【伊豆半島にモビリティを】原動機研究部が進める高校年代とバイクの安全運転

【伊豆半島にモビリティを】原動機研究部が進める高校年代とバイクの安全運転

伊豆北部の地域サークル、原動機研究部が伊豆市の菊地市長らとツーリングを敢行! 伊豆市、伊豆市教育委員会、静岡県交通安全協会らの後援を得て、白バイの先導による安全運転啓発パレードも実施。苦節5年、地域の高校年代のためのモビリティ普及活動を地道に続けてきた原動機研究部のいまを追い、考察する。


●文/写真:田中淳麿

1.【背景】伊豆半島の地域サークル、原動機研究部とは?

出発式での集合写真。社会人となったOBがイベントの仕切りを担当した

伊豆半島北部で活動する地域サークル「原動機研究部(略称、原研)」は高校生、高専生、社会人のOB、保護者、支援者らで構成される地域サークルだ。

所属する学校や年齢の枠を超えて、バイクやクルマに興味を持つ若者が集まり、地域の移動課題改善、地域の活性化・観光・防災などをテーマにさまざまな活動を行っている。

特に、公共交通が不便な山間部から市街地の学校に通う高校年代の子どもたちにバイクや電動モビリティといった便利な移動手段を届ける、普及させるための活動に重点を置いている。

今回のツーリングでも、中伊豆ワイナリーヒルズ内の移動において、3輪電動パーソナルモビリティ「ストリーモ」の試乗体験を組み込んだ

そのために、原付バイクや特定原付などの電動パーソナルモビリティに触れられる機会づくりや安全運転講習会、それらを組み込んだツーリングを行うことによる情報発信を続けている。

現在の部員はOBらを含めて20数名。部員の保護者や支援者といった大人たちと一緒に、大手企業や自治体とも連携した企画を次々と実現している行動派の地域サークルだ。

————————–

2.【要点】関係機関からの「後援」を得たことの意義

早朝の伊豆市役所にツーリングの参加者と関係者が集合した。バイクを積めるサポートトラックも伴走する

今回のツーリング「菊地市長と廻る 伊豆市ツーリング」は、行程や内容だけを見れば、これまで行われてきた地域の観光振興、活性化を目的としたものと一見変わらないが、その実、大きく異なっている。

それは、以下の関係機関から初めて「後援」を得られたことだ。

●伊豆市

●伊豆市教育委員会

●静岡県交通安全協会

<伊豆市・市教委からの後援>

出発式で挨拶をする伊豆市の菊地豊市長。「私自身も16歳で当時上限のなかった自動二輪免許を取得し大型バイクにも乗っていました。今日は最高の天気に恵まれたので、楽しく安全に最後まで走りましょう」(要約)

原研は伊豆市、沼津市、伊豆の国市、函南町、三島市といった伊豆北部を拠点に活動している。なかでも伊豆市の菊地豊市長(5期目)は、地域が抱える移動課題に共感し、公私にわたって原研の活動をサポートし、プライベートという立場ながら原研企画のイベントやツーリングにも度々参加し、発信も行ってきた。

今回のツーリングでも私人としての参加ではあるが、「地域の高校年代の交通安全推進等に寄与する」として、伊豆市と市教育委員会からの後援取得に尽力されている。

活動拠点であり、伊豆半島で最も大きな自治体である伊豆市から後援が得られたことは、今後の原研の活動に大きな弾みとなるだろう。

<静岡県交通安全協会からの後援>

ツーリング参加者に啓発パンフレットを配布する静岡県交通安全協会の職員

原研はこれまでにも地域の高校年代に対して、原付バイクおよび自動二輪車、特定原付など電動モビリティへの乗車に関して安全運転講習会を実施してきた。

その際、毎回のように苦慮してきたのが「誰が教えるのか?」という問題だ。地域サークルである原研は、主要な関係団体からは「個人の集まり」としか見られず、実技講習を行える安全運転指導員から協力を得ることが難しかった。

しかし今回、県の交通安全協会から後援を得られたことで、協会下の二輪車安全運転推進委員会(略称、二推)から二輪車安全運転指導員・特別指導員を派遣してもらうといったことにも実現の可能性が見えてきた。

出発式で反射材装着の重要性を説明する静岡県交通安全協会の職員。10~11月はバイク事故の多い時期であり、ライダー自身が反射材を身に着けることの大切さを呼びかけた

さらに、今回のツーリングの後援には、シダックス中伊豆ワイナリーヒルズ株式会社、株式会社カスタムジャパン、株式会社ストリーモ、無限電光株式会社も名を連ね、応援の輪は着実に広がっている。

————————–

3.【レポ】菊地市長と伊豆市の名所・景勝をめぐる

県道18号線のワインディングロードを、隊列を組んで駆け抜ける参加者たち

集合・出発地となった伊豆市役所の駐車場には、早朝から部員、支援者、関係機関の担当者らが集まった。

<安全運転宣言も行われた出発式>

先般、所轄の伊豆中央警察署へ安全運転宣言書を提出した部員の高橋智久さんが参加者の前で改めて力強く宣誓を行った。

安全運転宣言

私たち高校生にはバイクで見たい景色があります。

行ってみたい場所があります。そして、バイクを通じて出会いたい仲間がいます。

だからこそ、交通ルールを守り、自分の命も仲間の命も大切にします。

誰かに言われたから守るのではなく、バイクが好きだからこそ自分の意思で安全運転を実施します。

地域の皆さんから信頼されるライダーになることをここに宣言します。


令和8年10月17日 原動機研究部 高橋智久

参加者が居並ぶ前で、安全運転宣言を読み上げる高橋さん

式内では、菊地市長、静岡県オートバイ事業協同組合(略称、AJ静岡)の佐々木副理事長からの挨拶に加え、静岡県警伊豆中央警察署の三木交通課長からの安全運転講話、静岡県交通安全協会からの反射材着用推進に関する講話、無限電光協力によるエアバッグベストの展開実演が行われた。

出発式で来賓として挨拶をするAJ静岡の佐々木副理事長。「高校生が免許を取って市長と一緒にツーリングをする。僕らが若いころには考えられないようなことです。当組合も三ない運動を改善したい、安全教育に尽力したいという想いで日々活動しております」(要約)

伊豆中央警察署の三木交通課長は安全運転講話において、今年施行された改正道交法に関する「自転車の反則金制度」の注意点と、管内の事故発生状況について説明。伊豆スカイライン、西伊豆スカイラインで発生したバイク事故を例として制限速度を守ることの大切さを訴えた

無限電光製のエアバッグベストを展開する部員。ワイヤーを強く引っ張るとベストは一瞬で膨らんだ

<ツーリングの始めに安全運転啓発パレードを実施>

出発式を終えた一行はヘルメットやプロテクターといった安全装備を確認したのちバイクの排気量や運転経験などで走行グループを3つに分け、白バイが先頭、パトカーが最後尾という隊列を組みながら市内の幹線道路で安全運転啓発パレードを行った。

白バイを先頭に、伊豆市内の幹線道路をパレードするツーリング参加者

<ワイナリーでは電動モビリティと収穫を体験>

パレードは最初の目的地である中伊豆ワイナリーヒルズまで続けられた。白バイ・パトカーとはここで別れ、一行は電動3輪パーソナルモビリティのストリーモに乗り換えてワイン用ぶどうの収穫体験へ。

広大な敷地のなかを電動モビリティのストリーモで移動した

ワイン用ぶどう「ヤマ・ソービニオン」を収穫する高橋さん。ワイン用なのでそのまま食べても渋みが強い

その後は修善寺から達磨山へと至る定番のツーリングロード、県道18号線を駆け上がり、瞽女(ごぜ)展望地で休憩をはさみつつ、温泉と金山のまちとして知られる土肥の松原公園でランチタイムとなった。

<日本初の津波避難複合施設で昼食休憩>

「世界一の花時計」で知られる松原公園だが、今回のメインは2024年7月に完成した日本初の津波避難複合施設「テラッセ オレンジ トイ」。

地域住民・観光客を津波から守るための避難設備と、食事やショッピング、カフェでの休憩も楽しめる観光設備を兼ね備えた土肥温泉の新たなシンボルタワーだ。

「テラッセ オレンジ トイ」の外観。この地域は日本で唯一の津波災害特別警戒地域で、3階と4階はL2レベル(数百〜千年に1度程度の最大クラス)の津波にも耐えられる

3階の食事処「ありがとう」では季節の地魚や土肥の本わさびを活かした料理がいただける。写真は、しらすといくらがメインの「日の丸丼(2,280円)」

<西伊豆スカイラインと達磨山で富士山の絶景を眺望>

西伊豆スカイラインの達磨山から望む富士山。中腹で雲がたなびいていたが、わずかに顔を出していた

ツーリングは土肥で折り返し、一行は舩原峠を経て西伊豆スカイラインへ。天気快晴で周囲の下草にも緑色が残るなか達磨山への絶景ツーリングを楽しんだ。

再び県道18号線に戻ると、だるま山高原レストハウスで最後の休憩となった。一行は、駿河湾越しの壮大な富士山を堪能したのち、ゴールの伊豆市役所へと向かった。

参加者らに伊豆半島の成り立ちと今後、ニューヨーク万博(1939年)での富士山の巨大写真展示の逸話などについて話す菊地市長

————————–

4.【私感】伊豆半島のモビリティ活用へ確かな前進

だるま山高原レストハウスを後にし、ゴールの伊豆市役所へと走る原付グループ

今回の伊豆市ツーリングにはこれまで以上に多くの関係機関が協力した。このつながりと実績は、今後の原動機研究部の活動をより確実性の高いものとし、山間地である伊豆半島でのモビリティ活用に少なからず良い影響をもたらすだろう。

静岡県に三ない運動はないという。ただし事実として多くの学校の校則にはしっかりと残されている。

通学や塾通い、アルバイトなど高校年代の移動課題がますます大きくなるなか、山間地に住む一部の生徒のために学校や地域は何ができるのか。

安全運転講習会の実施、点検整備体制の確立、安全装具の正しい認識と装着。こうした最低限の安全を誰がどう担保していくのか。

当事者である子どもたちが主役となって道を切り拓く「原動機研究部」の今後の歩みに、引き続き注目していきたい。

※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。