
スズキはミラノショーで、新型デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」および新型スーパーモトモデル「DR-Z4SM」を発表した。一部地域を除いて販売終了していたDR-Z400SおよびDR-Z400SMのモデルチェンジ版で、DR-Z4Sは2025年4月より、DR-Z4SMは2025年5月より北米・欧州を中心に各国で順次発売する。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●外部リンク:スズキ
400ccのDR-Zが帰ってきた!
モトクロス競技の主導権を4ストロークが握り始めて間もない2000年、公道市販車として産声を上げたのは水冷398cc単気筒を搭載するハイスペックなデュアルパーパスモデル「DR-Z400S」だった。
それまでスズキはRMX250Sというエンデューロマシンとほぼ双子の1人乗り専用デュアルパーパスをラインナップしていたが、よく似たサイズ感とパワーを備えたDR-Z400Sがそれにとって代わり、2005年には前後17インチホイールを装着したスーパーモトモデル「DR-Z400SM」も登場。
のちに排出ガス規制が厳しくなっていったことから北米を除き順次販売終了していったが、復活を待ち望む声も多かったはずだ。
今回スズキがミラノショーで発表したのは、新たに電子制御スロットルを中心とした電子制御が与えられ、新デザインに生まれ変わった2車。新型デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」および新型スーパーモトモデル「DR-Z4SM」だ。ともに各国の排ガス規制、騒音規制、ブレーキ規制に対応していることから、再び日本を含む各国市場に投入される可能性は高い。
新搭載の電子制御システムS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)には、G(グラベル)モードを含むトラクションコントロール、SDMS(スズキドライブモードセレクター)、解除モード付ABSを採用し、ライダーのスキルや路面のコンディションに応じた多様なライディングが可能に。
新たにシャープな外装デザインでアグレッシブなスタイリングとなり、軽量コンパクトで機能性に優れたLCDメーター、LED灯火類の採用によって最新世代の小顔&一つ目フェイスを手に入れている。
デュアルパーパスモデル「DR-Z4S」のコンセプトは“Ready 4 Anything”で、ライダーが望むならどこでも楽しめるパフォーマンスを。そしてスーパーモトモデルの「DR-Z4SM」は“YOUR STREETS. YOUR PLAYGROUND.”を掲げ、ストリートで自信を持って楽しめる自由度を提供する。
スズキは、DR-Z4Sを2025年4月より、DR-Z4SMは2025年5月より北米・欧州を中心に各国で順次発売するとしており、ヤングマシンでは免許制度との相性もいい日本への導入の可能性は高いと見ている。
DR-Z4S
DR-Z4SM
ユーロ5+に適合したエンジンは電子制御も充実
エンジンは黄色が新作または設計が見直された部分。ようするにほぼ全てである。
デュアルスパークプラグを採用する水冷398cc単気筒エンジンは、従来よりも低回転域のトルクを強化したうえで、最高出力が発生する回転域を超えてからのパワーの落ち込みを少なくし、スムーズな伸び切り感を手に入れた。
これを実現するためにφ42mmの電子制御スロットルボディやチタン吸気バルブ、中空ナトリウム充填排気バルブ、新設計の軽量ピストンなどを採用。吸気通路の見直しや10穴インジェクターもこれに貢献する。
このほかスズキクラッチアシストシステム(SCAS)や新しい二重壁設計のエキゾーストパイプ、デュアルステージ触媒(仕向け地によって採用)など、内燃機関部分以外にも多く手が入れられた。
最高出力自体は以前のモデルの40ps/7500rpmから38ps/8000rpmになったが、パワーグラフを見ると中速が盛り上がっていたトルク特性を全域に繋がりよく配置した感じだ。WMTCモード燃費は、ブロックタイヤのDR-Z4Sが28.4km/L、スムーズなオンロードタイヤのDR-Z4SMが29.4km/Lとなっており、容量8.7Lの燃料タンクでの航続距離は247kmと十分だ。
2段階に触媒を配置したデュアルステージキャタライザー。エキパイ部分は触媒のぶん膨らんでいて、往年の2ストロークマフラーのチャンバーを思わせる。
電子制御はスズキインテリジェントライドシステム(S.I.R.S.)と総称され、出力特性を3段階に切り替えられるSDMS=スズキドライブモードセレクター(最高出力は変わらない)、グラベルモードを含む3段階+OFFのSTCS=スズキトラクションコントロールシステム、スターターボタンをワンプッシュするだけでエンジン始動までセルモーターが回るスズキイージースタートシステム、ON/OFF可能なABS(DR-Z4SはリヤのみOFFも可能)を備える。
左は3モードあるSDMSのスロットル開度とパワーデリバリーの関係を描いたグラフ。右は出力&トルクカーブで青線が従来モデル、赤線が新型だ。
上記のトラクションコントロールシステムは、DR-Z4SとDR-Z4SMそれぞれに特性が変えられていて、特にG(グラベル)モードではかなり異なる特性になっている。
Gモードはオフロード走行中に一定の後輪スピニングを許容し、不用意なパワーカットを感じさせない設定。点火時期を遅らせる制御により、スロットルコントロールできる範囲が広く、自信を持ってスライドコントロールができるようになっている模様。DR-Z4Sはスピニングの許容度が少しだけ狭い代わりに起伏のある地形でも効果を発揮し、DR-Z4SMのほうはよりスピニング許容度が高くフラットダートに重点を置いた設定だ。
車体はフレームから新設計
スチールパイプ製のフレームは新たに設計されたツインスパータイプで、軽量なアルミ製シートレールと組み合わされる。サスペンションはDR-Z4S・DR-Z4SMいずれもKYB製の圧/伸び減衰調整可能な倒立フロントフォーク、同じくKYB製フルアジャスタブルのリヤサショックを採用。ホイール径はDR-Z4Sが前21/後18インチ、DR-Z4SMは前後17インチだ。
ハンドルバーはアルミ製テーパードタイプ(中央のクランプ付近が太く膨らんだ形状)を採用し、剛性と吸収性を両立しながら軽量化。最適な幅のシートと幅広のステップを備え、ライディングポジションはより快適性が高められた。これにより、より大柄なライダーでも快適に乗れそうだ。
DR-Z4Sのライディングポジションは、グリップ位置が28mm高くなり2mm後退、ステップは7mm高く23mm後退した。シート高は前作から15mm低い920mmになっている(日本仕様では900mm以下になるはず)。
DR-Z4SMのライディングポジションはグリップ位置が前作と同じ高さで20mm前方へ、ステップは同じ高さで18mm後退、シート高は前作と同じ890mmとなている。
LCDメーターと超小型LEDヘッドライトを採用
軽量コンパクトなLCD(モノクロ液晶)メーターを両車共通で採用し、スピード、オド、デュアルトリップ、ギヤポジション、電圧、ADMSモード、トラコンのモード、平均/瞬間燃費、時計、燃料残量を表示。左右の各種インジケーターはバックライトにLEDを用いている。
灯火類はフルLEDで、ヘッドライトはバイファンクション式のモノアイ。細身のLEDウインカーはポジションライトを兼ねる(北米仕様を除く)。テールランプもコンパクトなLEDだ。
左右ハンドルスイッチは各種モード操作にも使用するが、可能な限りシンプル化されている。
このほか、外装デザインはエッジの利いた最新トレンドに沿ったものとされ、機能部品が目に見えることと優れたエルゴノミクスを両立。カラーリングはDR-Z4S・DR-Z4SMそれぞれに2色が用意される。
SUZUKI DR-Z4S / DR-Z4SM[2025 model]
DR-Z4S
SUZUKI DR-Z4S[2025 model]Champion Yellow No. 2 / Solid Special White No. 2
SUZUKI DR-Z4S[2025 model]Solid Iron Gray (YUD)
DR-Z4SM
SUZUKI DR-Z4SM[2025 model]Sky Gray (Q1T)
SUZUKI DR-Z4SM[2025 model]Solid Special White No. 2 (30H)
| 車名 | DR-Z4S | DR-Z4SM |
| 全長×全幅×全高 | 2270×885×1235mm | 2195×885×1190mm |
| 軸距 | 1495mm | 1465mm |
| 最低地上高 | 300mm | 260mm |
| シート高 | 920mm | 890mm |
| キャスター/トレール | 27.5°/109mm | 26.5°/95mm |
| 装備重量 | 151kg | 154kg |
| エンジン型式 | 水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ | ← |
| 総排気量 | 398cc | ← |
| 内径×行程 | 90.0×62.6mm | ← |
| 圧縮比 | 11.1:1 | ← |
| 最高出力 | 38ps/8000rpm | ← |
| 最大トルク | 3.77kg-m/6500rpm | ← |
| 始動方式 | セルフスターター | ← |
| 変速機 | 常時噛合式5段リターン | ← |
| 燃料タンク容量 | 8.7L | ← |
| WMTCモード燃費 | 28.4km/L | 29.4km/L |
| タイヤサイズ前 | 80/90-21 | 120/70R17 |
| タイヤサイズ後 | 120/80-18 | 140/70R17 |
| ブレーキ前 | ディスク | ← |
| ブレーキ後 | ディスク | ← |
| 価格 | 未発表 | ← |
| 色 | 黄×白、灰 | 青、白 |
| 発売日 | 2025年4月以降 | 2025年5月以降 |
DR-Z4S ギャラリー
SUZUKI DR-Z4S[2025 model]
SUZUKI DR-Z4S[2025 model]
SUZUKI DR-Z4S[2025 model]
SUZUKI DR-Z4S[2025 model]
SUZUKI DR-Z4S[2025 model]
SUZUKI DR-Z4S[2025 model]
DR-Z4SM ギャラリー
SUZUKI DR-Z4SM[2025 model]
SUZUKI DR-Z4SM[2025 model]
SUZUKI DR-Z4SM[2025 model]
SUZUKI DR-Z4SM[2025 model]
SUZUKI DR-Z4SM[2025 model]
SUZUKI DR-Z4SM[2025 model]
SUZUKI DR-Z4SM[2025 model]
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(スズキ [SUZUKI])
新型モデルの実際の使い心地をチェックできる 2025年11月5日、スズキより、新型「DR-Z4S」および「DR-Z4SM」を「スズキワールドバイクレンタル」のラインナップに追加したとの発表があった。こ[…]
走るワクワクを現代・そして未来に…EVであの“VanVan”が復活!! 10月30日(木)から11月9日(日)まで東京ビッグサイトにて開催されていた「ジャパンモビリティショー2025」。スズキのブース[…]
生活に根ざしたモビリティを模索する スズキがジャパンモビリティショー2023(JMS2023)で提案した「SUZU-RIDE(スズライド)」は、特定原付区分ながら、広く普及している電動キックボードとは[…]
手軽な快速ファイター 1989年以降、400ccを中心にネイキッドブームが到来。250でもレプリカの直4エンジンを活用した数々のモデルが生み出された。中低速寄りに調教した心臓を専用フレームに積み、扱い[…]
11/1発売:カワサキ カワサキ ニンジャH2 SX SE カワサキの最高峰スポーツツアラー「ニンジャH2 SX SE」の2026年モデルが、11月1日に発売された。スーパーチャージャー搭載のバランス[…]
最新の関連記事(スズキ [SUZUKI] | 新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
10/1発売:カワサキ「Ninja ZX-25R SE/RR」 250ccクラスで孤高の存在感を放つ4気筒モデル、「Ninja ZX-25R」の2026年モデルが早くも登場する。今回のモデルチェンジで[…]
400ccのDR-Zが帰ってきた! モトクロス競技の主導権を4ストロークが握り始めて間もない2000年、公道市販車として産声を上げたのは水冷398cc単気筒を搭載するハイスペックなデュアルパーパスモデ[…]
9/10発売:スズキ アドレス125 まずはスズキから、原付二種スクーターの定番「アドレス125」がフルモデルチェンジして登場だ。フレームを新設計して剛性を高めつつ軽量化を実現し、エンジンもカムシャフ[…]
日本でも正式発表が待たれる400ccオフロード/スーパーモト スズキは、昨秋のEICMA(ミラノショー)にて、新型400ccデュアルパーパスモデル「DR-Z4S」およびスーパーモトモデル「DR-Z4S[…]
正式発表が待たれる400ccオフロード/スーパーモト スズキは、昨秋のEICMA(ミラノショー)にて、新型400ccデュアルパーパスモデル「DR-Z4S」およびスーパーモトモデル「DR-Z4SM」を発[…]
人気記事ランキング(全体)
未塗装樹脂の白ボケ原因とツヤを復活させる方法 黒かったものが白っぽくなってくると古臭く見えてしまいます。…いいえ、「白髪」ではなくて「黒樹脂(未塗装樹脂)パーツ」のオハナシです。 新車の頃は真っ黒だっ[…]
深いグリーンにヤマハ1980年代イメージのストライプ入り ヤマハはインドで、日本でいう軽二輪クラス(126~250cc)にあたるネオクラシックネイキッド「XSR155」を同地域に初めて導入すると発表し[…]
着る季節を選ばない設計と、高速走行を意識したディテール 春から冬まで対応できる点が、このモデルの大きな魅力だ。表地には防風性とストレッチ性を備えたソフトシェル素材を使用しており、ライディング時の冷たい[…]
アプリリアの伝統を受け継ぐ、全ルート走破型スクーター SR GT 400は、ミドルクラスながらマルチパーパスを意識したアドベンチャースクーターだ。街中での俊敏なレスポンスはもちろん、林道ツーリングでも[…]
プロテクター標準装備の冬用ライディングジャケット 一見するとカジュアルなパーカスタイルだが、中身は本格的なウインタージャケットである。本商品は、胸/肩/ひじ/背中の4部位にプロテクターを標準装備してお[…]
最新の投稿記事(全体)
「B+COM SX1」の音質を向上! サイン・ハウスから、SHOEI製ヘルメット専用ビルトインインカム「B+COM SX1」ユーザー待望のサウンドアクセサリー「B+COM SOUND PADS(ビーコ[…]
clo値0.92を達成!コートを超える保温力だ イオンスポーツが2025年11月10日(月)に発売したリニューアル版機能性インナー「着た瞬間から暖かい。速暖。ヒートラブ」は、冬のライディングで直面する[…]
異常気象に対応したウェアを考えるワークマン 「夏が長く、秋が短い、すぐに冬が来る」という極端な環境変化が当たり前となってきた近年。気象庁の観測データ(東京)を見ても、最高気温25℃以上の『夏日』の最終[…]
片山財務大臣が走行距離課税は検討していないと明言! この発言の持つ意味はとても大きい 11月12日の参議院・予算委員会で、国民民主党の榛葉幹事長の「走行距離課税はやりませんよね」という質問に対し、片山[…]
冬のツーリングは、寒さによる体温低下で想像以上に体力を奪う。特に脚まわりは走行風を直接受けるため、冷えが蓄積しやすい。 本商品は、風の侵入を防ぐ防風生地を採用。パンツの隙間から入り込む冷気をしっかりと[…]
- 1
- 2




























































































