[バイクメンテDIY] キャブからのガソリン漏れが止まらない… 解決方法の決定版は“バルブシート蘇生キット”〈ホーネット250〉

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ジェットやニードルの交換によってセッティングを変更できるのがキャブレターの特徴ですが、キャブにとってもっとも重要なのが、フロートチャンバー内の油面であることをご存じでしょうか? フロートと連動して開閉するニードルバルブと、バルブと対になるバルブシートのコンディションが油面安定に重要な要素で、経年劣化によって交換が必要になることもあります。バルブシートが着脱できないタイプのキャブレターにとって、この部品のダメージが致命傷となることもありました。キースターが開発したバルブシート蘇生キットは、そうしたキャブレターを救う画期的な製品です。今回はホンダ ホーネット250のキャブレター用キットを例に説明します。

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キャブセッティングの大前提となる“油面”を決めるニードルバルブ

エンジンが発生する吸入負圧に応じて、パイロットジェットやメインジェットからガソリンが吸い上げられて、空気と混ざりあった混合気となって燃焼する内燃機。バイクのエンジンは、1000rpm前後でゆっくり回転するアイドリングから1万rpm以上にもなる最高回転数まで使用する、回転数の幅が広いのが特色ですが、セッティングが決まればとても気持ちよく走行できます。

多くのバイクは、ガソリンタンクがキャブレターよりも高い位置にあり、ガソリンは重力によってキャブレターに流れます。負圧式燃料コックを採用していたり、電磁ポンプでガソリンを圧送する機種もありますが、どちらもエンジンがかかっている間は、タンクからキャブに向けてガソリンが流れ続けます。

放っておくとずっと流れ込もうとするガソリンを、必要に応じて断続しているのがニードルバルブです。フロートチャンバー内のガソリンの量と連動してフロートが浮き沈みします。そのフロートの作動軸部分に設置されたニードルバルブは、フロートが下がっている間=フロートチャンバー内のガソリンが少ない間は開いており、フロートチャンバーにガソリンが溜まってフロートが浮き上がると、バルブが閉じてガソリンを遮断しています。

走行中は、フロートチャンバー内のガソリンが連続的に消費されるため、フロートが下がってニードルバルブが開き、ガソリンは連続的にフロートチャンバー内に流れ込みます。

ただ先述のように、バイクのエンジン回転数の幅はとても広いため、3000rpmぐらいでクルージングしているのと1万rpm近くをキープしてサーキット走行を行うのとでは、ガソリンの消費量も異なるため、後者の場合はニードルバルブが開きっぱなしになります。

そうしたメカニズムで作動するキャブレターにとって、セッティングの前提条件となるのがフロートチャンバー内のガソリンレベル=油面です。走行中、キャブレター内のガソリンは常に消費され、必要なガソリンはタンクから供給されています。また、ニードルバルブが開いている間、ガソリンはフロートチャンバー内に流れ込み続けます。

しかしながら、フロートチャンバーが十分に浮き上がらないうちにニードルバルブが閉じてしまうと、フロートチャンバー内の油面は常に低いままで、逆にフロートチャンバーが浮き上がりすぎてニードルバルブが閉じなければ、油面はずっと高い状態を維持しようとします。

そして、限度を超えた場合に発生するのがオーバーフローです。

では、油面の高さがキャブセッティングにどのような影響を与えるのでしょうか?

キャブレターの構造を考える際、油面の高さはしばしば“井戸の深さ”に喩えられます。昔ながらの滑車と桶で井戸から水をくみ上げる際、井戸が浅ければ楽に汲めますが、深い井戸では縄が長くなり引き上げる労力を要します。ポンプを使っても同様で、深くなるほどモーターに対する負荷は大きくなります。

油面の場合、ベンチュリー底部を地面、フロートチャンバー内のガソリン上面を地下水面と考えます。ベンチュリー底部とガソリン上面の距離が近い=油面が高い場合は、吸い上げる力が少なくてもガソリンは上がってくるのに対して、距離が遠い=油面が低い場合だとより大きな力がないとガソリンは上がらないことは、井戸の例からも分かります。

キャブレターにおける井戸水ポンプは、エンジンが発生する吸入負圧です。吸入負圧と吸入流量はエンジン回転数と負荷の大小によって変化しますが、どのような状態であっても油面が高ければ吸い上げられやすく、油面が低ければ吸い上げられにくいという傾向には変わりありません。

油面には機種ごとに規定値があり、適正範囲を外れて油面が低ければ、吸えない=混合気が薄くなり、油面が高ければ混合気が濃くなる可能性があります。

ジェットのサイズを大きくしても、プラグが焼け気味のままだった理由が低すぎる油面だったり、ジェット類がスタンダードサイズなのに、カブリ気味になる原因が油面の高すぎだったというトラブル例もあります。

また、4気筒車では、4つのキャブのジェットが同じでも、油面がまちまちだとプラグの焼け具合が異なる場合もあります。

したがって、キャブセッティングを行う際にはジェットやニードルを触る前に油面を確認することが重要で、ガソリンの断続を行うニードルバルブのコンディションもまた重要となるわけです。

ホンダホーネット用燃調キットは#1~#3キャブ用が共通で、それらとはメインジェットサイズが異なる#4が別のキットを使用する。このキット内にもニードルバルブが含まれているが、純正バルブシートは圧入式で外れないため、入っていない。価格は1キットあたり税込4400円。4気筒車は4キット使用する。

ニードルバルブ先端の黒いゴム製の円錐部分の中間あたりに、1周分の線状痕がある。この痕跡がバルブシートと接触していた部分で、段付き状に摩耗すると、当たり幅が増え気密性が低下して、オーバーフローの原因となる。

バルブシートが外れるキャブと分解できないキャブがある

ニードルバルブと対になってガソリンの流れを断続するのが、バルブシートです。キャブレターボディに取り付けられたバルブシートは、穴径によってジェットのようにガソリン流量を決定し、その穴にニードルバルブ先端の円錐部分が入ることでガソリンを遮断します。

経年劣化や腐食などでニードルバルブの先端が摩耗したり傷つくと、バルブシートとの密着が悪くなってガソリン漏れの原因となります。フロートが上がりきってもなおフロートチャンバー内の油面が上がることで、オーバーフローへとつながります。

キースターの燃調キットには、独自技術で開発した耐アルコール性の高い素材を使用したAAニードルが入っているので、ニードルバルブの問題はこれに交換すれば解決します。

バルブシートについても、ニードルバルブと同様に不具合が生じる場合があります。ワニス系の汚れであればパーツクリーナーに浸すことで多くは除去できます。しかし、腐食によってニードルバルブとの当たり面が荒れてしまっているような場合、綿棒の先に金属磨き剤を付けて擦ったり磨いたりしても、修正できない場合があります。また、経年変化によってニードルバルブとの当たり幅が広くなることで、面圧が低下して、やはりガソリンが遮断できずにオーバーフローを発生することがあります。

ただ、バルブシートがキャブ本体から取り外せるタイプであれば、燃調キット内に新品部品をセットしてあるので、これに交換すれば不具合はなくなるはずです。

問題は、バルブシートがキャブ本体に圧入されていて取り外すことができず、仮に取り外しても交換用の純正部品がない場合です。

ニードルバルブとの当たり面を綿棒で擦ってならしても、新品ニードルバルブを使ってもオーバーフローが止まらない場合、バルブシート交換できないキャブにとっては致命傷になるほどの深刻な問題となります。今回紹介するホーネット250はそれに該当しますので、バルブシートがだめになった場合、どうしようもなくなります。

純正でバルブシートが着脱できるキャブ用の燃調キットには、バルブシートも付属する。ケーヒン製で圧入シートを採用し、ニードルバルブを交換してもオーバーフローが止まらない場合、バルブシートの穴部分に明らかなダメージがある場合に使用するバルブシート蘇生キット。純正では部品設定のないバルブシートに加えて、着脱に必要な工具や治具までセットになっているのが特徴。

バルブシート蘇生キットのキモとなる、バルブシート(左)とニードルバルブ(右)の組み合わせ。先端がゴム製のニードルバルブと真鍮系合金のバルブシートの組み合わせなら、バルブシートの方が耐摩耗性が高いと判断して、純正では非分解の圧入式を採用したのかもしれないが、長い時間を経てどのように変化するかは分からない。その際に蘇生キットがあるのは心強い。

圧入タイプのバルブシートに対応するバルブシート蘇生キット

そうした状況に対応するべく、キースターではバルブシート蘇生キットを開発しました。

キット内容は、主役であるバルブシートに加えて、交換作業に必要な専用工具や治具類もセットされています。圧入バルブシートはそもそも取り外しを前提としていない部品なので、誰もが作業できるような準備が必要だと考えました。

非分解といっても、バルブシートはキャブボディに圧入されているだけなので、タップでネジを切ればボルトで簡単に引き抜くことができます。それよりも重要なのは、バルブシートの製造です。

しかしこれも、着脱タイプのバルブシート製造で十分な実績があり、ニードルバルブに対するクリアランスや中心のガソリン通路加工に対するノウハウも蓄積されています。

先に説明したように、タンクから重力で落下してくるガソリンが通過するバルブシートの穴径は、パイロットジェットやメインジェットと同様にガソリンの流量管理にとって重要です。純正に対して穴のサイズが小さければ、流量不足で油面が低くなる可能性があり、大きければニードルバルブが閉じても過剰に流れてしまうかもしれません。キースターでは、ジェットを製造する際と同様に、純正サイズと同じ穴径で加工しています。

今回作業を行ったホンダ ホーネット250用キャブレターは、純正バルブシートの先端(キャブボディ内部側)にネットストレーナーがセットされています。

ガソリンタンク内のサビがバルブシートとニードルバルブの間に引っかかると、オーバーフローの原因となるため、バルブシート入口手前のストレーナーは有効です。

その一方で、ガソリンタンク内のサビや汚れでストレーナーが目詰まりを起こすと、それによってガソリン流量が減少して油面が下がる(消費量に対して十分に供給できない)こともあり得るので、看過できません。

バイクメーカーのパーツリスト上では、圧入タイプのバルブシートは非分解で、ストレーナーの存在も明らかにはなっていません。また、別機種の圧入バルブシートにはストレーナーが付いていなかった例もあるので、すべてに装備されているわけでもないようです。

しかし、ストレーナー付きバルブシートの場合、バルブシート蘇生キットはストレーナーの洗浄目的でも有効です。なお、ストレーナーはキットに含まれませんので、純正バルブシートから取り外して再使用してください。

古いバルブシートを抜く際は、まず最初に付属のタップで雌ネジを切る。バルブシート素材は柔らかく、深くネジを切るわけでもないが、タップが傾かないよう前後左右から確認しながら慎重にねじ込む。

タップ先端が食い込んだら、ハンドルを取り付けてさらに雌ネジを切っていく。ここではフラットタイプのハンドルを使用しているが、ジェットやボディと干渉することも多いので、タップアダプターがあると便利。

バルブシートの奥までタップをねじ込み、雌ネジを作る。この時点でバルブシートは元の内径より拡大しており、ニードルバルブは使えない。新品バルブシートを圧入しすぎると、抜くには雌ネジを切るしかなく、一度このようにタップを立てると二度と使えないので要注意。

バルブシート蘇生キットに含まれる、綾目を切ったスリーブ状の固定治具と、2個のナットとワッシャーがついた六角ボルトでバルブシートを引き抜く。キャブボディにスリーブを垂直に当てるため、初工程でタップが傾かないようにすることが重要だ。

六角ボルトをバルブシートにねじ込んだら、中間部分のナットを緩め方向に回していくと、ボルトが徐々に抜けてくる。抜け始めではスパナに抵抗感があるが、バルブシートが動き出せば軽く回るようになる。

ナットを緩め方向に回し続けると、バルブシートがスリーブ内に引き込まれて抜ける。バルブシートの収まり具合を見ると、スリーブ内径との絶妙なクリアランスが分かる。さすがキャブレターパーツ専門メーカー製だ。

純正キャブに圧入されていた古いバルブシート(左)の先端には、ネットストレーナーが装着されていた。ガソリンタンクから燃料コックを経て流れてくるサビの粉や汚れをキャブ内部に入れないためには有効だが、知らぬ間に汚れが溜まって流量低下の原因になることはないのだろうか?

このキャブのストレーナーはほとんど汚れていなかったが、中にはサビ粉が付着している例もあるかもしれない。そうしたキャブの場合、バルブシート交換時にストレーナー洗浄を行えば一石二鳥になる。新たなバルブシートに再使用して、キャブボディにセットする。

フロート高さの調整ができない総樹脂製フロートは、バルブシートの圧入深さで対応できる

キャブレターにとって油面が根幹でセッティングにかなり重要であることは、これまで説明してきた通りです。そのためフロートゲージ測定や実油面測定で許容範囲からズレている場合には、フロートとニードルバルブの接触部分にある金属製の調整板(ベロ)で調整できるのが、かつての常識でした。

ところが1980年代に一体成型式樹脂フロートが一般化されると、このホーネットのように調整板のないフロートが採用されるようになりました。調整板をなくすことで油面調整の手間が省略された一方、メーカーの指定油面から外れた場合に調整しようがない、という新たな別の問題も生じました。

調整板のないフロートが装備された機種のサービスマニュアルには、規定外の場合はフロート自体を交換するよう指示されています。

そうした機種に対しては、バルブシート交換によってフロート高さを調整できるのもバルブシート蘇生キットのメリットとなります。バルブシートの圧入量によってニードルバルブの高さが変化し、結果的にフロートの高さも変化するからです。

具体的には、バルブシートの圧入量が浅ければ、ニードルバルブも浅くなって油面は下がります。逆にバルブシートを深くまで圧入すると油面は上がります。圧入量とフロートの高さはノーマル状態に準じるのが基本ですが、バルブシート交換前のフロート高さが規定値から外れている場合は、バルブシート圧入量で規定値に合わせることができます。

一度圧入してしまうと抜くことはできないので(タップでネジを切れば抜けますが、バルブシートの再使用はできません)、浅めに圧入した状態でフロート高さを測定し、徐々に圧入量を深くしながら許容範囲に合わせていくと良いでしょう。

4気筒のホーネットの場合、各ボディの指定のフロート高さと同時に4個のフロートレベルを相対的合わせることも重要なので、新たなバルブシート組み付ける際は、圧入と測定を細かく繰り返すことをおすすめします。

燃調キットだけでは解決できない圧入タイプのバルブシート問題の解決には、ぜひバルブシート蘇生キットを活用して、好調なキャブレターを維持していただければ幸いです。

フロートに高さ調整用のベロがない場合、古いバルブシートを抜く前に圧入量(フロート合わせ面からの突き出し量)を測定しておくと良い。そうでない場合は、隣のボディのバルブシートに取り付け治具を当てて、圧入量の目安を確認する。

圧入されているバルブシートに取り付け治具を当てた状態で、2個のナットをダブルナットの要領でロックしておけば、新たに圧入するバルブシートのガイド代わりになる。固定治具が傾かないよう保持しながら、ハンマーで軽く叩いて圧入する

ダブルナットで圧入量の目安を決めても、いきなり最後まで圧入せず、途中で固定治具を取り外して、フロートとニードルバルブを仮にセットしてフロート高さを測定する。この画像は大げさに圧入量を減らした状態で、フロートをセットするとフロートゲージ測定値は許容範囲より大きくなる。これはフロートチャンバー内の実際の油面では規定値より低くなる。

浅めに圧入した状態でフロート高さを測定し、徐々に許容範囲に入るよう圧入していく。フロートに調整板がない場合、バルブシート蘇生キットは油面調整にも役立つのだ。


※本記事はキースターが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。