コロナ禍が落ち着き、単独で楽しめる移動手段&趣味としてバイクに乗り始めたライダーたちは、世の中が元に戻り始めたことでバイクを降りてしまうのではないか。そんな心配をよそに、意外な現象が起きていた。大型免許取得者が2002年以来の10万人超えになったというのだ。
●文:Nom(埜邑博道) ●外部リンク:レインボーモータースクール和光
ステップアップするライダーが増え、大型免許取得者が21年ぶりに10万人超え!
大型二輪免許(AT大型免許含む)の取得者数が増えているそうです。
警察庁の発表資料によると、昨年の合格者数(警察庁の資料は取得者数ではなく合格者数)10万7860人。10万人を超えたのは、2002年の10万2339人以来21年ぶりです。
教習所で大型二輪免許が取得できるようになるのを見越して、筆者がBiG MACHINE(内外出版社発行・休刊中)を創刊したのは1994年の9月。1990年にカワサキからZEPHYR750、92年にはホンダからCB1000 Super Fourやカワサキ・ZEPHYR1100が発売され、国内でも大型バイクブームが巻き起こり始めた頃でした。
とはいえ、当時、401㏄以上のバイクに乗るためには合格率が1%程度で、司法試験より難しいと言われていた「限定解除」試験に、警察庁の運転免許試験場で受験して合格しなければいけなくて、合格者数は毎年3万人前後で推移。大型バイクは乗りたくても乗れない、まさに「高嶺の花」でした。
そして、1996年の9月。二輪の大型免許が新設されて、教習所で簡単に、しかも確実に免許が取得できるようになると、大型教習を行っている教習所(当初は数が少なかった)に受講生が殺到。翌97年には従来の3倍の9万7169人が大型免許を手にしました。
ここから国内の二輪マーケットも大きく変わりました。
250、400が企画のメインだったヤングマシン本誌も、大型バイク主体に誌面を大変更。そして、マーケットでは空前の「逆輸入車」ブームが起こりました。
当時はカワサキのZZ-R1100シリーズを筆頭とした最高速度300㎞/h超の「最速マシン」の全盛時代でもあり、大型免許を取得したらオーバー1000㏄バイクに乗るのが当り前。だれもがこぞって、リッターバイクを購入しました。
そして、その頃はまだまだ憧れの存在だった輸入車でしたが、当時は100万円を切る価格のモデルがあったハーレーダビッドソンだけは別格で、大型教習をしている人の3人に2人が大型免許取得の理由を「ハーレーに乗りたいから」と答えたものです。
1997年以降は、毎年8万人から10万人が大型二輪免許を取得するようになり、逆輸入車に加えて、モデルラインナップが増えたり、購入しやすい価格設定になったりした輸入車の販売台数も増えていき、現在に至ります。
二輪免許に関しては、まだ記憶に新しいと思いますが、2019年末からのコロナ禍により普通二輪免許取得者(同様にAT小型限定二輪免許取得者も)が激増。教習所入校が半年待ちなどという教習所バブルのような状態になり、取得者数も激増。コロナ禍以前より2~3万人多い20万人ほどが新たに二輪免許を取得しました。
さすがに昨年はそのバブルも陰りを見せ、普通二輪免許取得者もAT小型限定二輪免許取得者も減少。なのに、大型二輪免許取得者だけ増えたというのです。
この増加の原因が、コロナ禍で新たに二輪免許を取得した人たちが、さらにバイクを楽しむためにステップアップして大型免許を取得しているのでは? と思って、埼玉県和光市にある「レインボーモータースクール和光」で話を伺いました。
筆者は一昨年にもこちらを訪ねて、普通二輪免許とAT小型限定二輪免許の混雑ぶりを取材しましたが、上記のようにこの2種類の免許を取得希望の方の数は落ち着きを見せていて、やはり大型免許を取得する人が増えているとのこと。
中心は40~50代だといいますが、特に男性は20代や30代前半の方も増えているようです。
多いのが、コロナ禍のときにこの教習所で普通二輪免許を取得した人が再び「戻ってくる」ケース。かつて知ったる教習所で、免許をステップアップする人が多いのでそうです。
友人とツーリングに行って周りが大型ばかりだと肩身が狭い……
その戻ってきた人たちが、大型免許を取得することにした理由はいくつかあって、普通二輪免許をとって仲間とツーリングを楽しんでいたが、周りがみんな大型バイクに乗っているので自分はちょっと無理している感じが嫌になった、また400㏄までだと選べるバイクの数が少なくて乗りたいバイクに乗れないのから、中には免許を取得する前に大型バイクを購入してしまったという猛者(?)もいるそうです。
限定解除の時代は、自分を追い込むために先に大型バイクを買ってしまうというケースが結構ありましたが、いまは教習所に通えば確実に免許は取得できる時代ですからそんな悲壮感はないでしょうが、乗りたいバイクが手元にあれば1日も早く免許を取得しようという原動力になるのでしょう。
コロナ禍で一気に増えた新規ライダーですが、業界的に心配をしていたのは、平常に戻って公共交通機関に乗るのが再び普通のことになったら、新規ライダーは簡単にバイクを降りてしまうのではないか、ということでした。
もちろん、そういうケースも少なからずあるでしょうが、逆にAT小型限定二輪免許の人が限定解除して普通二輪免許を取得するケースも増えているそうです。
普通二輪免許を取得したら、当然、大型二輪免許も視野に入ってくるはずです。なぜなら、大型バイクがラインナップの中心である輸入車も含めると、選択肢は飛躍的に増えるからです。さまざまなメーカー、カテゴリーの中からお気に入りの1台を見つける。そうすることでバイクライフがさらに楽しく充実したものになるのです。
「コロナ禍で増えたライダーたちは、すぐに降りちゃうんじゃないか」
そんなのはどうやら杞憂だったようで、とても安心しました。
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