「一発免停!? いやいや免許取り消しです」“救護義務違反”とは?

交通違反のなかには、たった1回の違反で免許停止処分/取り消し処分になってしまうものも少なくありません。重い罰則規定がある違反の代表は飲酒運転/著しい速度超過/妨害運転などが挙げられますが、なかでも注意したいのは“救護義務違反”です。この違反については、内容をよく理解しておかないと、違反したつもりがなくても重い罰則が科せられる恐れがあります。具体的にどのような違反なのでしょうか?


●文:ヤングマシン編集部(ピーコックブルー)

もっとも悪質な交通違反=救護義務違反とは?

“救護義務違反”とは、いわゆる“ひき逃げ”のこと。

道路交通法第72条では、救護義務について以下のように明記されています。

『交通事故があったときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない』

道路交通法第72条

これに加え、事故の際はその詳細を警察官に報告する義務も生じます。

つまり、人身事故時に際して運転者に義務づけられるのは、救護義務/危険防止措置義務/報告義務の3つ。

被害者がケガをしていれば応急処置/救急車の手配をし、二次的事故を防ぐための措置を行ったうえで、事故の旨を警察に報告するのが、人身事故を起こした際の具体的な手順となります。

これに違反すると、道路交通法第117条第2項で定められた10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

道路に落ちたバイク用グローブの画像

救護義務違反では、とても重い罰則が科せられることになる。その重さは、一発で免許取り消しになるほど。

さらに、救護義務違反の違反点数は35点であるため、基礎点数だけで欠格期間3年以上の免許取り消し処分が科せられるうえ、被害者の状態によってもさらに罰則が重くなります。

被害者が死亡した場合のひき逃げは、救護義務違反35点+危険運転致死傷罪62点で合計97点。ケガの場合でも、救護義務違反35点+過失運転致傷罪はケガの程度に応じて45〜55点となるため、合計点数は80〜90点です。

70点以上は免許の欠格期間が最長の10年となるため、過去に運転免許取消歴がなくとも、その後10年間は免許の再取得ができなくなります。

さらに酒気帯び運転/酒酔い運転の場合、その点数も加算されることになり、刑罰の内容も相応に重くなります。

逃げたつもりがなくても“ひき逃げ”に当たるケースも

人身事故を起こすと、恐怖のあまり現場から逃げるように立ち去ってしまう人も少なくありません。

また、飲酒運転が発覚することを恐れて逃亡したり、飲酒運転をごまかすため酒気が抜けてから警察に自首するケースもあります。

これらの場合は当然のように救護義務違反として重い罰則が科せられますが、もっとも注意したいのは以下の3つの事例のように、逃げたつもりがなくても救護義務違反が科せられる恐れがある点です。

  • 接触や衝突がない事故
  • 話し合いで解決したと判断して立ち去る事故
  • 相手方に事故の責任があると判断して立ち去る事故

接触や衝突がない場合でも、それによって相手方が転倒したり身体を痛めたりした場合には事故扱いになります。接触や衝突がなかったからといって、警察に連絡をせずに現場を立ち去る行為は救護義務違反に当たります。

また、相手方が事故現場では「大丈夫」と言いつつも、後日身体の痛みを訴えるなどして警察に被害届と診断書を提出すれば、救護義務違反となります。とくに子ども/女性/お年寄りなどは事故に際して「大丈夫」と答えることも多いですが、その言葉を鵜呑みにしてはいけません。

さらに、相手方の明らかな違反に対して「自分は悪くない」と決めつけ、一方的な判断で現場を立ち去った場合にも救護義務違反となる場合があります。

上述した3つのケースでは、明確な救護義務違反には該当せずとも報告義務違反として処罰される可能性があるため、警察は事故が起きたら必ず連絡するようにと注意を呼びかけています。

パトカーの写真

軽くぶつかってしまっただけでも、当事者同士で解決するのではなく警察へ連絡する必要がある。

また、救命活動は初動がもっとも重要。対応が早いほど命が助かる可能性が高くなり、相手のケガが早く完治するほど違反罰則も軽くなります。

証拠が残りにくい飲酒運転によるひき逃げ犯を十分に罰するためか、救護義務違反は2007年に罰則強化されており、現在は救護義務違反だけでも酒酔い運転と同等の重い罰則が科せられます。

また、ひき逃げの検挙率は死亡事故の場合で約99%、重症事故の場合は約70%ととても高く、逃げ延びることはほぼ困難です。

また、ふだんから安全運転に努めている人であっても、救護義務違反とまったく無縁というわけではありません。あらぬひき逃げの疑いをかけられないように、規模の大小に関わらず警察への事故の報告を怠らないように気をつけましょう。

接触がなかった事故や、接触したかどうか曖昧な事故の報告はもちろん、相手が大丈夫と言い張ったとしても、必ず警察に届け出ることが大切です。

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