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4月上旬、JAIA(日本自動車輸入組合)による輸入車の試乗会が開催され、当日はさまざまな外国車をとっかえひっかえ試乗することができた。“普通二輪免許で乗れるハーレー”ことX350は当初の印象と変わらず、スポーティな走りを見せてくれた。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ハーレーダビッドソン
並列2気筒のハーレーが登場した意味とは?
普通二輪免許で乗れるハーレーとして昨年末に登場し、話題となったX350。現代ではわりと珍しい360度クランクの並列2気筒エンジンを搭載し、往年のフラットトラッカーをオマージュしたクールなたたずまいが特徴だ。
見た目には角ばった燃料タンクや大きめのシートカウルなどで750ccクラスかと思うような車格だが、実際にまたがると排気量なりに軽い。足着きはそれほど良好でもないが、インパクトがあるのはバックステップ気味のポジションだ。ステップがかなりスポーティな設定である一方、ハンドルバーはアップライト気味に構えて自然に操れる位置にある。
エンジンのフィーリングは独特だ。他社ではカワサキのW800も採用する360度クランクの並列2気筒エンジンだが、吹け上がりは比較的ゆったりしていて、等間隔爆発ならではの『ビィーーン』というフラットなサウンドが特徴。発進トルクは排気量なりにあり、ごく普通に走れる。
高回転まで回していくと、鋭さこそないもののワインディングロードでも十分と思えるパワーを発揮し、スポーティな車体にもリズムが合ってくる。高周波音があまりないハスキーな排気音はけっこう好みという方も多いのではないだろうか。ちなみに等間隔爆発ということではBMWの水平対向エンジンとも共通(BMWは180度位相だがシリンダーが対向しているため360度と同じになる)していて、サウンドの傾向はけっこう似ている。
一般的な180度クランクの同排気量帯ライバルとしてはCBR400RやMT-03、Z400などが挙げられるが、X350はそれらに比べると360度らしく極低回転域でもスムーズなのが特徴だ。クラッチやシフトタッチは特に違和感なし。
車体はライディングポジション同様にスポーティな設定で、サスペンションは街中でゆったり走りたいといった場面でちょっと硬めに感じるかもしれない。ただ、サスペンションは前後とも伸び側減衰力とプリロードが調整できるので、気になるなら少し弱めてやれば、街中の速度域も快適になるはず。
ライディングポジションは同行した谷田貝洋暁さんの写真にて。ステップ位置はバックステップ気味でアグレッシブ。膝の曲がりは90度よりもやや鋭角になる。アップハンドルでグリップ位置は高く、上半身は比較的ゆったりしている。【身長172cm/体重75kg】
以前に試乗した記憶と合わせてみると、本領を発揮するのは街中よりも高いアベレージ速度で走れる郊外の道やワインディングロードだと思う。リヤ160mm幅という650~750ccクラスに匹敵するタイヤサイズや1410mmというこのクラスとしては長めのホイールベースなどからも、街中での小回りよりはある程度爽快な走りに焦点を当てたマシンだと読み取れる。
空冷スポーツスターがラインナップから外れて以来、入手しやすいハーレー入門車というゾーンは手薄になっていたが、X350は70万円切りという価格や普通二輪免許で運転できる排気量など、新しいハーレーファンを増やしていきそうな要素が満載だ。
水冷の並列2気筒はハーレーなのか? と思う向きもあるかもしれないが、意外とクラシカルな面を持つエンジンフィーリングや、いかにもハーレーのスポーツバイクというデザイン、そしてハーレーユーザーの多くがそうしているように自分好みにカスタムしていくのも容易そう。なんならビッグツインユーザーのセカンドバイクにもアリかもしれない。
HARLEY-DAVIDSON X350
HARLEY-DAVIDSON X350
主要諸元■全長2110 全幅全高── 軸距1410 シート高777(各mm) 装備重量195kg■水冷4ストローク並列2気筒DOHCバルブ 353cc 36ps/9500rpm 3.16kg-m/7000rpm 変速機6段 燃料タンク容量13.5L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=160/60ZR17 ●価格:69万9800円
1970年代から活躍してきたフラットトラックレーサー「XR750」をオマージュしたような、角ばった燃料タンクやシートカウル、シンプルな丸型メーター&ヘッドライトがハーレーらしさを主張。足まわりもホイールやウェーブディスクなど凝ったデザインだ。
スチール製トレリスフレームに前傾した並列2気筒エンジンを搭載。シートは前後の段差が大きめで、フラットトラックレーサーのシートカウル形状を再現している。スイングアームは丸パイプを2本束ねたような造りだ。
丸型ヘッドライトや細身のウインカーなど、灯火類はフルLED。太いタイヤや倒立フォークも見どころ。
シンプルな丸型メーターは180km/hまで降られている。各種インジケーターのほか、液晶部分にオド/トリップ/時計/回転計を選択して表示できる。
角ばった燃料タンクは見た目からイメージするよりもスリム。
シートは幅広で、足着きの際には角がやや内モモに当たる傾向だ。シート下にはバッテリーなどが収まる。
穏やかな吹け上がりの並列2気筒エンジンは360度クランクを採用。ショートサイレンサーから吐き出されるエキゾーストノートは程よく野太いハスキーなものだ。
φ41mm倒立フロントフォークは右側に伸び側減衰力アジャスターを装備する。調整すると圧側にも作用するタイプだった。ブレーキディスクはウェーブタイプをダブルで装着。
ハーレーブランドでは珍しいチェーンドライブを採用。リヤブレーキにもウェーブディスクを備える。右側にリンクレスでオフセット装着されたシングルショックは、ダイヤル式の伸び側減衰力アジャスターとダブルナット式プリロードアジャスターを装備する。
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