(全体)
使わないのは「どうせ利かない」もしくは「踏んでもよくわからない」…… リヤブレーキをかけているライダーは、驚くほど少ない。 ブレーキペダルを踏んでも利いているかわからない、すぐABS(アンチロック)が[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
ホンダ新型「CB400」 偉い人も“公認”済み ホンダ2輪の総責任者である二輪・パワープロダクツ事業本部長が、ホンダ新ヨンヒャクの存在をすでに認めている。発言があったのは、2024年7月2日にホンダが[…]
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
最新の投稿記事(全体)
1位:スズキ『MotoGP復帰』&『850ccで復活』の可能性あり?! スズキを一躍、世界的メーカーに押し上げたカリスマ経営者、鈴木修氏が94歳で死去し騒然となったのは、2024年12月27日のこと。[…]
1105点の応募から8点の入賞作品を選出 株式会社モリタホールディングスは、このたび「第20回 未来の消防車アイデアコンテスト」を実施、受賞作品が決定となりました。 全国の小学生から集まった、1105[…]
「ETC専用化等のロードマップ」の現状 2020年に国土交通省が発表した「ETC専用化等のロードマップ」。その名の通り、高速道路の料金所をETC専用化にするための計画書だ。これによると、ETC専用化は[…]
一大ブームが巻き起こった1986年 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ900Rがいた。 1986年に公[…]
房総半島の意外な魅力「素掘りトンネル」 東京から小一時間で行けるのに意外と秘境感あふれる千葉・房総半島。ここには味わい深い素掘りのトンネルが多数存在する。そんな異次元空間を求めて、半日だけショートツー[…]
- 1
- 2