
ヤマハは欧州で、並列3気筒エンジンを搭載するスポーツネイキッド「MT-09」をモデルチェンジし、2024年モデルとして発表した。よりスリムでシャープなボディ、よりコンパクトなLEDヘッドライトなど外観を刷新し、さらに官能的なサウンドも手に入れたという。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
よりシャープなルック、新ライディングポジション、先進ITを投入した次世代モデル
2013年秋にケルンショーで発表、2014年に日本でも発売された初代MT-09からちょうど10周年にあたる今秋、ヤマハは欧州で新型「MT-09」を発表した。
ヤマハのゲームチェンジャーとして登場した初代MT-09は、のちにクロスプレーンコンセプトに分類される並列3気筒エンジンを搭載したハイパーネイキッドとして人気を博し、MT-07やMT-10、MT-125といったMTファミリーの礎となっていく。
新型MT-09は、モトクロスバイクのYZシリーズにインスパイアされたという新しいボディワークとライティングポジションが最大の特徴だ。
抑揚を削ぎ落としたかのような燃料タンクは、従来の昆虫的な印象から彫刻のようなソリッドさを身に着け、新世代を印象づける。ヘッドライトも刷新され、バイファンクショナルLEDの下にシャープなポジションライトを配置。その上に新型5インチTFTメータースクリーンをマウントする。
MT-09の印象を決定づける3気筒サウンドは、エアボックスから伸びる新型ダクトにより、高回転域で痺れるような咆哮に。これまでよりもさらに『サウンドがパワーを予感させる』という、音と振動、加速が絶妙なラグをもってシンクロした“人機官能”をもたらすはずだ。エンジン自体は新たにユーロ5+に適合したほか、アシスト&スリッパークラッチをリファイン。ギヤレシオも最適化したという。
YAMAHA MT-09[2024 EU model]
ライディングポジションは、ハンドルバー、ステップ、シートを見直し、わずかに前傾を増したスポーティなものに。低くなったハンドルバーは2段階に高さが調整可能。ステップは30.6mm後退し、9.5mm高くなった。また、フラットなシート形状などによりライダーはより自由度の高い動きができるようになっている。一方で、タンデムシートはセパレートになり、タンデムステップはリヤフレーム下側マウントとしたことでパッセンジャーの快適性は増した。
操作系では、新しいブレンボ製ラジアルマスターシリンダーを採用してコントロール性を増し、クラッチレバー形状もリニューアル。併せて左右のブレーキ&シフトペダルも新しくなり、ブレーキペダルは鍛造アルミ製になった。ハンドルスイッチ類も更新されている。
足まわりでは、発表されたばかりのラジアルタイヤ、ブリヂストン・バトラックスハイパースポーツS23を装着、サスペンションは前後ともKYB製でフロントにφ41mmフルアジャスタブル倒立フォーク、リヤはリンケージに変更を受けたモノショックを採用する。
新採用の5インチTFTスクリーンは4つの表示テーマを持ち、スマートフォン接続が可能。別途でヘッドセットを用意すれば、Bluetooth接続で電話の着信や音楽鑑賞ができるほか、無料アプリのガーミンストリートクロスでナビゲーション機能も利用できる。
電子制御は、2021年型で採用した6軸IMUを使用し、インテグレーテッドライディングモードにより「スポーツ/ストリート/レイン」を切り替え可能。従来のトラクションコントロールシステム(TCS)、スライドコントロールシステム(SCS)、リフトコントロールシステム(LIF)、ブレーキコントロールシステム(BC)に加え、バックスリップレギュレーターが新採用された。これはブレーキでリヤホイールがロックし、アシスト&スリッパークラッチが機能しにくい低グリップ路面の場合でも、エンジンのトルクを少し増してやることでグリップを回復する機能だ。
さらにクルーズコントロールを標準採用(以前はSPのみ採用)し、新たにソフトクリックも可能なオートキャンセルウインカー、スロットル開/閉にかかわらずシフトアップ/ダウンが可能な第3世代クイックシフターも採用した。
車体色はミッドナイトシアン、アイコンブルー、テックブラックの3色を展開。発売時期や価格は仕向け地によって異なる。日本への導入については未発表だが、これまでの例から順次新型に切り替わっていくものを思われる。続報を待て!
YAMAHA MT-09[2024 EU model]のカラーバリエーションとスペック
| 車名 | MT-09 |
| 全長×全幅×全高 | 2090×820mm×1145mm |
| 軸距 | 1430mm |
| 最低地上高 | 140mm |
| シート高 | 825mm |
| キャスター/トレール | 24°40′/108mm |
| 装備重量 | 193kg |
| エンジン型式 | 水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ |
| 総排気量 | 890cc |
| 内径×行程 | 78.0×62.1mm |
| 圧縮比 | 11.5:1 |
| 最高出力 | 119ps/10000rpm |
| 最大トルク | 9.5kg-m/7000rpm |
| 始動方式 | セルフスターター |
| 変速機 | 常時噛合式6段リターン |
| 燃料タンク容量 | 14L |
| 燃費 | 20km/L |
| タイヤサイズ前 | 120/70ZR17 |
| タイヤサイズ後 | 180/55ZR17 |
| ブレーキ前 | φ298mmダブルディスク+4ポットキャリパー |
| ブレーキ後 | φ245mmディスク+1ポットキャリパー |
| 価格&発売時期 | 未発表 |
| 色 | 灰、青、黒 |
YAMAHA MT-09[2024 EU model]のディテール
ライディングモードはスポーツ/ストリート/レインの3種類で、パワーモード、トラクションコントロールシステム、スライドコントロールシステム、リフトコントロールを個別に設定できるカスタムモードを2つ用意。左手元の新しいスイッチで操作する。ウインカーはソフトクリックで3回点滅し、フルクリックでは150m以上走行かつ15秒が経つとオートキャンセルされる。エマージェンシーストップシグナル(ESS)も新採用。
第3世代クイックシフターは、これまでがスロットル開のままシフトアップ/スロットル閉のままシフトダウンを可能にしたのに対し、スロットル閉の場合でもシフトアップ可能/スロットル開の場合でもシフトダウン可能になった。
タイヤはブリヂストン・バトラックスハイパースポーツS23を採用。KYB製前後サスペンションはフロントがフルアジャスタブル、リヤはリバウンドダンピングとプリロードが調整可能だ。
【動画】2024 Yamaha MT-09: Unleash your Darkness
その他の写真
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
1980年代のYZR500から1990年代のFZR・TZRを意識 ついに出た! ヤマハが誇るクロスプレーンコンセプトの3気筒マシン、XSR900をベースとしたハーフカウルのスポーツヘリテイジ「XSR9[…]
ヤマハのレースヒストリーを体現する3気筒スポーツ ヤマハは前日の欧州に続き日本でもXSR900GPを発表。10月26日から開催のジャパンモビリティショー2023、11月7日からミラノで開催のEICMA[…]
最も若々しくすばしっこい、MTの末弟! ヤマハは、以前から姿は公開されていた新型車「MT-125 ABS」の発売日と価格が正式決定したことを発表。50万円切りの49万5000円で11月10日に発売する[…]
『市販予定車』として、より量産車に近い仕様を展示したという ヤマハの楽しみな4車が登場間近?! 2023年中と噂される「XSR125」「YZF-R125」「MT-125」の発売を、確かに予感させる展示[…]
最新の関連記事(ヤマハ [YAMAHA])
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
125ユーザーにもナナハンキラーRZ250の醍醐味を届けたい! 1980年にデビューしたRZ250は、世界チャンピオンを狙える市販レーサーTZ250の水冷メカニズムからモノクロス・サスペンションまで、[…]
通勤からツーリング、サーキット走行まで使えるカウル付き軽二輪スポーツ 日本の道に最適といえるサイズ感や、通勤/通学からツーリングまで使える万能さが軽二輪(126~250cc)の長所。スクーターやレジャ[…]
“マキシスポーツ”の系譜を受け継ぐAEROX E ヤマハはインドで電動スクーター2車を発表。このうち「AEROX E」は、ヤマハのマキシスポーツの系譜を受け継ぐ高性能電動スポーツスクーターで、ヤマハが[…]
ミリ波レーダーと各種電制の賜物! 本当に”使えるクルコン” ロングツーリングや高速道路の巡航に便利なクルーズコントロール機能。…と思いきや、従来型のクルコンだと前方のクルマに追いついたり他車に割り込ま[…]
最新の関連記事(新型ネイキッド)
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
ひっそりと終了したスズキの名Vツイン スズキのミドルクラスを長きにわたり支えてきた傑作ネイキッド、『SV650』およびカフェレーサースタイルの『SV650X』が、ついにその生産の歴史に終止符を打った。[…]
Moto2で鍛え抜かれた765ccトリプルエンジン このほど登場したトライアンフのミドル3気筒の新ラインナップは、パフォーマンス、独自性、そしてサーキット志向の走行性能をこれまで以上に引き上げ、公道で[…]
2024年11月:V3エンジンコンセプトが世界初公開 ホンダが、約40年ぶりとなるV型3気筒エンジンを搭載した「new ICE concept」を世界初公開したのはEICMA 2024でのこと。このコ[…]
11/1発売:カワサキ W800 カワサキが50年以上にわたり培ってきた「W」ブランドの最新進化系「W800」の2026年モデルが11月1日に発売される。この国産クラシック系の旗艦モデルは、美しいベベ[…]
人気記事ランキング(全体)
通勤からツーリングまでマルチに使えるのが軽二輪、だからこそ低価格にもこだわりたい! 日本の道に最適なサイズで、通勤/通学だけでなくツーリングにも使えるのが軽二輪(126~250cc)のいいところ。AT[…]
[A] 前後左右のピッチングの動きを最小限に抑えられるからです たしかに最新のスーパースポーツは、エンジン下から斜め横へサイレンサーが顔を出すスタイルが主流になっていますよネ。 20年ほど前はシートカ[…]
ひっそりと終了したスズキの名Vツイン スズキのミドルクラスを長きにわたり支えてきた傑作ネイキッド、『SV650』およびカフェレーサースタイルの『SV650X』が、ついにその生産の歴史に終止符を打った。[…]
主流のワンウェイタイプ作業失敗時の課題 結束バンドには、繰り返し使える「リピートタイ」も存在するが、市場では一度締め込むと外すことができない「ワンウェイ(使い捨て)」タイプが主流だ。ワンウェイタイプは[…]
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
最新の投稿記事(全体)
「いつか一緒に走ろう」の約束から8年が経った レースの取材をしていると、大分県のオートポリス・サーキットに年に3度ほど訪れる。このサーキットは大分県に所在しているが、熊本側から向かう方が便利な立地だ。[…]
読者プレゼントのご応募はヤングマシン電子版1月号より 今、話題のアニメ&漫画『終末ツーリング』。 ライダーのツボを突く描写が盛りだくさんで、舞台は荒廃した終末世界ながら、国内ツーリングガイドとしても楽[…]
防寒と天候対策を両立させた構造 本製品はヤギ革を使用したロングタイプのウインターグローブであり、裏地にはボア素材を採用している。肌に触れる部分が柔らかく、指先が冷えやすい冬季の走行において保温を補助す[…]
通勤エクスプレスには低価格も重要項目! 日常ユースに最適で、通勤/通学やちょっとした買い物、さらにはツーリングも使えるのが原付二種(51~125cc)スクーター。AT小型限定普通二輪免許で運転できる気[…]
発熱により脚全体の冷えを抑えやすい構造 「EK-113」は、車両の12V電源を利用する電熱インナーで、太ももや腰まわりなど冷えやすい部分を効率よく温める設計だ。冬の走行中は下半身の冷えが疲労に直結しや[…]
- 1
- 2











































































