イタリアのミラノで11月7日から開幕されている世界最大級2輪車ショーのEICMA 2023で、スズキは2024年のブランニューモデルとなる「GSX-S1000GX」を初公開。GSX-S1000GTをベースに開発された、スポーツツアラーとアドベンチャーを融合させたクロスオーバーモデルで、スズキ量産2輪車では初めて電子制御サスペンションも採用しているぞ!
●文:ヤングマシン編集部(田宮徹)
まとまりのあるルックスの新型クロスオーバーに
EICMA 2023(ミラノショー)のプレスデー初日となった11月7日に世界初公開されたスズキの「GSX-S1000GX」は、2023年12月から欧米を中心に全世界で順次発売が開始されるブランニューモデルだ。開発ベースとなっているのはGSX-S1000GT。こちらはネイキッドスポーツのGSX-S1000に仕様変更を加えたフルカウルスポーツツアラーで、GXはプラットフォーム展開による新たなGSX-S1000ファミリーの1台ということになる。
名機と謳われた2005~2006年型のGSX-R1000をルーツとする998cc水冷並列4気筒エンジンは、シリーズ共通。欧州仕様のスペックは排気量999ccで最高出力152馬力/最大トルク10.8kgf-mとなっていて、日本仕様と数値は異なるが、これは計測方法や表記の違いによるもので、日本でGXが発売される際には、GSX-S1000やGTと同じく998ccで150馬力/10.7kgf-mとなるはずだ。
高剛性のアルミ製ツインスパーフレームや、2012年型GSX-R1000から譲り受けたアルミ製スイングアームなども、基本設計はシリーズで共用。GXも前後17インチホイールを履き、ホイールデザインやタイヤサイズ(フロント120/70ZR17/リヤ190/50ZR17)を含めてシリーズ他機種と同じだ。ただし、後述する前後サスペンションはGX専用仕様。またシートレールは、荷物の積載やタンデムを考慮した強化バージョンとなっており、写真から判断する限りはGTからそのまま譲り受けていると思われる。
外装類は、フロントフェンダー/テールカウル/エンジンサイドカバーなどをGSX-S1000またはGTから流用しながら、フロントカウルを新設計。燃料タンクや縦2灯配置で六角形モノフォーカスタイプLEDヘッドライトの本体などもシリーズ共通だが、全体のスタイリングイメージは大きく異なる。まるで最初からこういうモデルだったかのように仕上げてあるところが秀逸だ!
スズキ量産2輪車初の電子制御サスペンション搭載
GSX-S1000GXは、スズキの量産2輪車では初めて電子制御サスペンションを採用。スズキアドバンスドエレクトロニックサスペンション(SAES)と名付けられたこのシステムは、ショーワ(日立アステモ)が手がけるEERA技術に基づいており、前後サス本体はSFF-CA倒立フロントフォークとBFRC-liteリヤモノショックで構成される。車体に搭載されたIMU(6軸慣性計測装置)/ホイールのスピードセンサー/サスのストロークセンサーからの情報により制御されるこのシステムは、走行状況に応じて瞬時に前後サスのセッティングを最適化。前後サスともにストロークは1/1000mm単位で計測され、減衰力は1/1000秒間隔で自動制御される。
このSAESには、路面変化に対する追従性をさらに向上して快適性を高めるスズキフローティングライドコントロール(SFRC)、車速を監視するスズキベロシティディペンデントコントロール(SVDC)、その車速に合わせてサスペンションの制御を最適化することで、ブレーキングによる車両姿勢変化を穏やかに収束させるスズキディセレーションダンピングコントロール(SDDC)も盛り込まれている。また、リヤサスはプリロードも電子制御化されており、オートと3タイプのマニュアルモード(ソロ/ソロ+荷物/タンデム)から選択可能。オートにセットしておけば、減衰量も自動補正してくれる。
さらに、凸凹路面を検知してサスペンションの制御量を自動で切り替える、スズキ独自プログラムのスズキロードアダプティブスタビライゼーション(SRAS)も導入。これにより、未舗装路での振動を抑えたスムーズな乗り味と、オンロードでのダイナミックなライディングの両立が可能になっているという。
サスペンション以外の電子制御技術もとにかく充実
GSX-S1000GXは、現代のハイスペックツアラーらしく、電脳化もGT以上に追求されている。まず、スズキドライブモードセレクターアルファ(SDMS-α)の搭載により、3段階の出力特性と7段階+オフのトラクションコントロールおよび4段階の電子制御サスペンション減衰量が、統合的に調整可能。双方向クイックシフトシステム/作動中のシフト操作も可能なスマートクルーズコントロール/コーナリング時にABSを作動させて意図したラインのトレースを支援するモーショントラックブレーキシステム/下り坂でのブレーキング時にリヤタイヤのリフトを抑制するスロープディペンデントコントロールなどが標準装備されている。
メーターは、GTと同じく6.5インチフルカラーTFT液晶マルチインフォメーションディスプレイ。スズキ2輪車ではこのGTに初導入されたスマートフォン連携機能を継承し、アプリを介することで地図やアドレス帳などの情報を車両ディスプレイに表示することもできる。ロングツーリングでは特に便利に感じられる機能だ。ちなみに、メーターの左側にはUSB充電ポートも搭載されている。
随所に盛り込まれたツーリング快適化設計
GSX-S1000GXは、スポーツツアラーとアドベンチャーを融合させたクロスオーバーモデルとして、これまで紹介してきた部分以外にも旅の快適性と利便性を高める設計が多数施されている。まずライディングポジションは、ハンドルグリップ位置がGTと比べてライダー側に55mm近づき、シートに対するステップ位置がGT比で15mm低くなった。ハンドルバーもややワイドだ。大きめのウインドシールドは、50mm幅で3ポジションに調整可能。防風性を発揮するナックルガードも標準装備されている。
ハンドルバーブラケット/トップブリッジ/バックミラーをラバーマウント化し、ステップもラバー付きとすることで、振動伝達による不快感を軽減。シートは前後ともにGX専用設計で、ライダー側はクッションがGTより15mm厚く、理想的な座り心地を実現するため敢えてやや硬めの設定とし、上面はGTよりフラットに設計してある。タンデムシートはGTより10mm厚く、こちらもクッション硬度を最適化し、面積を広くしてある。
タンデムシートと上面の高さが合わせられた、大きめのアルミ製リヤキャリヤを標準装備。GTと同じく、テールサイドには純正アクセサリーのサイドケースを装着することを想定したアタッチメントもデザインされている。
日本にも2024年の早い段階で導入されることに期待!
欧州で発表された2024年型GSX-S100GXのカラーバリエーションは、メタリックトリトンブルー/グラススパークルブラック/パールマットシャドウグリーンの3タイプ。このうちブルーがメインカラーに設定されている。欧州ではすでに、サイドケースセット/ショートスクリーン/プレミアムシート/ローシート/グリップヒーターなどの純正アクセサリーが発表済み。2023年12月の発売開始に向けて準備万端だ。
前後17インチホイールを履いた、いわゆるオンロードアドベンチャーとして、国内メーカーではホンダのNT1100やヤマハのトレーサー9GT+、カワサキのヴェルシス1000SEのライバルとなるニューモデル。その洗練されたルックスは期待以上で、日本でも早期発売開始を望む声が高まりそうだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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