キャブの最重要パーツなのに純正部品がない!?キースターが交換用バルブシートを開発

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エンジンの吸入負圧や吸気流量に応じて最適の混合気を作るため、キャブレターにはパイロットジェットやメインジェット、ジェットニードルといったパーツが組み込まれています。これらのセッティング要素を正しく機能させるためにはフロートチャンバー内のガソリン油面が重要で、キースターのバルブシート蘇生キットは従来修理不可能とされてきた圧入タイプの「バルブシート」の交換を可能とした画期的な製品として注目されています。

●BRAND POST提供:KEYSTER 岸田精密工業

油面低下より油面上昇の方がやっかいなケイヒンCVKキャブレター

ガソリンタンクから燃料コックを通じてフロートチャンバーにガソリンが流れ込むと、フロートチャンバー内のフロートが浮き上がり、ニードルバルブ先端の円錐部分がバルブシートに接してガソリンの流入をストップします。

油面が上がると混合比が濃くなり、反対に下がると混合比は薄くなるので、安定した性能を保つには油面を安定させることが重要です。ジェットやニードルを変更してキャブセッティングを行う際も、メーカーが指定する油面に保たれていることが大前提となります。

そんな油面に関するトラブルの筆頭に挙げられるのがオーバーフローです。これはフロートチャンバー内に規定値よりも多くのガソリンが流れ込んでも、何らかの理由でニードルバルブが閉じなくなることで生じます。

原因として多いのは、ニードルバルブとバルブシートとの間にガソリンタンク内の異物が引っかかって噛み込むパターンです。この場合、ドライバーやハンマーの柄でフロートチャンバーを軽く叩くと挟まった異物が通り抜けて症状が改善する場合もあります。

これとは別に、ニードルバルブとバルブシートの当たり面の問題からオーバーフローが発生することもあります。走行中、ニードルバルブは常にエンジン振動と走行振動を受けながら開閉しており、その摩擦で当たり面が摩耗することで密閉性が低下してバルブが閉じているのにガソリンが止まらなくなることがあるのです。

そしてここで重要なのが、オーバーフロー時のガソリンの流れです。

フロートチャンバーにオーバーフローパイプが付いている場合、油面がオーバーフローパイプを超えるとフロートチャンバー底部のドレンパイプから外部に流れ出します。

キャブレターからポタポタ、ジョロジョロとガソリンが流れ出すと焦りますが、外に溢れる分には燃料コックをオフにすれば止められます(負圧式コックの場合もエンジンを止めればガソリンは止まります)。

一方でここで紹介するケイヒンCVKのように、オーバーフローパイプを装備していないキャブレターも存在します。この場合、フロートチャンバー内の油面が上がりすぎるとジェットやエアーポートを通ってベンチュリー内にガソリンが流れ出してしまいます。

そして床上浸水のようにベンチュリー内に溢れたガソリンは、キャブレターの傾斜に従ってエンジン側に流れるか、エアークリーナーケース側に流れます。

この状態に気づかずエンジンを始動すると、劇的に濃いガソリンによる始動不良や、ガソリンによるエンジンオイルの希釈、さらに燃焼室内にガソリンが入ったままピストンが圧縮上死点に至るとコンロッドやピストンに重大なダメージが及ぶこともあります。

環境対策としてオーバーフローパイプを廃止することで大気中にガソリンを垂れ流さないことも重要ですが、溢れたガソリンがエンジンに流れ込むのも問題です。

ケイヒンCVKに代表されるオーバーフローパイプレスキャブレターは、油面低下より油面上昇の方が深刻なダメージにつながる可能性があることを知っておきたいものです。

指でつまんだニードルバルブはフロートと連動しており、フロートチャンバー内にガソリンが溜まるとフロートが浮き上がり、バルブシート底の穴を塞ぐとガソリンの流入がストップする。

古いニードルバルブとバルブシートと新品(キースター製:右)との比較。セットで新品に交換すればフロート内油面は確実に安定する。純正バルブシートが取り外せるキャブレターの場合、キースターの燃調キットにもニードルバルブとバルブシートが含まれる。

ケイヒンCVKキャブレターのバルブシートは圧入タイプで、純正部品の設定はないので新品での購入はできない。交換前提ではないため、バルブシート蘇生キット開発以前はキースターでも単品部品の用意はなかった。だがキャブレター全般が経年劣化する中で、ニードルバルブ交換だけではオーバーフローなどの不具合に対応できない事例も増えてきたことが開発のきっかけとなった。

フロートチャンバーにオーバーフローパイプが付いている場合、フロート内のガソリン油面がパイプの頂上を越えるとチャンバー下部のドレンパイプから排出される。

ケイヒンCVKキャブレターはオーバフローパイプがないため、油面が上昇して逃げ道がなくなったガソリンはベンチュリー内に溢れ、エンジンまたはエアークリーナーケースに流れ込む。キャブレター外部から気づきづらい分、ダメージが大きくなる危険性がある。

補修部品が存在しない圧入タイプのキャブレターに対応するバルブシート蘇生キット

ニードルバルブの先端は円錐形で、これがバルブシートの丸い穴に密着することでガソリンの流入が止まります。経年劣化や異物の噛み込みでバルブの当たり面が摩耗した場合、バルブを交換すればオーバーフローは解決しそうなものですが、実際はそうとは限りません。

先の通り、エンジンや走行振動を受けるバルブシートの接触面も摩耗することがあるからです。

こうした状況に対応できるよう、バルブシートの着脱と交換が可能なキャブレターもあります。摩耗するのは決してニードルバルブだけではないと考えれば、この構造は合理的です。

キースターの燃調キットも、バルブシートが外れる機種用にはバルブシートも含んでいます。

問題なのは、キャブレターの中にはバルブシートが圧入されて交換できなものがあることです。数多くのカワサキ車に装着されてきたケイヒンCVKがまさにそのタイプです。

圧入タイプのバルブシートは純正部品の設定がないため、傷ついたり長期放置で錆びてしまっても交換することができません。

バルブシートは柔らかい真鍮系の素材で作られているので、当たり面を金属用研磨剤をつけた綿棒で磨いて修正できることもありますが、摩耗によって当たり幅が広くなってしまうとバルブが閉じた際の面圧が下がって、振動が増えると徐々に漏れてしまいオーバーフローにつながることもあります。

こうしたキャブレターを救うため、キースターが開発したのがバルブシート蘇生キットです。2022年にホンダCB750F系のケイヒンVBキャブレター用キットを発売しましたが、2023年春、第二弾としてケイヒンCVKキャブレター・シート径φ2.0用が完成したので、近々販売することになります。

400ccから1000ccオーバーまでCVKは多くの機種に装着れており、ベンチュリー径も様々です。排気量やベンチュリー径によってガソリン流量を決めるバルブシート径も異なり、今回開発された製品は主に400ccクラスに対応するバルブシート径φ2.0を採用しています。

バルブシート蘇生キットは主役であるバルブシートとニードルバルブと、通常は外れない圧入されたバルブシートを着脱するための専用工具や治具で構成されています。

このうち、ニードルバルブは機種別の燃調キットにも含まれています。例えばCVKキャブを装着する代表的な機種であるカワサキゼファー400用燃調キットにも、ニードルバルブが含まれています。

したがって、バルブシートに異常がない場合は燃調キット内のニードルバルブだけを交換すれば油面は安定するはずです。しかし、ニードルバルブ交換だけではオーバーフローが解消しない、またはバルブシートの当たり面に明らかな傷があるような場合は、バルブシート蘇生キットが真価を発揮することになります。

2022年に発売されたホンダCB750F用VBキャブレター用キットに続いて開発された、ケイヒンCVKキャブレター・シート径φ2.0用バルブシート蘇生キット。ケーヒンCVKはメーカーや機種を問わず幅広く採用されていたが、今回製品化したのはカワサキ400ccクラスに多いバルブシート径φ2.0仕様。販売予定価格は8,800円(税込)

交換を前提としていないため補修部品として存在しないバルブシートを独自に開発。不具合が生じるのはニードルバルブだけとは限らないため、交換可能なバルブシートが登場したのはCVKユーザーにとって朗報だ。

バルブシート圧入後はフロートレベルゲージでフロート高さを調整する

純正キャブレターのバルブシートが取り外し可能な機種向けの燃調キットには、あらかじめバルブシートも入れているので、私たちにとってバルブシートを製造することは難しくありません。

しかし取り外す前提のない圧入バルブシート交換は、汎用工具だけではできません。そこで専用の治具も開発しています。古いバルブシートにタップで雌ネジを作り、筒状の固定治具の上から六角ボルトでバルブシートを引き抜くもので、簡易的なベアリングプーラーのような仕組みです。

この治具によって圧入されたバルブシートをスムーズに引き抜くことができます。

純正部品と同じ形状で製作した新たなバルブシートを圧入する際は、取付治具をハンマーで軽く叩いて圧入します。ハンマー自体の重みで入るような寸法に仕上げてあるので、力いっぱい叩く必要はありません。

とはいえあまり緩いとキャブレターボディとバルブシート外周からガソリンが流れ込んで油面が上昇する原因になるので、そのあたりは念入りに検討して設計に反映しています。

圧入タイプのバルブシートを交換した場合、フロート高さまたは実油面の調整作業が必須となります。蘇生キットのバルブシートの圧入量が純正シートより浅ければフロートは下がり、深く圧入すればフロートは上がります。

その僅かな違いを、フロート根元の調整板によって調整して、サービスマニュアルに指定された高さに合わせることで、正しいセッティングが可能になります。

先に発売したホンダCB750 F用蘇生キットは、CB750F用VBキャブの純正フロートに調整板がないためバルブシートの圧入量がシビアでしたが、CVKキャブはニードルバルブ後端のロッドが金属製の調整板と接するタイプなので、バルブシートを圧入した後でフロート高さを合わせることが可能です。

ちなみに、カワサキゼファー400用のフロート高さは17±2mmです。

冒頭で述べたように、キャブレターにとってガソリン油面の安定は最も重要です。オーバーフローパイプがなく純正バルブシートが圧入タイプのケイヒンCVKキャブの場合、バルブシートの摩耗によるオーバーフローが大きなトラブルの原因になり得ることを考慮すれば、バルブシート蘇生キットの有用性がご理解頂けると思います。

圧入されたバルブシートを引き抜くため付属のタップを立てる。バルブシートの素材は真鍮系の合金で柔らかいので、簡単に雌ネジができる。

バルブシートに合わせて製作された筒状の固定治具にボルトを通して、雌ネジを切ったバルブシートにねじ込む。

回り止めのメガネレンチでボルトの頭を押さえて、固定治具に接したナットを回してバルブシートを引き上げる。

ナットを回すトルクが軽くなったらバルブシートが抜けた合図。固定治具を外すと、ボルトの先端に古いバルブシートが付いてくる。

固定治具の内側に取り付け治具をセットして、キースター製バルブシートをハンマーで圧入する。底に突き当たるまで打ち込むのではなく、バルブシート端面の突き出し量が純正と同程度になるまで打ち込む。

キースター製ニードルバルブを組み付けたフロートをキャブレターに取り付け、フロートレベルゲージで高さを測定する。ゼファー400のフロート高さは17±2mm。

基準値から外れている場合はフロートを取り外し、調整板を曲げて調整する。基準値内に合わせるのはもちろん、4つの高さが揃うように合わせると良い。


※本記事はキースターが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。