
バイクに乗っていて、高速道路で大型トラックを追い抜いたときや、大きな橋の上などで、強い横風で大きくフラれて怖い思いをしたことがありませんか? こうした挙動は空気の流れが悪さをして起こりますが、対処方法もあります。ライディングフォーム/テクニック/ウエア、そして知識でうまく乗り切りましょう。
●文:石橋知也(モーサイ編集部)
大型トラックの渦=乱流と負圧域でバイクを吸い寄せる
大型トラックでもバイクでも、空気の塊を突き破るように走っています。そのとき空気がキレイに車体に沿って流れてくれればいいのですが、そううまくは行かず、車体に近い所で風が渦を巻きます。それも車体に向かって、進行方向と逆向きで巻くのです。
ホンダCBR1000RR-Rファイアブレードで、ライダーがレーシングポジションをとったときの空気の流れ。
この渦ですが、大型トラックの車体側の空間は負圧になっている一方で、渦の外側は正圧です。流体は高いほう(正圧)から低いほう(負圧)に流れるので、風の渦に近づいたバイクは、負圧側に吸い寄せられたりフラついたりします。また、渦の大きさや強さ、トラックのどの位置にできるのかは、その車体サイズ/形状/走る速度によって変わります。
レースでは「スリップストリーム」が有効だとよく言われますが、風の渦と負圧域は、側面よりも後方でより大きく強くなります。バイクやクルマのレースで使われるスリップストリーム(アメリカではドラフティングとかトウと呼ばれます)は、この現象を利用しています。
後車が前車の真後ろに付けると、前から受ける抗力(空気抵抗)がとても小さくなり、同時に負圧域に入ると前車に吸い寄せられます。このため後車はスピードが上がり、前車を追い越す余裕が生まれます。
また、前車と同じスピードで走るなら、後者は単独走行時よりスロットルを開けなくて済むので、燃費も稼げます。
ただし、公道では前車との距離が近くなりすぎて危険です。渦は乱流(タービュランス)なので、常に流れの向きや強さが安定しているわけではなく、自分のバイクの安定性が乱れることもあります。そして前車のサイズが大きく/長く/高く/速度が速いほど、負圧域も大きくなります。
横風の危険な場所:トンネルの出口/橋の上/谷
次に横風の話ですが、何もさえぎる物のない場所はもちろんのこと、大きな橋の上、トンネルを出た直後、谷あいなど風が集まって吹き抜ける場所では、とくに横風の急激な強さに注意が必要です。
横風でも、ある程度一定の風力なら対処しやすいですが、実際には突風が吹いたり、風力・風向きが常に変化することも珍しくありません。
では、そうした“風の悪さ”に対して、ライダーはどんな対策をすればいいか考えてみましょう。
対策1:上半身を伏せる=横風で倒れにくくなる
伏せる=頭を低くして上半身を前傾姿勢にする目的は、前面投影面積を小さくして空気抵抗を減らすことです。これは前方からの風に有効です。また同時に、側面投影面積も若干小さく低くできる(腕などがタンクに重なり合うので)ので、横風にも有効です……
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