
ヤングマシンが事前スクープしたように、スズキGSX-8Sをベースとした2024年型の新機種となる派生モデルは、フルカウルまたはハーフカウルのどちらか、あるいは両方と思われていたが、結果的にはフルカウル一択で確定。2023年11月にイタリアで開催されたEICMA(ミラノショー)にて、「GSX-8R」が堂々のデビューを果たした!
●文:ヤングマシン編集部(田宮徹)
フェイスデザインはGSX-8SとGSX-R1000Rの融合系!?
スズキは、イタリアのミラノで開幕したEICMA 2023のプレスデー初日となる11月7日に、2台のブランニューモデルを世界初公開。このうちの1台は、2023年モデルとしてデビューしたネイキッドスポーツのGSX-8Sをベースとした、フルカウルスポーツの「GSX-8R」だった。
新設計のサイドカウルをまといながらも、エンジンは比較的広範囲に露出され、メカニカルな雰囲気。同じく新設計されているアッパーカウルは、8Sあるいはその兄弟車であるVストローム800/DEと同じく、縦2灯配置で六角形デザインのモノフォーカスタイプLEDヘッドライトを使いながら、その両サイドに通気ダクトをデザインして、従来型GSX-R1000Rのテイストも与えてある。
ヘッドライト上部には、コンパクトなLEDポジションランプをセット(8Sはヘッドライト両サイドに配置)。未発表ながら、写真から判別するかぎり、こちらはVストローム800シリーズから流用しているようだ(搭載位置もほぼ同じ)。
8Sがヘッドライトおよび周辺のカウル類やメーターをフロントフォークにマウントするのに対して、8Rはこれらがすべてフレームマウントとなっている。さらに、バックミラーもハンドルではなくカウルに装着されているため、より機敏でニュートラルなステアリングフィールも期待できる。
SUZUKI GSX-8R(2024model)
アルミ鍛造製のセパレートハンドルを採用
スズキは、ネイキッドのGSX-S1000をベースとするGSX-S1000GTやかつてのGSX-S1000Fでは、バーハンドルのままフルカウル仕様化する手法も選択してきたが、今回発表された8Rでは、よりスポーティーなライディングポジションを狙って、ハンドルもセパレートタイプに変更している。ブラケットは、フロントフォークではなくトップブリッジにボルトオンする構造だ。
グリップ位置は8Sよりも低めで、垂れ角や絞り角も多め。写真からの推察では、シートやステップなどは8Sから変更されていないようだが(シート高は8Sと同じく810mm)、ライディングポジションに対する印象はだいぶ異なりそうだ。ただし、当然ながら8Rは純粋に速さを追求するようなモデルではないため、本格的なスーパースポーツのようにキツすぎる前傾姿勢にはなっていない。狙っているのは、あくまでも“ストリートにおけるスポーティーでアグレッシブな乗り味”だ。
前後サスペンションはメーカーも異なる専用設計仕様
スズキの新たなプラットフォーム戦略車として、エンジンや車体基本部に関しては多くの部分が8Sと共通化されている8Rだが、前後サスペンションは専用設計されている。まず、8Sの前後サスがKYB製なのに対して、8Rはショーワ(日立アステモ)製に。そして倒立フロントフォークは、コストと性能のバランスに優れて軽量なことから近年は多くの車種が純正採用する、SFF-BP仕様となっている。
当然ながら、前後サスペンションはセッティングも8R専用。セパレートハンドルのスポーティーなライディングポジションで、ワインディングを楽しむことだけでなく、長距離ツーリングでの快適性なども考慮されている。調整機構は、リヤモノショックのプリロードアジャスターのみ装備。これは8Sと同様で、写真から7段階調整式と思われる。
8Sと同様の馬力&トルクで、車重は3kg増
8Rに使用されるスチール製フレーム/アルミ製スイングアーム/270度クランクの水冷パラレルツインエンジンは、基本的に8Sと共通化されている。今回発表された欧州仕様は、排気量776ccで最高出力61kW(82.9ps)/8500rpm、最大トルク78Nm(7.9kgf-m)/6800rpmと発表されていて、775ccで80ps&7.7kgf-mの国内仕様8Sとは数値が異なっているが、計測方法や表記の違いから8S同士の比較でも欧州と日本では発表数値に違いがあり、欧州仕様同士の比較では8Sと8Rは完全に同じだ。
もちろんエンジンには、GSX-8Sで量産2輪車として初採用された、クランク軸に対して90度に1次バランサーを2軸配置するスズキクロスバランサーや、アシストカムとスリッパーカムによるスズキクラッチアシストシステム(SCAS)、発進時や低回転走行時にライダーの操縦をサポートするローRPMアシストなどを採用。2 into 1集合形式でショートデザインのエキゾーストシステムも、そのまま踏襲されている。
フルカウル&セパレートハンドル化の影響により、車重はトータルで3kg増の205kgと発表されている。8Rにとって最大のライバルとなるヤマハのYZF-R7は、73馬力/6.8kgf-mの688cc水冷並列2気筒エンジンを搭載して188kg。8Rのほうが17kg重いが、7馬力&0.9kgf-mパワフル(エンジン性能は国内仕様のR7と8Sを比較)で、かなりいい勝負となりそうだ!
充実の電子制御システムは8S譲り
「The New Standard of Sport」を開発コンセプトに、親しみやすい走行性能のフルカウルスポーツに仕上げられているGSX-8R。一方で、ライダーをサポートする電子制御システムは、ある程度充実されている。これも8Sと同様だ。
まずメーターには、5インチカラーTFT液晶マルチインフォメーションディスプレイを採用。これも8S譲りで、表示のデザインも共通化されている。背景色が白のデイモードと黒のナイトモードを手動または自動で切り替え可能で、アラートや警告を大きくポップアップ表示する機能も装備。半円バーグラフ表示のタコメーターは、回転数インジケーターとしても機能する。
ドライブモードセレクターはA/B/Cの3タイプから選択でき、トラクションコントロールは3モード+オフに介入度を調整可能。さらに、シフトアップ&ダウンの双方向に対応するブリッパー機能付きクイックシフトシステムも標準装備されている。
欧州では早くもアクセサリーパーツを公開!
同時に発表された純正アクセサリーパーツのうち、シングルシートカウル/ソフトサイドケース/ブレーキやクラッチのビレットレバーなどは、8Sと8Rで共通化されていると思われる。加えて8R専用アクセサリーとして、スモークタイプのツーリングスクリーンも発表。スタイリッシュシートも、日本の8S純正アクセサリーには設定がない。
欧州で発表された車体色は、メタリックトリトンブルー(青)/パールイグナイトイエロー(黄)/メタリックマットソードシルバー(銀)/メタリックマットブラックNo.2(黒)の4タイプ。グラフィックデザインやシートレールの色は共通化されているが、前後ホイールは青と黄がシルバー、銀がレッド、黒がブラックとなっている。
環境規制強化の影響などによるラインアップ減少後、2023~2024年にかけて新たなプラットフォーム戦略により車種拡充を進めているスズキ。その中でもGSX-8Rは、ステップアップ組とダウンサイジング組の両方を取り入れられる重要な1台となるだろう。ベースモデルは、2023年型として登場するや否や、優れたバランスと扱いやすいスポーツ性が国内外で高い評価を受けているGSX-8S。その長所を受け継ぐ8Rのファンライド性能に期待したい!
SUZUKI GSX-8R(2024model)
車名 | GSX-8R |
全長×全幅×全高 | 2155×770mm×1135mm |
軸距 | 1465mm |
最低地上高 | 145mm |
シート高 | 810mm |
キャスター/トレール | 25°/104mm |
装備重量 | 205kg |
エンジン型式 | 水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ |
総排気量 | 776cc |
内径×行程 | 84.0×70.0mm |
圧縮比 | 12.8:1 |
最高出力 | 83ps/8500rpm |
最大トルク | 7.95kg-m/6800rpm |
始動方式 | セルフスターター |
変速機 | 常時噛合式6段リターン |
燃料タンク容量 | 14L |
WMTCモード燃費 | 23.8km/L |
タイヤサイズ前 | 120/70ZR17 |
タイヤサイズ後 | 180/55ZR17 |
ブレーキ前 | φ310mmダブルディスク+4ポットキャリパー |
ブレーキ後 | φ240mmディスク+1ポットキャリパー |
価格&発売時期 | 未発表 |
色 | 青、黄、白、黒 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(GSX-8S)
振動を軽減するクロスバランサー採用の2気筒ネイキッド スズキは「GSX-8S」の2025年モデルを発表。従来のカラーバリエーションを一部継承しながらもフレーム&ホイール色の変更などにより、3色の全てが[…]
2025年モデルとして発表、ミラノショーへの展示を予告 スズキは欧州でGSX-8Sの新色を発表。従来のカラーバリエーションを一部継承しながらもフレーム&ホイール色の変更などにより、3色の全てが新色に置[…]
レーシングイメージの“チームスズキ”グラフィックを採用 スズキイタリアは、GSX-8Sにスペシャルグラフィックと一部特別装備を与えた「GSX-8S Team Suzuki Edition」を発表した。[…]
スズキは、ユーザー参加型イベント「GSX-S/R Meeting 2024」を2024年10月20日に、スズキ浜松工場内の特設会場にて初開催すると発表した。 詳細は未発表だが、スズキ製バイクを数多く生[…]
ブルーとブラックの両方にフィットする『Suzuki Team Pack』 スズキ最新のスポーツバイク「GSX-8S」に独自のグラフィックを施すことができる『Suzuki Team Pack』がスズキフ[…]
最新の関連記事(EICMA(ミラノショー))
V型3気筒ってどんなエンジン? 並列エンジンとV型エンジンの違い 多気筒エンジンは、シリンダーの配置によってさまざまなバリエーションがあります。並列(バイクだと直列とも言いますが)、V型、水平対向とい[…]
発表から2年で早くも外観デザインを変更! ホンダは欧州ミラノショーで新型「CB750ホーネット」を発表した。変更点は主に3つで、まずデュアルLEDプロジェクターヘッドライトの採用によりストリートファイ[…]
スマホ連携TFTやスマートキー装備のDX ホンダがミラノショーで新型PCX125(日本名:PCX)を発表した。2023年には欧州のスクーターセグメントでベストセラーになったPCX125だが、日本でも原[…]
400ccのDR-Zが帰ってきた! モトクロス競技の主導権を4ストロークが握り始めて間もない2000年、公道市販車として産声を上げたのは水冷398cc単気筒を搭載するハイスペックなデュアルパーパスモデ[…]
スポーツ性能を高めたBMWフラッグシップスポーツ BMW S1000RRのおもなスペックとアップデート S1000RRは並列4気筒エンジンを搭載するスーパースポーツで、BMWがWSBK参戦を視野に入れ[…]
人気記事ランキング(全体)
シェルパの名を復活させたブランニューモデル カワサキが、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やSMは2~5年ぶり)に復活させたのは、2024年[…]
新5色ラインナップとなった2022年モデル 2022年モデルが発売されたのは、2022年6月23日のこと。2021年のフルモデルチェンジの際には、新設計の水冷エンジンが4バルブの「eSP+(イーエスピ[…]
まず車間が変わることを理解しておこう! ツーリングでキャリアのある、上手なライダーの後ろをついてゆくのが上達への近道。ビギナーはひとりだと、カーブでどのくらい減速をすれば良いかなど判断ができない。そう[…]
ナンバー登録して公道を走れる2スト! 日本では20年以上前に絶滅してしまった公道用2ストローク車。それが令和の今でも新車で買える…と聞けば、ゾワゾワするマニアの方も多いのではないか。その名は「ランゲン[…]
15番手からスタートして8位でフィニッシュした小椋藍 モナコでロリス(カピロッシ)と食事をしていたら、小椋藍くんの話題になりました。「彼は本当にすごいライダーだね!」と、ロリスは大絶賛。「ダイジロウ・[…]
最新の投稿記事(全体)
Rebel 1100 S Edition Dual Clutch Transmission 新しくタイプ追加されたのは、アクセサリーを標準装備し個性を演出する「Rebel 1100 S Edition[…]
〈1991年11月〉SR400[3HT3]/SR500[3GW3]:ツートンシート 多重クリアの”ミラクリエイト塗装”によって深みのある艶を実現。シートはツートーンに。レバー/レバーホルダー/ハンドル[…]
空冷スポーツスター用カスタムパーツを世に送り出し続けているグリーミングワークス(大阪府)。一方で水冷スポーツスターSやナイトスター用パーツもラインナップし、自然な流れでX350用パーツの開発も手がける[…]
複雑化/激甚化する”災害”に対し最新技術で立ち向かう ニュースやSNSでも知られている通り、異常気象などにより複雑化/激甚化しているという日本の災害現場。そこで起きる課題に対し、モリタホー[…]
モンキーFSシリーズの最新作として誕生! ホンダ「CB1000F コンセプト」で往年のフレディ・スペンサーが駆ったレーシングマシンのカラーリングが話題になったばかりだが、憧れの“スペンサーカラー”をま[…]
- 1
- 2