全部盛りのスポーツジェット SHOEI J-CRUISE2試用レビュー

●文:[クリエイターチャンネル] 相京雅行
SHOEIのヘルメットラインナップには4つの傾向があります。
スポーツ性能、多機能型、軽量コンパクト、クラシックの4つです。
筆者はこの中でも軽量コンパクトタイプをプライベートでも使っていますが、インナーバイザーやラチェットバックルなどに惹かれて、多機能型を使っている人も多いはず。
今回はSHOEIの多機能型スポーツジェットヘルメット J-CRUISEを紹介します。
J-CRUISE2の付属品・カラバリ・価格

ヘルメットは専用の収納袋に入った状態で箱に収められています。ヘルメットの塗装を傷つけない裏起毛、更に縫い目を表側にする念の入れようです。

収納袋の口を絞る紐は太めで、多少の負荷が掛かっても切れることはなく、しっかり絞ると肩にかけて持ち歩ける長さになります。

今回お借りした製品には防曇シートが貼られた状態で送られてきましたが、本来は付属される形。ピンロックシートかSHOEI独自の防曇シート、ドライレンズのいずれかが同梱されます。
筆者はピンロックシートを使っていますが、強烈な防曇効果があり、雨や寒い日には効果を実感することができます。ドライレンズに関しても同等の性能はあると思って良いでしょう。

防曇シートはメインシールドのピン部分に装着する形になりますが、メンテナンスなどでつけたり外したりしていると、割れてしまう事もあります。予備用のピンも付属されていますが、小さいパーツなので無くさないように注意が必要です。

メンテナンス用のシリコンオイルは、説明書によればシールドと帽体側に貼られた淵ゴムの密着性を保つために定期的に塗布するもの。シールドを外して清掃する際などに一緒にメンテナンスしておくと良いでしょう。

SHOEIステッカーは2枚付属されています。おでこの部分に貼られたステッカーと同じデザインですが、クリア塗装の下側に貼られているので剥がすことはできません。
ステッカーは工具箱などに貼るのにちょうど良いサイズ感です。

サービスツールは専用インカムを装着する際などにプラスチックパーツの脱着で使ったり、ピンロックシートのピンの取り外しで使うことができます。

その他に安全マニュアル、取扱説明書、保証書の3点が入っています。製品によっては安全マニュアルと保証書が一緒になっているものがありますが、こちらは分かれているので注意が必要です。
安全マニュアルにはヘルメットの被り方など基本的な事、取扱説明書はイラスト入りで丁寧に書かれています。
ただ最近色々なヘルメットの説明書を見ていますが、多言語対応しているSHOEIの説明書はごちゃごちゃしていて若干見にくい印象です。

カラーは単色が6色で5万6100円。

グラフィックモデルは8種類で6万3800円です。
J-CRUISE2のデザイン

前から見ると丸みを帯びた帽体にベンチレーションが3か所マウントされたようなデザインですが、下淵の部分が少し張り出しているように見えます。

これは専用インカムのSENA SRLを取り付けするためのスペースで、帽体か少し張り出しているものの、うまくデザインに組み込んでおり、大きくは見えません。

頭頂部左右のベンチレーションから後ろにかけてはギュッと絞り込まれていて、ラインが後頭部まで続いています。

後頭部の上にはベンチレーションから取り入れた空気を開放するアウトレット機能を兼用したスタビライザーがついています。
アウトレットはスタビライザー下についているので、常時開放されていますが、雨などの際も浸水しにくい設計になっています。

後頭部の下側に関しては、エッジを効かせつつも滑らかなラインで絞り込まれていますが、J-FORCE4などに比べると絞り込みが緩やかに見えるのは、後頭部下側には専用インカム取り付け時にバッテリーを収納するスペースがあるからでしょう。
J-CRUISE2の機能性

既に少し触れていますが、SENAのSRLという専用インカムを装着することができるのが最大の特徴です。
帽体左右と後頭部にコントロールユニットとバッテリーを収めることが可能で、一般的な汎用インカムと比べて目立ちにくいうえに、走行時に風切り音などの影響を最小限に抑えることができます。

専用インカムの取り付けスペースがあるので、両面テープでの取り付けは難しいですが、幅のあるクリップタイプなら取り付けは可能です。
またインカム一番人気のB-COMからは取り付け用のアタッチメントが販売されていて、2090円で売られています。

インナーバイザーの出し入れは、左耳のノブで操作が可能で、バイザー本体のサイズは縦に長く視界をしっかりフォローしてくれそうです。

シールド本体は左下でロックされ、左手で少し外側に押しながら開ける形。下淵部分にはリブが立っていて風を左右に逃し風切り音を低減します。

ベンチレーションに関しては頭頂部と左右の合計3か所。インナーバイザー付きのヘルメットの場合、頭頂部1か所か左右2か所のいずれかが多いので、性能に期待したいところです。

顎紐は強度に優れた金属製のラチェットバックルを採用。

ヘルメットホルダー用にDリングも備えています。
J-CRUISE2の内装

内装はトップ、チークパッド左右、顎紐カバー左右、イヤーパット左右の7点が取り外し可能です。

内装の素材には、頬や額など汗をかきやすい場所にはユニチカの給水速乾素材ハイグラを採用することで、汗をかいても表面はサラサラな状態を維持することができます。

後頭部や頬の下側などヘルメットの脱着時に肌とこすれる部分には、起毛生地を採用することで被りやすさも意識しています。
トップ内装は頭頂部と外周でクッションの色が切り替えられていますが、触ってみると頭頂部の方が弾力性に優れているように感じます。

特にクッションが薄くなっている部分は剛性感があり、洗濯する時など気を使わなくとも大丈夫そうです。
チークパッドは各サイズ互換性があり、標準ではXSが39mm、S~XLが35mm、XXLは31mmが採用されていますが、交換することでフィット感の調整が可能です。
SHOEIの内装調整ができる店では更に細かい調整ができるという情報もユーザーさんから頂きました。

コメカミ部分は眼鏡のツルが通しやすいようにクッションが緩めになっていますが、薄いクッションを一枚抜いて調整も可能です。
被る時に目に入る下側は合皮を採用することで見た目にも配慮しています。
顎紐カバーは肌に当たる面は起毛、目に入る外側は合皮を採用していますが、脱着する際に固定するボタンが奥まったところにあり多少コツが必要です。
イヤーカップはインカム用スピーカーを使わない場合に装着しておくことで風切り音や反響音を抑える効果があります。

内装を外した帽体側にはスピーカーホールも確認できました。比較的深めなのスピーカーが耳に当たる可能性も低く、専用インカム装着時用に配線の逃げも用意されています。
J-CRUISE2の重さ

J-CRUISE2のMサイズ(ピンロック付き)、グラフィックモデルの重さを測定してみたところ1428gでした。
今までいくつかのスポーツジェットヘルメットの重さを測定してきましたが、インナーバイザーとラチェットバックルを備えるものは1400g代なので平均的といえます。
ただJ-CRUISE2は専用インカムを装着するためのプラスチックパーツが装備されていて、パーツ点数が多かったり、ラチェットバックルも金属製であることを考えると軽量化を努力されている印象です。
※ヘルメットは製造時に重さに個体差が発生します。単色に比べてグラフィックモデルは使う塗料やステッカーの量が多くなるので重くなる傾向があります。
J-CRUISE2のフィット感

筆者はArai、SHOEI、KabutoいずれのヘルメットもMサイズ、普段使っているSHOEIのヘルメットはMサイズですがクッションを少し追加しているのでSとMサイズの間ぐらいの頭です。
J-CRUISE2に関してもMサイズで問題なしで、被り口が広いので顎紐を引っ張らなくても被ることが可能。チークパットの圧迫感もなくインカムで通話しながら走るのもストレスがありません。
ハンター350に乗って試用レビューしてみた

試乗当日の天気は曇り、気温25度、風はなく、バイクはハンター350というシチュエーションでJ-CRUISE2の性能をチェックしてみました。
重さは普段被っている軽量、コンパクトがウリのSHOEI のフルフェイスヘルメット、Z-7と同程度なので体感も変わりません。フルフェイスと違ってチンガードはありませんが、重量バランスに優れており、数値なりの軽さを体感できます。
視界はスポーツジェットなので縦横に広く、シールドの歪みはインナーバイザーも含めてありません。
シールドは左手で操作すればロック解除を意識をしなくてもスムーズに開閉可能で、インナーシールドの操作も迷わないので、トンネルの手前などでも慌てることはありません。

シールド下淵の形状の影響で60km/hぐらいまでの走行で巻き上げの風が入ってくることなく、静粛性はスポーツジェットとは思えないぐらい優れています。
しばらく走って頭が蒸れてきたタイミングで頭頂部三か所のベンチレーションを開けてみましたが、操作に迷うことはありませんでした。
低速走行時には頭の後ろ側に風が入ってくる感じがありますが、50km/h~60km/hぐらいまで加速すると更に前の方から涼しい感覚があります。
サイドベンチレーションの効果を下道で体感することはできませんでしたが、高速道路で60km/h以上のスピードで走行した際に、頭の横方向からの風も確認することができ、頭全体が涼しくなりました。
全部盛のスポーツジェットはどんな人にもお勧めできる
ラチェットバックル、インナーバイザー、専用インカムの取り付けなど多機能なヘルメットですが、静粛性に関しては安価はフルフェイスヘルメットと比べても静かで、ベンチレーションも想像以上でした。
多機能なところに目がいきがちなヘルメットですが、ヘルメットの基本性能に優れており軽いので、日常使いにもピッタリ。
どんな用途にもマッチするヘルメットなので、万人にお勧めできるヘルメットの一つといえるでしょう。
動画でインプレッションを見たい方はこちら
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(SHOEI)
上旬発売:アライ アストロGXオルロイ アライヘルメットからは、ツーリングユースに特化したフルフェイス「アストロGX」のニューグラフィック「ORLOJ(オルロイ)」が12月上旬に登場する。この独特なネ[…]
アイルトン・セナ 1992年 ショウエイX-4 1992年のベルギーGPでアイルトン・セナがレースで着用した本物。お値段は驚愕の1億4360万円で落札されています。ヘルメット自体はショウエイX-4レー[…]
SHOEI NEXT LINEのクロスロゴ第2弾がネオクラシックラインに満を持して登場 『NEXT LINE(ネクストライン)』は、SHOEIが2023年にスタートさせた、“遊び”をキーワードにしたブ[…]
MotoGPを席巻するマルケス兄弟のレプリカモデルがX-Fifteenに登場! 『X-Fifteen MARQUEZ MOTEGI 5』は、マルク・マルケス選手が2025年のシリーズチャンピオンを決め[…]
月内発売:SHOEI 「GT-Air 3 AGILITY」 優れた空力特性とインナーバイザーを兼ね備えたSHOEIのフルフェイスヘルメット「GT-Air3(ジーティーエア スリー)」に、新たなグラフィ[…]
最新の関連記事(ヘルメット)
上旬発売:アライ アストロGXオルロイ アライヘルメットからは、ツーリングユースに特化したフルフェイス「アストロGX」のニューグラフィック「ORLOJ(オルロイ)」が12月上旬に登場する。この独特なネ[…]
アイルトン・セナ 1992年 ショウエイX-4 1992年のベルギーGPでアイルトン・セナがレースで着用した本物。お値段は驚愕の1億4360万円で落札されています。ヘルメット自体はショウエイX-4レー[…]
KADOYAとAraiのコラボモデルがTX-STRADAに登場! 東京・浅草を拠点とする、日本の革ジャンの老舗『KADOYA(カドヤ)』と、アライヘルメットのコラボレーションモデルが登場する。 MGグ[…]
ノスタルジーとラグジュアリーを共存させたカドヤとのコラボモデル 創業90周年を迎えた日本のレザージャケットの雄、カドヤのスペシャルグラフィックをあしらった『RAPIDE-NEO KADOYA』は、格子[…]
お手頃価格のシステムヘルメットが目白押し! コミネ HK-171 FL:35%OFF~ 高強度ABSシェルを採用し、インナーサンバイザーを装備。特筆すべきは、顎紐にドイツFIDLOCK社製のマグネット[…]
人気記事ランキング(全体)
最強のコスパ防寒着か? 進化した「GIGA PUFF」 まず注目したいのが、「GIGA PUFF フュージョンダウンフーディ」だ。価格は驚異の4900円。このフーディの肝は、中わたの量にある。従来製品[…]
ウインカーと統合したDRLがイカス! X-ADVは2017年モデルとして初登場し、アドベンチャーモデルとスクーターのハイブリッドという新しいコンセプトで瞬く間に人気モデルになった、ホンダ独自の大型バイ[…]
上旬発売:アライ アストロGXオルロイ アライヘルメットからは、ツーリングユースに特化したフルフェイス「アストロGX」のニューグラフィック「ORLOJ(オルロイ)」が12月上旬に登場する。この独特なネ[…]
「天然のエアコン」が汗冷えを防ぐ 厚着をしてバイクで走り出し、休憩がてら道の駅やコンビニに入った瞬間、暖房の熱気で生じる汗の不快感。そして再び走り出した直後、その汗が冷えて体温を奪っていく不安。ライダ[…]
新型「ニンジャZX-10R」は国内導入は2026年夏か まずは欧州と北米で発表されたスーパースポーツの旗艦、新型「ニンジャZX-10R/RR」の話題だ。 最大の特徴は、フロントカウルに設けられた大型の[…]
最新の投稿記事(全体)
オンロードメインで楽しむ扱いやすいツアラーモデル いい意味で、事前の想像とは大きく異なる乗り味だったのが、油冷単気筒エンジンを搭載した軽二輪アドベンチャーのVストローム250SX。このルックスから、個[…]
排気量拡大路線から4バルブヘッド開発へ 1980年代の後半はAMGにとって重要な分岐点だった気がします。もともと、彼らはメルセデスベンツが作ったエンジンをボアアップ、強固な足回りへと改造することに終始[…]
「バケヨンカスタムご存じ?」’70年代のホンダ4発末弟はCB350Four! 1972年6月、ホンダはCB350フォアを発売した。 1969年に衝撃のデビューを果たした世界初の量産4気筒スーパースポー[…]
デザイナーの“眼”は何を捉えたか? 今回紹介するのは、ただのロゴ入りTシャツではない。なんと「数々のヤマハ車を手掛けてきた車体デザイナー本人が描き下ろした」という、正真正銘のデザイナーズスケッチTシャ[…]
浅草の夜が“ロイヤルエンフィールド”に染まる! ピーシーアイ株式会社は、2025年12月20日(土)、東京・浅草の人気カフェ「ORTIGA(オルティガ)」にて、ロイヤルエンフィールド・オーナーを対象と[…]
- 1
- 2































