
ヤマハ入魂のミドルスーパースポーツ、YZF-R9。その実車が’24 10/26、全日本ロードレースの最終戦が開催された鈴鹿サーキットで日本初公開された。当日は3色が展示され、これが日本にも導入されるとみて間違いない。その他の細かな情報に加え、ライディングポジションの印象もレポートするぞ!
●文:ヤングマシン編集部(マツ) ●写真:箱崎太輔/ヤマハ
日本仕様は3色確定。150万切りで来春発売か
当日は鈴鹿サーキットのGPパドックに展開されたヤマハブースにて、3色のR9がアンベールされた。除幕を行ったのは、開発プロジェクトリーダーの津谷晃司さんと商品企画担当の兎田潤一さんで、欧州で展開される2色(青、黒)に加え、北米専用と思われていた白/赤を加えた3色のR9が壇上に並んだ。関係者からの情報も含め、この3色が日本に導入されるのは間違いない。
気になるのは国内導入時期や価格。メーカーの公式発表は来年の春だが、兎田さんからは「桜とともに…」との発言があり、3月末から4月頭と予想される。価格については津谷さんから「アフォーダブル(お手頃)は、R9の意識したところ。海外では価格も発表済みだが、国内もそれを裏切らない値段で出す」と言及アリ。北米でのR9はMT-09 SP(国内では144万1000円)とほぼ同額だから、150万円を切る価格が期待できそうだ。
やっぱり注目のウイングレット
筆者が生で見たR9の印象は、角度によってはウイングがかなり主張するが、それが違和感なくボディと一体化しており、次世代YZF-R系のデザインフィロソフィーを感じさせるもの。
後付けではない、カウルと一体化したウイングレットはR9の特徴。やや俯瞰で眺めるとウイングの面積はかなり広い。白✕赤カラーはウイング下のダクトや、ヘッドライトのカバーに差し色的にレッドが入る。
このデザインにおける特筆点は、“YZF-Rシリーズ史上最良”という空力性能。具体的にはCDAと呼ばれる、空気抵抗係数✕前面投影面積の削減に力が注がれている。流体解析や風洞実験は数えられないほど繰り返したそうで、結果的にライダーのプロテクション性能を無視せず、空気抵抗になるウイングレットを装備してすら、空力性能はR1やR6を上回るというから驚かされる。
ちなみにこのウイングレットだが、ダウンフォースは羽の上側を流れる空気と、下側を流れる空気の流速差で生じるため、車体前方から速い空気を取り入れて羽の下側にあるダクトに流し、羽の下部の流速をできるだけ高める思想で設計されている。開発当初から、ウイングレット前提でデザインされたからこそで、2025モデルのYZF-R1と形状がかなり異なるのはそのためだ。
ラジエターの熱を抜く役割をウイング下のダクト(とカウル下部の開口部)に担わせることで、サイドカウル中央はフラットな形状となっており、熱抜きのダクトが存在しない(熱量の大きな大排気量車では珍しい)。これも空力性能向上のためで、熱風がライダーを直撃しないため夏場の快適性も向上している。
上級版「SP」や「M」は現状予定ナシか
続いては小ネタをいくつかお届け。
上級バージョンはある?
散々“YZF-R9M”や“YZF-R9 SP”やらのCGで煽ってきたヤングマシンの責任? として聞き回ったところ、上級バージョンの企画は現時点では存在しないようだ。少なくとも数年間は登場しないと考えてもいいだろう。R9が気になっている方々は安心して注文してほしい!
OEMタイヤの銘柄は?
日本仕様R9のOEMタイヤはBSのRS11だが、180/55サイズは今までラインナップに存在しなかったため、R9用に新開発されている。このR9用をベースに、一般市販品のRS11も180/55サイズをラインナップに加える予定だ(すでにBSのWEBサイトには掲載済み)。
YZF−R9 Y-AMTはある?
津谷さん/兎田さんに質問してみたが「どうでしょうね〜(笑)」と煙に巻かれてオシマイ(そりゃそうか)。新作のR9専用フレームはエンジン上でかなり湾曲し、内側に追い込まれているが、Y-AMTのサーボモーター類はなんとか収まりそうに見える。いずれにせよ、すぐには登場しない?
R9(左)のメインフレームは大きく車体内側へ湾曲するが、クラッチ上にはややスペースがあり、Y-AMTの補機類は避けられそう?! 右写真はMT-09 Y-AMTだが…さてどうなる?
車名はYZF-R9?それともR9?
ヤマハの欧州サイトなどでは、YZFの付かない「R9」と車名表記されていることが多い。これを兎田さんにぶつけてみたところ「ヤマハとしての車名はどの国でも”YZF-R9”。欧州でYZFを付けていないのは、ニックネームみたいなもの」とのこと。ちゃんとYZFも付けて呼ぼう!
さらに、ガチなSSファンとしてはエンジンがMT-09と共通なこと(セッティングは異なるが)やラムエアが装備されないこと、そしてコアなヤマハファンなら気づいているであろう「なんでスピンフォージドホイールじゃないの?」などなど、R9にはさまざまな疑問があるハズ。
もちろん分かってますって…というわけで、津谷さんと兎田さんには、じっくり1時間半のインタビューを敢行済み。詳細は、’24 11/22発売のヤングマシン1月号でお届けするのでお楽しみに!
ライディングポジション印象
全体的にはスーパースポーツらしいポジションで、上体は前傾して腰高感もあるが、“うわ〜これはキツイ!”という印象はさほど強くない。YZF-R7やR1よりライダーに近い(=着座位置が前)という、ハンドル位置の効果だろうか。ステップ位置も極端にバックはしておらず、“ライディングポジションを少しだけ快適方向にカスタムしたスーパースポーツ”といった印象だ。
足着き性はスーパースポーツだけにベタ着きとはいかないが、足の母指球が接地するため車体を支えるのに、不都合はない。スクリーンやカウルはそれなりに存在感があり、開発陣の言葉通り、ウインドプロテクションなど快適性も考慮されているようだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA])
現代の耐久レーサーはヘッドライト付きのスーパーバイクだが…… 近年の耐久レーサーは、パッと見ではスプリント用のスーパーバイクレーサーと同様である。もちろん細部に目を凝らせば、耐久ならではの機構が随処に[…]
高回転&高出力主義の権化 250クラスでも高性能な直4を望む声が高まっていた’80年代前半、スズキが世界初の250cc水冷直4エンジンを搭載した量産車、GS250FWを投入。以降、ヤマハ、ホンダが追随[…]
2024年モデル概要:XSRらしさを受け継いだ末弟 海外で先行して展開されていたXSR125の国内導入が明かされたのは、2023年春のモーターサイクルショーでのこと。発売は同年の12月8日だった。 X[…]
似ているようでカブとはまったく違うのだ アウトドアテイストの強いCT125ハンターカブが人気だからといって、ここまでキャラクターを寄せてくることないんじゃない? なんて穿った見方で今回の主役であるPG[…]
幻のヤマハロータリー〈RZ201〉 1972年東京モーターショウの最大の話題は彗星のように登場したこのローターリー車だ。水冷・横置きツインローターを搭載、また前輪とともに後輪にもディスクブレーキを採用[…]
人気記事ランキング(全体)
最新モデルはペルチェデバイスが3個から5個へ 電極の入れ替えによって冷却と温熱の両機能を有するペルチェ素子。これを利用した冷暖房アイテムが人気を博している。ワークマンは2023年に初代となる「ウィンド[…]
アウトローなムードが人気を呼んだフルフェイスがついに復活! 6月3日付けでお伝えしたSHOEIの新製品『WYVERN(ワイバーン)』の詳細と発売日が正式に発表された。 1997年に登場したワイバーンは[…]
バイクツーリングにおすすめの都道府県ティア表 バイクツーリングの魅力は、ただ目的地に行くだけでなく、そこへ至る道中のすべてを楽しめる点にある。雄大な自然が織りなす絶景、心地よいカーブが続くワインディン[…]
水冷Vツイン・ベルトドライブの385ccクルーザー! 自社製エンジンを製造し、ベネリなどのブランドを傘下に収める中国のバイクメーカー・QJMOTOR。その輸入元であるQJMOTORジャパンが、新種のオ[…]
東洋の文化を西洋風にアレンジした“オリガミ”のグラフィック第2弾登場 このたびZ-8に加わるグラフィックモデル『ORIGAMI 2』は、2023年1月に発売された『ORIGAMI』の第2世代だ。前作同[…]
最新の投稿記事(全体)
STIチームのウェアを身にまとった、かわいいぬいぐるみ ご存知とは思いますが、STIはモータースポーツへの参戦や技術支援、車両開発などを行っているスバルのグループ企業です。 その技術を活かし、市販車用[…]
N360の輸出用モデルが「N600」 そもそも、ホンダN600は国内で大ヒットとなったN360の輸出用モデル。当時、安価なわりに痛快なパフォーマンスでエヌッコロ、Nコロなどとニックネームを付けられ、若[…]
真夏の激闘を前に意気込みを聞く! ヨシムラの『ツーリングブレイクタイム』はその名のとおり、ツーリング中の立ち寄りスポットとしてヨシムラジャパンが主催しているイベント。2009年の初開催以来、すでに60[…]
「サスペンション」と聞くと、レースシーンで活躍する”走りに特化したパーツ”というイメージを持たれるかもしれません。 確かに、レースの世界においてはサスペンションのセッティングがタイムに大きく影響するた[…]
「いくっしょ、モビショー! 」を合言葉に、未来へのワクワクを体験 ジャパンモビリティショー2025で掲げられているのは、「ワクワクする未来を、探しに行こう! 」というコンセプト。「みんなが[…]
- 1
- 2