
スズキの「e-PO(イーポ)」と思われる車両に関する特許が公開された。出願は2023年2月となっており、2023年秋のジャパンモビリティショーでの参考出品車には装備されていなかった仕様が検討されていることがわかる。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
堂々と公道を走れる原付一種の折り畳み電動モペッド、発売早よ!
スズキがジャパンモビリティショー2023で初公開した原動機付自転車の「e-PO」は、同時発表の「eチョイノリ(e-choinori)」や新原付カテゴリーのスズカーゴ、スズライドらとともに大きな注目を集めた。今夏の鈴鹿8耐ではチームスズキCNチャレンジのピットにブルーのe-POが並べられていたことも記憶に新しい。
「e-PO」はスズキとパナソニックサイクルテックの共同開発で、市販されている電動アシスト自転車び「OFF TIME」をベースにしていると思われる。他の出展車両とともに参考出品車という扱いではあったが、実現性の高そうなコンセプトであり、2024年6月には原付一種登録してナンバーを取得した車両によって公道走行調査が行われ、『市販近し』との印象を与えている。
ちなみに電動モペッドを取り巻く状況としては、警察が2024年4月より違法な電動モペッド(出力が大きすぎる電動アシスト自転車を含む)の取り締まりを強化していると言われ、一般メディアでも実際の公道でも、そうした違法走行モデルに厳しい視線が注がれている。
そんな中、バイクと自転車のノウハウを持つ国産メーカーが共同開発する「e-PO」は、多くの原付ユーザーが安心して手にすることができる1台として期待を集めそうだ。
バッテリーが切れたら乗れないという問題を解決!
そしてこのたび、スズキが電動の原動機付自転車に関する特許を出願していたことが明らかになった。出願は2023年2月3日で、公開は2024年8月16日。この車両の図版が、簡略化されているもののe-POに似ているように思われるのだ。
この特許は、使用形態を変える際にナンバープレートを非表示にすることができるというもの。具体的には、電動モードあるいは電動アシストモードを用いた動力走行と、人力のみによる走行を分けるものだ。
じつはここに問題がある。動力走行を前提とした原動機付自転車に区分されていると、たとえ人力のみで走行する場合でもウインカーを含む灯火類の作動などが義務付けられている。つまり、バッテリー残量が0%になると公道を走行できなくなってしまうのだ。
つまり、構造的には人力走行が可能でも、車両区分によるルール上は保安部品が作動する状態でないと公道を走れない。
これを解決するために、グラフィットなどのEV専業メーカーは車両区分を変化させることができるモビリティとして「原動機付自転車として適法に走行させることができない構造」を持たせるというアイデアを実現した。
これはナンバーを何らかの方法で見えないように畳むか隠すかして、外観から人力モードで走っていることがわかるようにすることで、車両区分を変更してしまうというもの。グラフィットでは「モビリティ・カテゴリー・チェンジャー(略称:モビチェン)」と名付けている。
これと同様のアイデアを、スズキが自社製のe-PO(と思われる車両)に向けて具現化しようというのが、今回の特許の要点だ。
車両のメインキー等を用いてナンバープレートホルダーのロックを解除、ホルダーを折りたたんで普通の自転車の見た目にすることで車両区分も軽車両になり、自転車のルールで走ることができるようになる。
特許図版にあるいずれの方法でもナンバープレートは畳んだままロックできる模様。これなら、出先でバッテリーを使い切ってしまっても安心して自転車として運用できる。
e-POは年内にも正式発表が予想されているが、この特許のような機構が搭載されるかは未知数。しかし、利便性を考えれば多少のコストが上乗せされたとしても採用してくれるならありがたい。どうでしょうか、スズキさん!?
特許図版はe-POに酷似?!
かなり簡略化されているが、バッテリー搭載位置や小径ホイールからe-POへの搭載を検討していると思われる。
横から見た図だ。
横から見た図。
e-POは小さな保安部品や前18/後20インチタイヤを装備
ベースモデルと思われるパナソニックサイクルテックの「OFF TIME」。バッテリー容量8.0Ahで走行距離30~53km(モードによる)を実現し、価格は15万8000円。
折り畳み電動モペッドのe-POは、パナソニックサイクルテックの「オフタイム(OFF TIME)」という電動アシスト自転車がベースと思われ、これに前後ディスクブレーキやフェンダー、デジタルメーターなどを増設している。
走行モードは3種類。原付一種並みの動力性能を発揮するフル電動モード、電動アシスト自転車のような“24km/hまでしかアシストできない”といったルールから解き放たれたアシストモード、そして保安部品の電源をONにしながら人力のみで走るペダル走行モードがある。
元々は自転車に小さなエンジンを搭載したことからはじまった“原動機付自転車”のカテゴリーだが、このe-POはある意味で原点回帰したものと言えるのかもしれない。
e-PO のスペックとスタイリング&ディテール解説
主要諸元■全長1520 全幅570 全高930 シート高790~955(各mm)■タイヤサイズ前:18-2.125 後:20-2.124 ※写真と諸元はジャパンモビリティショー2023発表時のもの
e-PO
e-PO
e-PO
e-PO
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(新型EV/電動バイク)
レンタルクーポンの利用者、先着500名に購入サポート 今回のキャンペーンは、Hondaのバイク関連サービス「HondaGO」の会員を対象としており、現在会員でない方も、新たに登録することで参加可能。キ[…]
ひと目でEVとわかる先進的なスタイリング こちらが今回発表された「CUV e:」! Hondaはこれまで、EVバイクとしてパーソナル向けに原付一種の「EM1 e:」を市販化していますが、CUV e:は[…]
【本田技研工業 電動事業開発本部 二輪・パワープロダクツ電動事業開発統括部 CUV e: LPL(開発責任者) 後藤香織さん】2006年入社。以来一貫して2輪車開発に従事し、おもに車体設計としてEV-[…]
パワフルで坂道も得意、実用的な原付二種EV 2023年のジャパンモビリティショーでコンセプトモデル「SC e: Concept」として参考出品されていたものが車名を「CUV e:」と改め、2025年6[…]
高まるペット移動ニーズに応える革新的モビリティ ガソリン価格の高騰と50ccクラス原付の製造終了という時代の転換期において、経済的かつ環境に優しい移動手段への需要が急速に高まっている。その一方で、近年[…]
最新の関連記事(スズキ [SUZUKI])
日本でも正式発表が待たれる400ccオフロード/スーパーモト スズキは、昨秋のEICMA(ミラノショー)にて、新型400ccデュアルパーパスモデル「DR-Z4S」およびスーパーモトモデル「DR-Z4S[…]
現代の耐久レーサーはヘッドライト付きのスーパーバイクだが…… 近年の耐久レーサーは、パッと見ではスプリント用のスーパーバイクレーサーと同様である。もちろん細部に目を凝らせば、耐久ならではの機構が随処に[…]
高回転&高出力主義の権化 250クラスでも高性能な直4を望む声が高まっていた’80年代前半、スズキが世界初の250cc水冷直4エンジンを搭載した量産車、GS250FWを投入。以降、ヤマハ、ホンダが追随[…]
スズキは、同社の直営店「スズキワールド」が提供するレンタルバイクサービスを、スズキワールド葛飾店に続きスズキワールド多摩店でも開始したことを発表した。このサービスは、話題のスズキのオートバイを試したい[…]
幻のヤマハロータリー〈RZ201〉 1972年東京モーターショウの最大の話題は彗星のように登場したこのローターリー車だ。水冷・横置きツインローターを搭載、また前輪とともに後輪にもディスクブレーキを採用[…]
人気記事ランキング(全体)
最新モデルはペルチェデバイスが3個から5個へ 電極の入れ替えによって冷却と温熱の両機能を有するペルチェ素子。これを利用した冷暖房アイテムが人気を博している。ワークマンは2023年に初代となる「ウィンド[…]
アウトローなムードが人気を呼んだフルフェイスがついに復活! 6月3日付けでお伝えしたSHOEIの新製品『WYVERN(ワイバーン)』の詳細と発売日が正式に発表された。 1997年に登場したワイバーンは[…]
バイクツーリングにおすすめの都道府県ティア表 バイクツーリングの魅力は、ただ目的地に行くだけでなく、そこへ至る道中のすべてを楽しめる点にある。雄大な自然が織りなす絶景、心地よいカーブが続くワインディン[…]
水冷Vツイン・ベルトドライブの385ccクルーザー! 自社製エンジンを製造し、ベネリなどのブランドを傘下に収める中国のバイクメーカー・QJMOTOR。その輸入元であるQJMOTORジャパンが、新種のオ[…]
東洋の文化を西洋風にアレンジした“オリガミ”のグラフィック第2弾登場 このたびZ-8に加わるグラフィックモデル『ORIGAMI 2』は、2023年1月に発売された『ORIGAMI』の第2世代だ。前作同[…]
最新の投稿記事(全体)
日本でも正式発表が待たれる400ccオフロード/スーパーモト スズキは、昨秋のEICMA(ミラノショー)にて、新型400ccデュアルパーパスモデル「DR-Z4S」およびスーパーモトモデル「DR-Z4S[…]
2003年モデル概要:MotoGP直系の先進技術を取り入れたSSとして登場 発売は2003年7月4日。2003年当時、最先端のMotoGPマシンだった「RC211V」で培った先進技術とスタイリングを随[…]
今年発表されたばかりの最新キャンパー。ホテル代を考えたら検討の価値あり トイファクトリーが運営しているキャンピングカーレンタルサービス「ShareCamper(シェアキャンパー)」は、フィアット・デュ[…]
現代の耐久レーサーはヘッドライト付きのスーパーバイクだが…… 近年の耐久レーサーは、パッと見ではスプリント用のスーパーバイクレーサーと同様である。もちろん細部に目を凝らせば、耐久ならではの機構が随処に[…]
高回転&高出力主義の権化 250クラスでも高性能な直4を望む声が高まっていた’80年代前半、スズキが世界初の250cc水冷直4エンジンを搭載した量産車、GS250FWを投入。以降、ヤマハ、ホンダが追随[…]
- 1
- 2