
トライアンフ モーターサイクルズ ジャパンは、かねてより開発を進めてきたエンデューロマシン『TF250-E』と『TF450-E』の仕様を公開し、本年中に発売することを発表した。車両販売価格は、TF250-Eが115万6000円、TF450-Eが129万6000円だ。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●外部リンク:トライアンフモーターサイクルズジャパン
AMAスーパークロス2位の実績を持つモトクロッサーのエンデューロ仕様が上陸!
トライアンフが開発したオフロードマシンには、250cc4ストローク単気筒エンジンを搭載するモデルと、450cc4ストローク単気筒エンジンを搭載するモデルがある。また、それぞれにモトクロス用の『X』とエンデューロ用の『E』があり、全4車種がラインアップされている。
トライアンフはTF250-XでAMAスーパークロスでいくつもの表彰台を獲得しており、ハードエンデューロの第一人者であるジョニー・ウォーカー選手は同マシンを駆って’25年2月に開催されたスーパーエンデューロ世界選手権で総合2位に入賞している。そして、トライアンフは、エンデューロ仕様に改良したTF250-EとTF450-Eで、エンデューロレースへ本格参戦する。
このたび日本導入が決定したのはエンデューロモデルの『TF250-E』(115万6000円)と『TF450-E』(129万6000円)だ。基本的には競技用車両だが、北米以外では公道走行可能なエンデューロレーサーとして販売される(※日本国内での仕様は未定)。
TF250-E(左)/TF450-E(右)
本国のイギリスではTF250-Eが9795ポンド、TF450-Eが1万395ポンドだ。これを’25年3月26日現在の為替レート194.14円で換算すると、それぞれ約190万1600円、約194万1400円となる。日本国内の車両価格は非常なバーゲンプライスに設定されている。
また、トライアンフ初のオフロード競技用モデルとなるため、国内での正規販売店は、トライアンフ東京ベイ、トライアンフ浜松、トライアンフ福岡、トライアンフ鹿児島の4店舗のみとなっている。
では、TF250-E(以下250)とTF450-E(以下450)のモデル詳細をみていこう。
1万3000rpm近くまで回る高回転型エンジン
写真はTF450E
エンジン形式はどちらも水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブだ。ボアストロークは250を78mm×52.3mm、450を95mm×63.4mmとしている。
250の最高出力は42.3psで、1万2800rpmをトップエンドとする高回転型エンジンだ。そのためテクニカルセクションに適した特性を持つ。
いっぽう、58.6psを発生する450は、高速エンデューロに適した特性とし、オープントレイルや丘陵地帯でのパワーとスピードを追求。経験豊富なベテランライダー向けとしている。また、低中回転域の力強いトルク特性により、ヒルクライム、砂丘といったシチュエーションも得意とし、頻繁にシフトチェンジせずとも悪路を走破できる。
また、エンデューロレーサーとなるEは、モトクロッサーのXよりもクランクマスを重くすることで、安定して扱いやすい出力特性を持たせている。また、ギヤボックスもエンデューロに最適化され、5段ギヤのXに対してEは6段ギヤとし、タイトなテクニカルセクションでの走破性を高めた。クラッチはエクセディ製レーシングクラッチを採用する。
専用設計のデロルト製44mmスロットルボディは、コールドスタート用のエアバイパスシステムを備え、アイドリングはマニュアル設定が可能だ。
デルウェスト製チタンバルブ、ケーニッヒ製アルミ鍛造ピストンはどちらにも共通する仕様だが、450ではピストンピンとロッカアームにDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)コーティングを施し、耐久性を高めている。さらに450は大容量ラジエターと補助ファン、ツインエアー製デュアルステージフィルターを採用。これは工具不要で交換でき、レース中あるいはレース後のメンテナンスを手軽、かつ迅速に行える。
イタリアと共同開発の電子制御
エンデューロマシンらしからぬ多機能スイッチボックスを装備(写真はTF250-E)。
250、450ともにトラクションコントロール、パワーモード、ローンチコントロール、クイックシフターを標準装備している。開発はトライアンフとアテナ(イタリアを拠点とし、エンジン部品や電子部品を開発するパーツサプライヤー)の共同で進められた。そのコンセプトは、走行性能とトラクション性能の向上だ。
パワーモードは2種を備える。ひとつはアグレッシブに走行する際に最適なマップで、もうひとつはテクニカルセクションで効果を発揮するスムーズでコントロールが容易なマップで、走行中も切り替え可能だ。さらに、オプションのWi-Fiモジュールと『トライアンフ MXチューン プロ』アプリを使うと、マップを追加することもできる。
ローンチコントロールとクイックシフターは、スムーズで素早いスタートと加速、シフトチェンジが可能となっている。
これら4種のスイッチはすべてハンドル左側に備わっている。各スイッチにはLEDが内蔵され、動作状況を確認できるのはユニークな特徴だ。右側ハンドルスイッチはエンジンスタートとキルスイッチ、さらにエンジンの故障表示灯(MIL)も備わる。
デジタル式メーターは、速度、エンジン温度、トリップ情報、ギヤポジションなどの情報を表示可能だ。
排気系
250はヘッダーパイプにヘルムホルツレゾネーターを内蔵し、出力特性と排気効率を向上。450ではサイレンサーにサイドレゾネーターを内蔵し、特定周波数のノイズを減衰させ、トルク感のある独特のサウンドに調律している。
フレーム
250、450のどちらも軽量なアルミ製ツインスパー式を採用する。このフレームは質量、剛性、低重心化を実現しており、俊敏で正確なハンドリングと高速走行時の安定性を高めている。
製造にあたっては、デジタルファブリケーション技術で精度を高めつつ、トライアンフの熟練のTIG溶接職人による手作業を組み合わせ、より高精度で耐久性に優れるものとしているのも特徴だ。
サスペンション
サスペンションは前後ともにKYB製フルアジャスタブルで、フロントフォークは48mm倒立、リヤショックはリンクを介してスイングアームに接続する。サスペンションストローク量は、フロントが300mm、リヤが310mmとした。これはXよりも10mm少なく、コーナリングでのピッチを最小限に抑えつつ、衝撃吸収性との優れたバランスを実現している。
また、セッティングの簡便さと整備性に優れ、さまざまな体格のライダー、あらゆるシチュエーションの路面に対応する。
ジオメトリーもエンデューロ専用セッティングとし、フロントタイヤからの正確なフィードバックを得られる。レースだけでなく、アグレッシブなアドベンチャーツーリングにも対応する。
ブレーキ
ブレーキディスクはフロントが260mm径、リヤが220mm径を備え、フロントのキャリパーはブレンボ製24mm径2ポッドフローティング、リヤは26mmシングルポッドを装備する。レバーは調節式を採用する。
ホイールとタイヤ
前後ホイールのリムはD.I.D製ダートスター7000シリーズのアルミ製をブラックアルマイト加工した。さらにトライアンフが設計した軽量な鋳造切削アルミのハブを組み合わせている。
標準装着されるタイヤは、ミシュラン製エンデューロ2。トラクション性能に優れ、ソフトからハードまでさまざまな地形や、マッドからグラベルまで幅広く対応する。
ライディングポジション
プロテーパーACFカーボンコアハンドルバーはポジション調整が可能で、それぞれのライダーに合わせたライディングポジションを作ることができる。
シート高は955mmで、耐久性を高めた表皮には滑り止め加工が施されている。また、人間工学に基づいたフォームパッドは長時間のライディングでも疲れにくい。
純正アクセサリー
シート高を20mm下げるローシートをはじめ、リヤフェンダーバッグ、ハンドガード、リヤサスペンションリンクガード、アクラポビッチ製チタンサイレンサーなどが用意される。
国内仕様の詳細および発売日は未定だが、近日中に正式発表があるはずだ。前述したように、トライアンフのエンデューロレーサーは破格の値段となっている。ハードエンデューロレースに参戦しているライダーはもちろんのこと、トライアンフ初となるオフロードレーサーに興味のある人も続報に期待しよう。
TRIUMPH TF250-E
主要諸元■全長─ 全幅836 全高1264 軸距1488 シート高955(各mm) 車重114.2kg■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 249.9cc 42.3ps 5.03kg-m 変速機6段 燃料タンク容量8.3L■タイヤサイズF=90/90-21 R=140/90-18 ●価格:115万6000円 ●色:黄×黒×白 ●2025年発売予定
TRIUMPH TF250-E
TRIUMPH TF450-E
主要諸元■全長─ 全幅836 全高1264 軸距1488 シート高955(各mm) 車重116.7kg■水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 449.9cc 58.6ps 2.83kg-m 変速機6段 燃料タンク容量8.3L■タイヤサイズF=90/90-21 R=140/90-18 ●価格:129万6000円 ●色:黄×黒×白 ●2025年発売予定
TRIUMPH TF450-E
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(トライアンフ)
MOTONE × PLOT トライアンフ ボンネビルシリーズのパーツをリリースする英国ブランド「モートーン」のカスタムコンプリート車両。ダイキャスト/射出成形/CNC削り出しなど可能なかぎりの高等技術[…]
ジェントルマンズライド(Distinguished Gentleman’s Ride)とは? 「ジェントルマンズライド(Distinguished Gentleman’s Ride、以下DGR)」は、[…]
660ccの3気筒エンジンを搭載するトライアンフ「デイトナ660」 イギリスのバイクメーカー・トライアンフから新型車「デイトナ660」が発表された際、クルマ好きの中でも話題となったことをご存知でしょう[…]
”最高”のスピードトリプルが登場 スピードトリプル1200RXは、世界限定1200台のみ生産予定。2025年1月に発表されたスピードトリプル1200RSからさらにアップデートされており、「究極のスピー[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
最新の関連記事(新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
レブル250ではユーザーの8割が選択するというHonda E-Clutch ベストセラーモデルのレブル250と基本骨格を共有しながら、シートレールの変更や専用タンク、マフラー、ライディングポジション構[…]
日本でも正式発表が待たれる400ccオフロード/スーパーモト スズキは、昨秋のEICMA(ミラノショー)にて、新型400ccデュアルパーパスモデル「DR-Z4S」およびスーパーモトモデル「DR-Z4S[…]
KLX300はKXイメージのシャープな最新デザインに新グラフィック&色変更 日本では2016年5月15日にファイナルエディションが発売されたデュアルパーパスモデル「KLX250」だが、北米では2021[…]
2024年登場の「KLX230S」「KLX230SM」に続く新バリエーション KLX230プラットフォームに新顔が登場した。北米で発表されたのは、「KLX230 DF ABS(DF)」と「KLX230[…]
ドゥカティ初の単気筒モタードモデル モタードモデルといえば、通常はオフ車の派生モデルとして作られるが、この「ハイパーモタード698モノ」は、ロードスポーツキャラに100%振りきって、車体剛性も高めに設[…]
人気記事ランキング(全体)
エイトボール! 王道ネイキッド路線への参入予告か スズキがグローバルサイトでティーザーらしき予告画像を公開した。ビリヤードの8番玉の横には『SAVE THE DATE 4TH JULY』とあり、7月4[…]
新進気鋭のクルーザー専業ブランドから日本市場に刺客! 成長著しい中国ブランドから、またしても新顔が日本市場にお目見えしそうだ。輸入を手掛けることになるウイングフット(東京都足立区)が「導入ほぼ確定」と[…]
静かに全身冷却&最長10時間のひんやり感を実現 ライディングジャケットのインナーとしても使えそうな『PowerArQ Cooling Vest』。その特長は、ファンやブロワー、ペルチェ式ヒートシンクを[…]
なぜ「モンキーレンチ」って呼ぶのでしょうか? そういえば、筆者が幼いころに一番最初の覚えた工具の名前でもあります。最初は「なんでモンキーっていうの?」って親に聞いたけども「昔から決まっていることなんだ[…]
供給不足解消に向け、スズキもかなり「がんばってます」 ジムニーノマドは、2025年1月30日の発表からわずか4日間で約5万台もの受注を獲得し、注文受付が一時停止に追い込まれるなど、国産車としては異例と[…]
最新の投稿記事(全体)
カバーじゃない! 鉄製12Lタンクを搭載 おぉっ! モンキー125をベースにした「ゴリラ125」って多くのユーザーが欲しがってたヤツじゃん! タイの特派員より送られてきた画像には、まごうことなきゴリラ[…]
排気量“500cc”バイクの魅力って? Hondaがラインアップする人気シリーズ「レブル」&「CL」シリーズ。 中でも、レブル250とCL250は幅広い層に人気を集めていて、街中やツーリング先でもとて[…]
スマートフォン連携でバッテリー管理が劇的に進化! 名古屋市に本社を置く株式会社SECONDが、LEADMAX-JAPANとの販売代理店契約を締結。2025年7月1日より、日本初上陸となるモーターサイク[…]
シリーズ第12回は最終回特別応用偏! 白バイと言えばヤングマシン! 長きにわたって白バイを取材し、現役白バイ隊員による安全ライテク連載や白バイ全国大会密着取材など、公道安全運転のお手本として白バイ流の[…]
スズキGSX-R:斬新かつ孤高のネーム、走りもケタ違い 1983年は、世界耐久や鈴鹿8耐でスズキの耐久レーサーGS1000Rが旋風を巻き起こした。 その年の暮れ、晴海で開催された東京モーターショーに、[…]
- 1
- 2