
●文:モーサイ編集部(小泉元暉) ●写真:うるちさん SUZUKI
実は国内4メーカーすべてが海外向けに“農業バイク”を生産していた!
「アグリカルチャーバイク」や「ファームバイク」という存在をご存じでしょうか? 直訳すれば“農業バイク”という意味ですが、文字通り、そういうジャンルのバイクが世界にあるんです。
とりあえず、当記事ではそれらを「農業バイク」と呼ぶことにしますが、どんなバイクかというと、アメリカやオーストラリアなど広大な土地で農業や牧畜業を行っている国々で、作業者が農地や牧場内を移動するために用いられるバイクです。
…というわけで、そうした環境がない日本国内では販売されていないバイクですが、実は日本メーカー4社すべてが海外向けに農業バイクを生産してきました。
1977年に輸出専用車として発売されたスズキTF125。ベースとなったのTS125(ハスラー125)で、エンジンは123ccの空冷2ストローク単気筒ピストンリードバルブ。現在も南米向けに新車で販売されている。
パッと見、オフロードバイクのような農業バイクですが、ならではの装備として、左右両方にサイドスタンドがあったり、フロントとリヤに大型のキャリヤを備えていたり、そして、長い泥よけを装着していたりする点が挙げられます。
まず、左右両方にサイドスタンドがあるのは、農地や牧場では、必ずしも左側にサイドスタンドを立てて、安定して車両を停められるとは限らないため。農地や牧場の地面といえば、土/草地/砂利など未舗装なのが当然。そして、地面は平らとは限らず、あぜ道は狭い。そんな状況下でも、左右それぞれにサイドスタンドがあれば、どちらかのスタンドで安定して駐車できるほか、あぜ道の左右両方に畑などがある場合、スムーズに目的の畑へと降車できます。
キャリヤはもちろん、作業道具や収穫物などをたくさん運ぶため。泥よけは…、ここまで読んでいただいたら、説明不要でしょう(笑)
日本メーカーの車両でありながら、残念なことに輸出専用車であるため、農業バイクは日本で見ることはできない…、と思いきや、日本で乗っている人もいました!
一体「農業バイク」のどんな部分を魅力に感じたのでしょうか? 農業バイクのスズキTF125に乗って楽しんでいるうるちさんに話を聞きました。
南米では今も新車で販売されている、スズキTF125
──なぜ「農業バイク」のTF125を購入しようと思ったのでしょうか。
10年間くらい乗っていたスズキ バーディー50からの乗り換えで、通勤にも使える125ccのバイクを探していたんです。CT125ハンターカブも検討したのですが、その当時は納車まで時間がかかったため断念しました。
そもそも林道走行にも興味があったので、オフロードをある程度走れるバイクで、かつ移動手段として使うため大きなキャリヤが装備しているバイクがいいなと思っていたのですが、その条件を満たすバイクとして、農業バイクという選択が出てきたのです。
牧場や農場など過酷な環境下でも活躍する農業バイクは、タフなイメージがあるのもいいな、と。農業バイクならではの装備ってカッコいい! と思うようになり(笑)。
──農業バイクと言ってもいろいろありますが、TF125を購入する決め手となった理由はありますか?
農業バイクの中では、ヤマハAG100やスズキDF125も検討しましたが、中古でしか購入できないため、こちらも断念。そうこうしているうちに、TF125なら新車が購入できることを知り、最終的に決定したという次第です……
※本記事は2021年5月5日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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