
BMWモトラッドは2024年10月30日、並列4気筒エンジンを搭載するスーパースポーツモデル『S1000RR』と『M1000RR』をアップデートし、2025年モデルとして発表した。国内導入時期や車両価格は未定だ。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●写真/外部リンク:BMW Motorrad
スポーツ性能を高めたBMWフラッグシップスポーツ
BMW S1000RRのおもなスペックとアップデート
【BMW Motorrad S1000RR】主要諸元■全長2073 全幅848 全高─ 軸距1456 シート高832(各mm) 車重198kg■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 999cc 210ps/13750rpm 11.5kg-m/11000rpm 変速機6段 燃料タンク容量16.5L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ●色:黒、銀、白●価格:未定 ●国内発売日:未定 ※主要諸元は欧州仕様
S1000RRは並列4気筒エンジンを搭載するスーパースポーツで、BMWがWSBK参戦を視野に入れて開発して2009年に発表、翌年に市販された。以降、アップデートを重ねて2019年のフルモデルチェンジで現行となり、このたび発表された2025年式で熟成度を高めた。おもなアップデート内容は下記のとおりだ。
- ユーロ5+に対応
- プロライディングモードを標準装備
- Mショートストロークスロットル採用
- ウイングレット改良
- サイドフェアリング改良
- フロントフェンダー改良
ユーロ5+は新たに導入される排ガス基準で、ヨーロッパでは2025年1月から販売される新車に適用される。排出ガスの規制値に変更はないが、キャタライザー(触媒)が走行距離や経年による劣化を監視する機能が必須となる。
これに伴い、キャタライザーの耐久テストのほか、ODB(車両故障診断装置)とラムダセンサー(O2センサー:理論空燃比が1(λ=ラムダ)になるよう、排ガス中の酸素濃度を検知する装置)がこれに対応する必要がある。なお、ユーロ5+対応による最高出力、最大トルクの数値に変更はない。
プロライディングモードは、日本仕様はすでに標準装備だが、欧州仕様ではこれまでオプションだった。この機能はロード、レイン、ダイナミック、レースのほかにサーキット用トルク特性とスロットルレスポンス、エンジンブレーキ、ABS、トラクションコントロールなどの電子制御デバイス群を個別に微調整することを可能としている。また、3種のプリセットを登録することができる。
Mショートストロークスロットルは、新型M1000RRにも採用されたもので、スロットルの全閉から全開までの角度が従来の72度から58度へ変更し、加速時の手首の動きを最小限に抑えることができるようになった。いわゆるハイスロ化だ。これによって、全開にするためにスロットルを持ち替えたり、手首を大きくひねる必要がなくなる。
改良されたウイングレットにより、300km/hでのダウンフォースは従来の17.1kgから23.1kgへ増加した。直進時だけでなくコーナリングにおける前輪の安定性が増し、コーナリング速度向上に貢献する。同時にウィリー抑制効果も高まっている。
サイドフェアリングの形状も改良され、エンジンの放熱効果を高めている。右側サイドフェアリングは初期型で採用されていた、サメのえらをモチーフとするシャークフェアリングとなった。
さらに、フロントフェンダーは大型化され、ブレーキキャリパー冷却ダクトを備えた。これによって高速域からの制動で発生するブレーキの熱を効率的に冷やすことができ、安定した制動性とコントロール性をもたらす。これら外装パーツの新たなデザインは、走行性能向上だけでなく、S1000RRのレーシングムードを高めるアイコンにもなっている。
車体色は、ベースモデルとしてブラックストームメタリック(黒)、スポーツモデルとしてブルーストーンメタリック(銀)、Mパッケージ用となるライトホワイトユニ×Mモータースポーツ(白)が用意される。
ライトホワイトユニ×Mモータースポーツ(白)
BMW M1000RRのおもなスペックとアップデート
【BMW Motorrad M1000RR】主要諸元■全長2085 全幅899 全高─ 軸距1458 シート高865(各mm) 車重194kg■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 999cc 218ps/14500rpm 11.5kg-m/11000rpm 変速機6段 燃料タンク容量16.5L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=200/55ZR17 ●色:白、黒 ●価格:未定 ●国内発売日:未定 ※主要諸元は欧州仕様
M1000RRは2021年に登場したモデルで、S1000RRの走行性能をさらに高めた上位グレードだ。Mというモデル名は、BMWの四輪で長年にわたって活躍してきたレーシングチューナーに由来する。
BMWモータースポーツ社は1972年に設立され、BMWのレースと直結した組織として、F1を頂点とするレースマシンの研究開発と生産を担ってきた。四輪では1979年にMとして初の市販車『M1』を発売して以降、BMWのスポーツカーにはMの称号が与えられている。そして2018年には、S1000RRに『Mパッケージ』として高性能パーツを装備した特別仕様車としてBMW Mが開発に携わるようになった。
M1000RRは、2019年よりWSBKにワークスとして復帰したBMWのホモロゲーションモデルで、2024年はトプラクラズガットリオグル選手をシリーズチャンピオンに押し上げたマシンでもある。そのような背景を持つM1000RRの2025年式のアップデート内容は、S1000RRよりも多岐にわたり、スポーツ走行性能を高めている。
- エンジン出力向上と排ガス規制適応
- エンジン内部パーツの改良
- エンジンマウントの改良
- Mショートストロークスロットル採用
- ABSとトラクションコントロールの改良
- フェアリングとウイングレットの改良
999cc並列4気筒エンジンは、ユーロ5+に対応するとともに、最高出力を従来型より5.4ps(4kW)アップとなる217.5psまで向上している。発生回転数14500rpm、最高回転数15100rpmは従来型と同じだ。
最高出力アップを果たした改良点は、新設計となったピストン、フルシャフトチタンバルブ、吸気/排気ポート形状、燃焼室形状、圧縮比変更(13.5:1から14.5:1)エアボックス形状、48mmから52mmに大型化されたスロットルバルブなどだ。
吸排気効率を高めるため、バルブガイドの高さがポート面と同一となるよう短縮し、さらにシート角度を45度から40度へ変更。また、吸気ポートのバルブディスクにエッジを設けて逆流を防止した。チタン製の排気システムは、新設計で大径化した楕円形の排気ポートに最適化され、周辺パーツも新設計となっている。ならびに、プレサイレンサー内部のエキゾーストパイプの取り回しも改良された。
フレックスフレームと名付けられているアルミ製ブリッジ式フレームは、ステアリングヘッド部の剛性を最適化。さらにエンジン左側の上部マウントポイントを、従来のシリンダーヘッドからエンジンハウジングへ移設された。これにより剛性バランスを向上し、走行性能を熟成させている。
Mショートストロークスロットルは、S1000RRの項で解説したとおりのハイスロ化で、とくにサーキット走行において威力を発揮する。
電子制御デバイスの改良では、とくにトラクションコントロール(DTC)が大幅なアップデートを受けた。DTCはスリップコントロールとスライドコントールに分割され、それぞれの機能を統合するものとなった。
スリップコントロールの拡張機能であるスライドコントロールは、ステアリングアングルセンサーを中心とし、さらにホイールスピードセンサーなどの数値を計算してリヤタイヤのスリップアングル(ドリフトアングル)を決定する。これによりコーナー立ち上がりでのリヤタイヤの駆動力を最大限に引き出すことができ、ラップタイム短縮に貢献する。
ステアリングアングルセンサーはABSも進化させ、リヤタイヤをスライドさせながらコーナーへ進入するブレーキングドリフトを容易にする『ブレーキスライドアシスト』を新たに装備した。
また、ABSの設定モードに『スリック』が追加され、スリックタイヤ装着時に最適な制御を行えるようになった。DTCにおいてもスリックタイヤへの最適化は行われており、サーキット走行におけるアドバンテージを大きく広げた。
フェアリングも改良され、とくにウイングレットは第3世代となる『Mウイングレット3.0』となってダウンフォースを大幅に向上させた。ウイングレットはカーボン製で、ライディングポジションが直立でも前傾でも大きなダウンフォースを発生。300km/h走行時でのダウンフォースは従来型の22.6kgから30kgへ増加している。
これにより直進時だけでなくコーナリング時のフロントタイヤの接地力が高まり、加速時のフロントアップ抑制効果も向上している。また、樹脂製のフロントフェアリングとスクリーンの形状も改良され、空力特性をさらに高めた。なお、ブレーキ冷却ダクトを含むフロントフェンダーなどは樹脂が採用される。
車体色はライトホワイトユニ(白)をスタンダードとし、Mコンペティションとしてブラックストームメタリック(黒)の2色展開となる。
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