
「半ヘル」とは「ハーフヘルメット/半キャップ」などとも呼ばれるとおり、頭部の上半分のみが覆われるヘルメットのこと。帽体が軽く、視界の妨げにもなりにくいうえ安価というメリットがありますが、安全性は他の種類のヘルメットに比べて低いとされています。さらに半ヘルは126cc以上のバイクでの使用はNGという話も。実際のところ、そのような制限はあるのでしょうか?
●文:ピーコックブルー(ヤングマシン編集部)
半ヘルで普通自動二輪車を運転すると交通違反?
「126cc以上のバイクを半ヘルで運転するのは違反」という話をよく耳にしますが、じつを言えばそれは正しくありません。乗車用ヘルメットについて記載された道路交通法施行規則 第9条の5には、ヘルメットに関する排気量の規定はなく、以下の要件が記されているのみ。
- 左右、上下の視野が十分とれること
- 風圧によりひさしが垂れて視野を妨げることのない構造であること
- 著しく聴力を損ねない構造であること
- 衝撃吸収性があり、かつ帽体が耐貫通性を有すること
- 衝撃により容易に脱げないように固定できるアゴ紐を有すること
- 重量が2kg以下であること
- 人体を傷つける恐れがある構造でないこと
つまり排気量が何ccのバイクであっても、半ヘルを被って運転したことで交通違反に問われることはありません。
違反ではないとはいえ、安全性は高くない…
とはいえ、半ヘルでの運転に法的問題はないものの、126cc以上のバイクで使用するとなると多くのデメリットがあります。
たとえば、半ヘルでは事故の際に顔/顎/側頭部下側が保護されません。またヘルメット自体の強度やフィッティングも良いとは言えないため、高速走行時の事故では重篤なケガを被る恐れがあります。
さらに、事故ほどの被害でなくとも、シールドがない/狭い半ヘルの場合、飛び石や飛来する昆虫などで負傷する可能性もゼロではありません。
また、半ヘルは開放感が高いぶん露出する部分も多いため、防風性/防寒性にも劣ります。とくに寒い時期や高速走行時は、シールド/ゴーグルなどを使用しても苦痛に感じることでしょう。
また、アゴ紐をしっかり締めなければ、高速走行時に風圧でヘルメットがズレて視界不良に陥る恐れもあります。
ちなみに、ヘルメットにはSG/PSC/JISなどで安全規格が定められており、半ヘルは「125cc以下用」と定められている場合がほとんど。「125cc以下用」と定められた半ヘルを126cc以上のバイクで使用した場合、製品の欠陥による賠償制度が備わるSGマークがついた半ヘルであっても、賠償の対象外となります。
「大型バイクや126cc以上のバイクを半ヘルで運転すると捕まる」という話は、おそらくこの記載が拡大解釈されて広まったものと推測されます。
自分のアタマは自分で守りたい
警視庁のバイク事故調査では、直近の過去5年間でもっとも致死率が高かった部位は頭部の割合が49.7%ともっとも高く、次いで25.7%の胸部となっています。
大排気量バイクで半ヘルを着用しても、交通違反で警察に捕まることはありません。しかし、絶対的な強度や頭部の保護性能には劣るため、安全のためには排気量を問わず可能なかぎり半ヘルの使用は避けたいところです。
また、125cc以下と記載された半ヘルとはいえ、125cc以下の原付二種までなら絶対に安全というわけではありません。速度が30km/h以上になると、交通事故致死率は30km/h以下の約3倍に跳ね上がるというデータもあります。
実際のところ、半ヘルが使えるのは制限速度が30km/h以下に規制された原付一種(排気量50cc以下)までと思われます。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(交通/社会問題)
規制の根拠は「道路法・第46条第3項」 高速道路などを走っていると、時折インターチェンジの手前などで「危険物積載車両ここで出よ」という表示を目にすることがある。この表示を見かけた場合、その先に危険物積[…]
地域活性化ツーリングを開催、移動課題改善への提言も 2024年9月29日に開催された地域活性化・ライダー誘致イベント“伊豆ライダー誘致ツーリング”。 主催は若年層を中心に構成。バイクやクルマ、特定原付[…]
バイク駐車場の拡充に取り組む千葉市 千葉市内には6区で50の鉄道駅がある。中でも千葉駅は千葉県の中心駅として、JR東日本の在来線6線と京成電鉄、さらに千葉都市モノレールが乗り入れている。 都心や成田空[…]
「危険なら道路を改善しないの?」との疑問を感じるが…… 市中の道路を走っていると「事故多発交差点」と書いた立て看板を見かけることがあります。 その交差点で交通事故が多発しているので気を付けて運転してほ[…]
情熱は昔も今も変わらず 「土日ともなると、ヘルメットとその周辺パーツだけで1日の売り上げが200万円、それに加えて革ツナギやグローブ、ブーツなどの用品関係だけで1日に500万円とか600万円とかの売り[…]
最新の関連記事(ヘルメット)
アウトローなムードが人気を呼んだフルフェイスがついに復活! 6月3日付けでお伝えしたSHOEIの新製品『WYVERN(ワイバーン)』の詳細と発売日が正式に発表された。 1997年に登場したワイバーンは[…]
東洋の文化を西洋風にアレンジした“オリガミ”のグラフィック第2弾登場 このたびZ-8に加わるグラフィックモデル『ORIGAMI 2』は、2023年1月に発売された『ORIGAMI』の第2世代だ。前作同[…]
機能豊富なマルチパーパスフルフェイスのシールドを外した、さらに身軽なフォルム 『TOUR-CROSS V』は、アライヘルメットが’23年6月に発売したマルチパーパスヘルメットだ。高速走行時の空気抵抗を[…]
ライダーが抱く「ヘルメットの悩み」を解消するために誕生 デルタから発売される高機能ヘルメットスタンドは、多くのライダーから寄せられた「こんな製品があったらいいな」を形にした、実用性とデザイン性を兼ね備[…]
【受注期間限定】SHOEI「EX-ZERO」新色モスグリーン 「EX-ZERO」は、クラシカルな帽体デザインにインナーバイザーを装備し利便性に優れる一方で、着脱式内装システムや、万一の際にヘルメットを[…]
人気記事ランキング(全体)
エンジン積み替えで規制対応!? なら水冷縦型しかないっ! 2023年末にタイで、続く年明け以降にはベトナムやフィリピンでも発表された、ヤマハの新型モデル「PG-1」。日本にも一部で並行輸入されたりした[…]
7月上旬発売:ヒョースン「GV125Xロードスター」 ヒョースンモーター・ジャパンから、原付二種クラスに新型クルーザー「GV125Xロードスター」が投入される。発売は2025年7月上旬から日本国内向け[…]
青春名車録「元祖中型限定」(昭和51年) CB400FOUR(CB400フォア)は、CB350フォアをベースとしたリニューアルバージョンとして1974年12月(昭和49年)に発売。クラス唯一のSOHC[…]
高評価の2気筒エンジンや電子制御はそのままにスタイリングを大胆チェンジ! スズキは、新世代ネオクラシックモデル「GSX-8T」および「GSX-8TT」を発表。2025年夏頃より、欧州、北米を中心に世界[…]
カバーじゃない! 鉄製12Lタンクを搭載 おぉっ! モンキー125をベースにした「ゴリラ125」って多くのユーザーが欲しがってたヤツじゃん! タイの特派員より送られてきた画像には、まごうことなきゴリラ[…]
最新の投稿記事(全体)
2022年モデル概要:赤フレームに白ボディが新鮮! 並列4気筒エンジンを搭載し、アグレッシブな「Sugomi」デザインと「エキサイティング&イージー」な走りがウリのZ900。KTRC(カワサキトラクシ[…]
当時を思わせながらも高次元のチューニング ◆TESTER/丸山 浩:ご存知ヤングマシンのメインテスター。ヨシムラの技術力がフルに注がれた空冷4発の完成度にホレボレ。「この味、若い子にも経験してほしい![…]
メッキのプロが開発したクロームメッキ専用品!! 鉄素材のさまざまな表面処理の中で光沢や質感、高級感のいずれにおいても秀でているのがクロームメッキだ。しかしながら近年では、メッキ工程で使用される六価クロ[…]
7月上旬発売:ヒョースン「GV125Xロードスター」 ヒョースンモーター・ジャパンから、原付二種クラスに新型クルーザー「GV125Xロードスター」が投入される。発売は2025年7月上旬から日本国内向け[…]
青春名車録「元祖中型限定」(昭和51年) CB400FOUR(CB400フォア)は、CB350フォアをベースとしたリニューアルバージョンとして1974年12月(昭和49年)に発売。クラス唯一のSOHC[…]