箱根駅伝でも活躍する白バイ警官たち。おつかれさまです…。
「白バイ警官はレーサーみたいにハングオンするの?」白バイのライディングフォームを元警察官が解説してみた

バイクレースを見ていると、レーサーたちが盛大にバイクを傾けながら颯爽とサーキットを駆け抜けていく姿を目にすることができる。彼らのライディングフォームである「ハングオフ(ハングオン)」は、速さの象徴のようにも感じられるが、公道のスペシャリストである白バイ警官も使ったりするのだろうか? また、彼らはどんなライディングフォームを使っているのだろうか? その実際を元白バイ警官の宅島奈津子さんが解説する。
●文:[クリエイターチャンネル] 宅島奈津子
基本的なライディングフォーム
※画像はAIイメージです
バイクファンであれば一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、時に白バイ隊員は公道を走るスペシャリスト集団とも言われています。ですが、走行中はライディングフォームを意識することはほとんどありません。体が覚えているため、そのときどきの状況に応じて最適なライディングフォームを使えるからです。
大別すると、基本的なライディングフォームは3つあります。バイクの傾きと同様に上半身を内側に傾け、外側の腕を伸ばし内側の腕を曲げる「リーンイン」、バイクの傾きに対し上半身を外側に起こして、内側の腕を伸ばし外側の腕を曲げる「リーンアウト」、免許を取得する際に教習所や自動車学校で教わるもっとも基本的で自然な姿勢である「リーンウィズ」です。
ハングオン(ハングオフ)走行
これら意外にもよく耳にするものとして、ハングオン(ハングオフ)というライディングフォームがあります。これは、レーサーやサーキット向けのフォーム。以下では、ハングオンに統一して話を進めますね。
MotoGPをはじめとした、バイクレースのレーサーを見てみてください。彼らはカーブを走行する際に、豪快に車体も身体も内側に傾けていますよね。ハングオンは、ライダー自身の重心を中心に置かず、バイクにハングする(ぶらさがる)ようなフォームであることからハングオンと呼ばれるようになりました。
ハングオンは旋回時だけの瞬間的なテクニックではなく、コーナーに入る前からポジショニングを考え、どういった体勢で曲がっていくのか、またブレーキのタイミング等まで決めておく、といった高度な判断が必要になります。1分1秒でも早くバイクを走らせるためのテクニックです。
「じゃあ白バイ隊員もハングオンすることあるの?」と疑問に思うかもしれませんが、答えはNO。緊急時でも使いません。なぜならハングオンは、前述した通り、対向車のいないサーキット向けのフォームで、公道では危険なのです。公道の安全を守る警察官が、自ら危険を招いていては元も子もないですよね。
白バイ隊員のライディングフォーム
そんな白バイ隊員の基本的なライディングフォームは、リーンウィズ。リーンインやリーンアウトは、緊急走行で現場へ駆けつけないといけないときや、逃走車を追跡する際などには使う機会もあります。なぜならフォームごとに、それぞれのメリット/デメリットがあるからです。
リーンウィズは、身体と車体が一体となってもっとも自然な体勢になるので、運転操作がやりやすく、疲労が残りにくいことがメリットになります。重心が車体の真ん中にくるため、タイヤのグリップ力が活かされ、いかようにも応用可能な基本中の基本フォームといえます。
リーンインは、バイクのコーナー寄りの内側に上半身を入れる体勢。なるべく車体を立てるようになるぶん、雨の日などの濡れた路面を走行する際のスリップ防止に効果があります。さらにコーナー出口で、加速しやすいといったメリットもあり。ただし、リーンインには、コーナー進入時に視界が悪くなる、といったデメリットもあるので注意しましょう。
リーンアウトは、コーナーとは逆の方向に上半身を向けた体勢。低速でのUターン時などに有効な、小回りがきくことがポイントです。ただし、バイクを傾けている分、スリップしやすくなることや、ハンドルをとられやすくなるといったデメリットがあるので、リーンイン同様、「使い分けが大事」と行った感じです。
テクニックより乗車姿勢
※画像はAIイメージです
バイクに限らず、運転テクニックは高いに越したことはありません。ですがテクニックを身につけたり、走行方法を学んだりすることよりも、乗車姿勢に気をつけることが一番、安全運転には大切です。私がバイクに乗る際、今でも意識しているのは、次の3つです。
- 上半身はできるだけリラックスする
- 必要以上に力を入れすぎない
- 膝にはしっかり力を入れる=ニーグリップをきかせる
もちろん、自分に合った走り方やフォームというものはあります。なかには、そういった走行方法を練習したい、試してみたい、といった方もいらっしゃるかと思います。その際は公道ではない場所で、事故を起こさないよう気を付けて行うようにしてくださいね。
バイクを楽しむうえでは、速く走ることや、かっこよく走ることよりも、安全に走ることのほうが大切です。白バイ隊員でさえ、一番に考えることは安全性です。命あっての楽しいバイクですから、ご安全に。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(宅島奈津子)
オートバイのメンテナンスは大切 オートバイや乗用車に限らず、どんな乗り物でもメンテナンスは必要不可欠です。定期的にメンテナンスを行うことで、長く乗り続けることができるだけでなく、事故を防ぐことにもつな[…]
寒い時期のツーリング 冬はライダーにとって、本当に過酷な季節です。急激に気温が下がったりしてきましたが、オートバイに乗られているみなさんは、どういった寒さ対策をしていますか。 とにかく着込む、重ね着す[…]
みなさんは、トライクという乗り物をご存知でしょうか。ライダーであればほとんどの方が、目にしたことがあるかと思います。なかには乗ったことがある方も、いらっしゃることでしょう。 このトライク、語源はトライ[…]
交通取締りが行われている場所 安全運転を心がけていても、パトカーや白バイの姿を目にすると、必要以上にドキッとしたり、速度メーターを確認したりするといった経験がある、ドライバーやライダーは少なくないので[…]
ヘルメット着脱の煩わしさ みなさんはバイクに乗る際、どんな種類のヘルメットを着用していますか。ヘルメットと一言で言ってもいろんなタイプのヘルメットがあり、着脱の手間や煩わしさも大きく変わってきます。わ[…]
最新の関連記事(ニュース&トピックス)
9月7日(日)に単車神社で年に一度の「例大祭・交通安全祈年祭」 新聞やTV、ネットニュースに触れると、毎日のようにバイク事故の報道を目にします。“ヤング・アット・ハート”かつ賢明な皆さんは、こういった[…]
第1特集「駆け抜けろ! スーパースポーツ」 その時代の最先端技術を詰め込み、空気抵抗を減らすためのカウルを全身にまとい、メーカーの威信を賭けて開発されたスーパースポーツ(以下、SS)。『R★B』最新号[…]
1位:気化熱式クールベストがデイトナより登場 デイトナから登場した気化熱式クールベスト「DI-015 ウェットクールベスト」を紹介する暑さ対策記事だ。水を含ませるだけで走行風を利用して冷却[…]
愛され続けるのも納得な魅力満載のスーパーカブ スーパーカブには世界中で愛されるだけの様々な魅力がある。まず挙げられるのが、その特徴的なデザイン。丸みを帯びた優しさすら感じるフォルムは、一度見たら忘れら[…]
kokuu たんぱくプラス 雑穀米 日々の食生活でタンパク質を強化したいライダーへ。国産15種の厳選雑穀米で、100gあたり約30gのタンパク質を摂取可能だ。白米に混ぜるだけで高タンパク・グルテンフリ[…]
最新の関連記事(交通/社会問題)
暫定税率を廃止するなら代わりにって…… 与野党が合意して、11月からの廃止を目指すことになったガソリン税の暫定税率。 このコラムでも数回取り上げてきましたが、本来のガソリン税28.7円/Lに25.1円[…]
松戸市〜成田市を結ぶ国道464号の発展 かつて、千葉県の北総地区は高速道路のアクセスが今ひとつ芳しくなかった。 常磐自動車道・柏インターや京葉道路・原木インターからもちょっとばかり離れているため、例[…]
歩行者が消える?超危険な「蒸発現象」による事故を防ぐ方法 2024年10月、岡山県内の道路である現象が原因となる交通事故が起きました。横断歩道を渡っていた高齢の女性をクルマがはねた、という事故です。ク[…]
対策意識の希薄化に警鐘を鳴らしたい 24年前、当時、編集長をしていたBiG MACHINE誌で「盗難対策」の大特集をしました。 この特集号をきっかけに盗難対策が大きな課題に そして、この大盗難特集号は[…]
意外と複雑な一方通行の表示 一方通行規制のおもな目的は、車両の相互通行による複雑で危険な交通状況を単純化し、交通の安全と円滑を図ることにある。とくに、道幅が狭く、歩行者や自転車の通行が多い住宅地や繁華[…]
人気記事ランキング(全体)
2ストGPマシン開発を決断、その僅か9ヶ月後にプロトは走り出した! ホンダは1967年に50cc、125cc、250cc、350cc、そして500ccクラスの5クラスでメーカータイトル全制覇の後、FI[…]
PROUDMEN. グルーミングシートクール 16枚入り×3個セット PROUDMEN.のグルーミングシートクールは、横250×縦200mmの大判サイズと保水力約190%のたっぷり液で1枚で全身を拭け[…]
取り付けから録画までスマートすぎるドライブレコーダー ドライブレコーダーを取り付ける際、ネックになるのが電源確保のための配線作業だ。バイクへの取り付けともなると、専門知識や工具、あるいは高めの工賃が必[…]
3つの冷却プレートで最大-25℃を実現 2025年最新モデルの「ペルチェベスト」は、半導体冷却システムを採用し、背中に冷たい缶ジュースを当てたような感覚をわずか1秒で体感できる画期的なウェアです。小型[…]
二輪史に輝く名機「Z1」 いまだ絶大なる人気を誇る「Z1」こと、1972年に発売された900super4。後世のビッグバイクのベンチマークとなる名機は、いかにして世に出たのか──。 1960年代、カワ[…]
最新の投稿記事(全体)
暫定税率を廃止するなら代わりにって…… 与野党が合意して、11月からの廃止を目指すことになったガソリン税の暫定税率。 このコラムでも数回取り上げてきましたが、本来のガソリン税28.7円/Lに25.1円[…]
本格オフロードモデルDT系を原付のちょうど良いサイズでリリース! ヤマハは1968年、250ccの大きな排気量で初のオフロード用2ストローク単気筒エンジンを搭載した画期的なDT1をリリース、以来125[…]
フレームまで変わるモデルチェンジ、かつリヤキャリアを新装備してたったの+6600円 スズキは、グローバルで先行発表されていた新型「アドレス125」の国内導入を正式発表。基本スタイリングは継承しながら、[…]
9月7日(日)に単車神社で年に一度の「例大祭・交通安全祈年祭」 新聞やTV、ネットニュースに触れると、毎日のようにバイク事故の報道を目にします。“ヤング・アット・ハート”かつ賢明な皆さんは、こういった[…]
シュアラスターの「バイク洗車図鑑」 バイクが違えば洗い方も変わる! 車種別の洗車情報をお届けするシュアラスターの「バイク洗車図鑑」 ストリートでもサーキットでも大活躍する高性能4気筒スーパースポーツ・[…]
- 1
- 2