
ホンダのEクラッチに関する特許が3月~4月にかけて登録・発行された。間もなく発売のCBR650R/CB650Rが『Honda E-Clutch(ホンダ イークラッチ)』を搭載しているわけだが、特許図に用いられた車両はどう見てもCB1000Rで……。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
マニュアルトランスミッションの発展形としてのEクラッチ
ホンダがEICMA203で初公開し、日本国内でも4月25日に発売するCBR650R/CB650Rに搭載する新技術が「Honda E-Clutch(ホンダ イーラッチ・以下Eクラッチ)」。マニュアルトランスミッションにアクチュエーターなどを追加することで、基本的にはMT車の特性を持ちながら、システムをONにするとクラッチレバー操作不要で発進/変速/停止が可能になるというものだ。
それだけ聞くとスーパーカブ系の自動遠心クラッチのようなものを想像してしまいそうだが、この技術の場合はあくまでも通常のMT車と同じ構造のエンジンに、アクチュエーターによる自動クラッチ制御を追加したもの。乗り手はいつでも自分の意思でクラッチレバーを操作することができるだけでなく、クイックシフターと組み合わせることでシフター単体よりも素早くスムーズなギヤチェンジが可能になる。
それでいて、CBR650R/CB650Rの場合では非搭載車からプラス5万5000円でEクラッチおよびクイックシフターを搭載した仕様が買えるなど、価格上昇も最小限。ホンダが本気でEクラッチ普及を目指しているのがわかる。
そんなEクラッチの特許が改めて登録・公開されたわけだが、特許図に描かれたマシンがCB1000Rだから穏やかではない。2021年に記事化した「クラッチバイワイヤ」についても旧型CB1000Rを用いていたことから、この車両が単なる記号として描かれている可能性も否定できないが、一方でホンダがEクラッチを多機種に展開するという情報もある。
登録・公開された「クラッチ制御装置」に関する特許。Eクラッチのものだが、車両は現行CB1000Rをベースに描かれている。
すでにスクープ記事を展開しているものとしては、軽二輪250ccクラスのベストセラー車「レブル250」および兄弟モデル「CL250」、そして2025年モデルとしての登場が噂される新型4気筒「CB400」シリーズ、そしてCB1000ホーネットの兄弟モデルとして登場の可能性が示唆された新型「CB1000(スーパーフォア?)」にEクラッチが搭載される模様であり、さらなる展開もうかがえる。
となれば、今回の特許図を真に受けて4気筒1000ccネイキッドに搭載されるかも……と見るのは自然と言えよう。国内でも正式発表カウントダウン状態のCB1000ホーネットや、2023年1月19日に最新カラーが登場しているCB1000Rについても、純MT車に続いてEクラッチ仕様が登場する可能性が高そうだ。
【予想CG】CB1000R E-Clutch
【予想CG】CB1000 Hornet E-Clutch
クラッチバイワイヤはどこいった?
もうひとつ気になるのは、前述のクラッチバイワイヤだ。こちらはクラッチレバーからの入力をセンサーで拾い、クラッチ制御はケーブルを介さず全て電子的に行うというもの。ライダー側の感じ方としてはEクラッチと同じ振る舞いになるだろうが、ユニット駆動の方法が全く異なる。
こちらについては、より大型で追加コストも吸収できるモデルへの採用が有力か……とも思えたが、じつはこれ、DCTとの相性がいいのではないか。
2024年になってEクラッチ開発者インタビューの場が設けられ、ヤングマシンとしても参加してきたのだが、その際に思い切って「クラッチバイワイヤはもしかして将来的にDCTに採用したほうが相性がいいのでは?」と話題を振ってみたところ、もちろん開発者氏は「あ、まあそうかもしれませんね」と明確に答えることはなかったが、わずかに唇の端が持ち上がったように見えた。
クラッチバイワイヤの特許図。マスターシリンダーのピストンのように見えるのが反力発生装置らしい。ちなみに、電源オフ時にクラッチが繋がっているタイプ、または切れているタイプのどちらも作ることは可能なようだ。
オートクラッチ操作とマニュアル操作を自在に切替可能? 2021年6月にお伝えした『クラッチもバイワイヤ! ホンダの新たな特許、指1本で軽々操作できる……だけじゃない?!』という記事を覚えている方はいら[…]
なにしろ、ホンダ車における通常のマニュアルクラッチシステムのほとんどはスチール製ワイヤーケーブルを用いているので、CBR650R/CB650Rで採用しているEクラッチのシステムを追加するだけで成立してしまう。わざわざクラッチバイワイヤを採用するメリットはあまりない。
一方で、DCTは自動変速でき、クラッチ操作不要かつクラッチレバーレス構造になっているが、やはりあくまでもプログラム通りに動くため、ライダー固有の好みに合わせたコントロールにはなりきらない部分がある。例えば、ほぼアイドリングでタイトターンしたいような場面など。どうしてもマニュアル操作したくなることがあるのだ。
しかし、DCT(Dual Clutch Transmission)はその名のとおりクラッチユニットが2つあり、通常のケーブルや油圧クラッチシステムでライダーが操作できるようには出来ていない。そこでクラッチバイワイヤなら、DCTであってもライダーが任意に操作できるようになるはず、というのがヤンマシ的な見立てである。
じっさい、DCTの2つのクラッチは電子制御によって断続がコントロールされているので、そこにレバーからの電子的な制御を介入させることも無理難題ではないはずだ。
このクラッチバイワイヤについては、ホンダが特許を公開しているものの、DCTへの搭載については想像にすぎない。それでも技術的な矛盾はないように考えられることから、Eクラッチが多くのユーザーに受け入れられた後に、あるいはDCTにも……。そう考えたわけだが、答え合わせまでは数年かかりそうですかね?
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(メカニズム/テクノロジー)
いまや攻めにも安全にも効く! かつてはABS(アンチロックブレーキシステム)といえば「安全装備」、トラクションコントロールといえば「スポーツ装備」というイメージを持っただろう。もちろん概念的にはその通[…]
油圧ディスクブレーキだけど、“油(オイル)”じゃない いまや原付のスクーターからビッグバイクまで、ブレーキ(少なくともフロントブレーキ)はすべて油圧式ディスクブレーキを装備している。 厳密な構造はとも[…]
[A] 前後左右のピッチングの動きを最小限に抑えられるからです たしかに最新のスーパースポーツは、エンジン下から斜め横へサイレンサーが顔を出すスタイルが主流になっていますよネ。 20年ほど前はシートカ[…]
ミリ波レーダーと各種電制の賜物! 本当に”使えるクルコン” ロングツーリングや高速道路の巡航に便利なクルーズコントロール機能。…と思いきや、従来型のクルコンだと前方のクルマに追いついたり他車に割り込ま[…]
3気筒と変わらない幅を実現した5気筒エンジンは単体重量60kg未満! MVアグスタはEICMAでいくつかの2026年モデルを発表したが、何の予告もなく新型5気筒エンジンを電撃発表した。その名も「クアド[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
足元やシュラウドをダーク調で締める 2017年モデルで「ネオスポーツカフェ」モデルの末弟としてCB300R、CB1000RとともにデビューしたCB125Rの、欧州仕様2026年モデルが発表された。20[…]
フレディ・スペンサーが絶賛! 軽さと「フォーギビング」な安定性を評価 伝説のライダー、フレディ・スペンサーがHSR九州でCB1000Fをガチ走行し、そのインプレッションを語っている。スペンサーは、CB[…]
バイクはお兄さんの影響 メグミさんは昔からバイクに興味があったのだと言います。 「兄が二人いて、どちらもバイクに乗っていたんです。小さいときからその様子を見ていたので、自然に自分も乗りたいと考えるよう[…]
超高性能なCB750FOURでオートバイのイメージを損なわないようジェントルなモデルをアピール! 1969年、世界初の量産4気筒スーパースポーツ、CB750フォアが衝撃のデビューを果たした。 これを契[…]
丸山浩直伝! ホンダCB1000Fの嗜み やっぱりCBはストリート=公道のヒーローだった。 まず何が素晴らしかったかと言えば、低速域におけるトルク感とかあのドロドロっとした大排気量直4CBならではのフ[…]
人気記事ランキング(全体)
「マスダンパー」って知ってる? バイクに乗っていると、エンジンや路面から細かい振動がハンドルやステップに伝わってきます。その振動を“重り”の力で抑え込むパーツが、いわゆるマスダンパー(mass dam[…]
トップス&インナー 機能性抜群な冬用パーカー JK-630:1万3000円台~ 伸縮性の高い透湿防水生地を使用したウインターパーカー。保温性に優れた中綿入りなので、暖かさをキープでき、快適なライディン[…]
「特殊ボルト」で困ったこと、ありませんか? 今回は「でかい六角穴のボルト」を特殊工具なしで外してみようというお話。 バイクを整備していると時々変なボルトに出会うことがあります。今回は古い原付オフロード[…]
主流のワンウェイタイプ作業失敗時の課題 結束バンドには、繰り返し使える「リピートタイ」も存在するが、市場では一度締め込むと外すことができない「ワンウェイ(使い捨て)」タイプが主流だ。ワンウェイタイプは[…]
繋がる、見える、タフネス。ライダーが求める基本性能を凝縮 ツーリングにスマホナビは欠かせないが、バイク乗りなら誰もが抱える共通の悩みがある。それは、走行中の激しい振動によるスマホカメラの故障や突然の雨[…]
最新の投稿記事(全体)
足元やシュラウドをダーク調で締める 2017年モデルで「ネオスポーツカフェ」モデルの末弟としてCB300R、CB1000RとともにデビューしたCB125Rの、欧州仕様2026年モデルが発表された。20[…]
論より証拠! 試して実感その効果!! クルマのボディケア用品の名門として語られることが多いシュアラスターですが、同社の本質は“洗車関係”にとどまりません。じつは、燃料がどう燃え、エンジンがどんな性格を[…]
YZF-R7、R1譲りの電子制御を獲得し大幅進化!【海外】 新型YZF-R7が欧州と北米で発表。R1由来の6軸IMUと電子制御スロットル(YCC-T)を新たに採用し、電子制御が劇的な進化を遂げた。バン[…]
電動原付一種バイクながら電動アシスト自転車にも切り替え可能 50ccの原付一種バイクが生産を終え、これまでこのクラスを利用してきたユーザー層が新車に乗り換えるなら、上限125cc以下の新基準原付、もし[…]
輝かしい歴史を持つXT500は、なんと2002年まで生産 そもそもXT500は、1976年にヤマハが初めて作った4ストロークのビッグシングル搭載のトレールバイク。2スト全盛ともいえる時期に、空冷4サイ[…]
- 1
- 2





































