![スズキTS200R](https://young-machine.com/main/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
現行ラインナップとして今はなくても、あの頃の憧れや、もう一度乗ってみたいという思いを叶えてくれる絶版車。数ある絶版車オフロードマシンの中から、スズキの公道向けトレールモデル「TS200R」を紹介する。
●文:ゴーライド編集部(青木タカオ) ●写真:栗田晃 ●外部リンク:レッドバロン
最先端をいく倒立フォークをライバルより先に採用した!!
トヨタと同じように織機メーカーから始まったスズキの歴史。鈴木式織機製作所の設立は1909年(明治42年)と早く、’52年(昭和27年)に排気量36ccの空冷2サイクル単気筒エンジンを補助動力とする原動機付自転車「パワーフリー号」を発売すると、翌’53年に排気量を60ccに拡大した「ダイヤモンドフリー号」では月産6000台に達するほどの人気を博した。第1回富士登山レースに社員が参加し、バイクモーター部門で優勝を飾ったほか、札幌から鹿児島まで約3000kmの「日本縦断テスト」を走破し、実力が広く認められたからだった。
古くからチャレンジスピリットあふれるスズキは、ライバルに先駆けて先進技術を採用してきた。’83年のRG250ガンマで市販車世界初のアルミ角パイプ製ダブルクレードルフレームや、レーサーさながらのハーフカウルにワークスカラーを用いたのは、バイクファンの間ではあまりにも有名。
オフロード界でも、モトクロス世界選手権で活躍するマシンをベースに一般道も走れるようにしたハスラー250を’69年に発売し、レース参戦者向けにシリンダー/キャブレター/マフラー/スプロケットなどの高性能キットパーツを用意。’71年には世界グランプリ優勝マシンRH70の技術を反映した市販モトクロッサー・TM400をリリースするなど、先駆的な動きをしてきた。
【’89 SUZUKI TS200R】■全長2170 全幅880 全高1260(各mm) 車重127kg ■水冷2ストローククランクケースリードバルブ単気筒 195cc 35ps/8500rpm 2.9kg-m/8000rpm 始動:キック式 ■タイヤサイズF=3.00-21 4PR R=4.60-18 4PR ●発売当時価格:38万8000円
滑らかな曲線で構成されたフラッシュサーフェスデザインはRMシリーズから踏襲したもので、いまなおアグレッシブかつ戦闘的。スレンダーで無駄のない車体が美しい。
今回紹介する「TS200R」も、エポックメイキングなモデルのひとつ。公道向けトレールとして、国内初の倒立式フロントフォークを採用し、オフロードファンを驚愕させた。当時、メンテナンス性や過度な剛性などが懸念され、ナンバー付きトレールモデルのフロントサスペンションには正立式フォークが好ましいという考えがあった中、より走破性にすぐれる倒立式フォークを惜しみなく投入。スーパークロスや全日本選手権で活躍するモトクロッサーRMシリーズの流れをくむ新設計の2サイクル水冷単気筒エンジンには、独自の排気デバイスAETCを装備するなど、スズキらしい“攻め”の姿勢が見て取れるニューモデルであった。
倒立フォークの採用などコスト高になるにも関わらず、車体価格は40万円を切る38万8000円で、これは4カ月前に登場した強敵・カワサキKDX200SRより1000円ほど低価格。スズキの意地を感じずにはいられない。
エンデューロレースに沸いた時代。最高出力35馬力と、十分なパワーを発揮するエンジンは排気量195ccで、ブン回せることを強みにしている。ヤマハDT200RやカワサキKDX200SRがそうだったように、パワーを持て余す250勢を相手に“200派”として高い戦闘力を発揮した。
その無駄のない攻撃的なスタイルや細身のシルエットは、いま見てもメカメカしくあり機能美に満ち溢れている。
デジタルCDI(Capacitor Discharge Ignition)点火方式を採用した、水冷2サイクル・クランクケースリードバルブ単気筒エンジン。排気系に独自のAETCを装備したことで、トップエンドの伸びだけでなく、扱いやすさも兼ね備えた。このパワーユニットは、’92年にRG200ガンマの心臓部にも採用された。
[左]同時期のライバル勢が正立フォークだった中、倒立式のフロントフォークをいち早く採用。オフロードではインナーチューブやオイルシールへのダメージが懸念された時代で、競技車だけが装備していた。[右]快適な乗り心地と操縦安定性を両立するフルフローターサスペンション。バネ下重量を軽減する角形アルミ製スイングアームとの組み合わせだ。
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