巷で話題の、電動キックボードを含む新モビリティ「特定原付(特定小型原動機付自転車)」が2023年7月1日から解禁された。乗り味や特性など、同じ公道を走るライダーとして無視できない存在だ。その使い勝手を体験するとともに、本記事初出時点で認可されていた特定原付モデルカタログや、新ルールについても解説する。
●まとめ:ヤングマシン編集部(沼尾宏明) ●撮影:佐藤正巳
- 1 特定原付試乗インプレ:お手軽で乗りやすい! 交通量が少ないならマル
- 2 特定原付の新ルールを改めておさらい
- 3 “適合済み”モデルとは?:モーターや足まわりに違いアリ。折り畳み式も
- 4 [適合済みモデル#1] Luup KK-254DJ-WT:都市部でよく見るレンタル専用ボード
- 5 [適合済みモデル#2] YADEA KS6 PRO:世界最大の電動ブランドが送る自信作
- 6 [適合済みモデル#3] E-KON City:前後ディスクと80kmの航続距離が自慢
- 7 [適合済みモデル#4] KINTONE Model one S:歩道モード付きでアンダー10万円を実現
- 8 [適合済みモデル#5] STRIEMO S01JT:ホンダ発・自立&3輪で安定感バツグン
- 9 [適合済みモデル#6] LAIL グレードL:スマートな外観と前後ディスクの脚が魅力
- 10 [適合済みモデル#7] Carmate e-FREE01:自転車タイプも準備中!
- 11 [適合済みモデル#8] SWALLOW ZERO9 Lite:前後サスで乗り心地優秀、手頃な価格にもこだわる
- 12 [適合済みモデル#9] Fiido Q1S:ミニバイクの特定原付もあるぞ
- 13 適合済み特定原付:主要スペック比較
- 14 最新適合車種一覧
特定原付試乗インプレ:お手軽で乗りやすい! 交通量が少ないならマル
原付一種扱いで急拡大した電動キックボード。2023年7月からは一定の条件を備えた電動モデルが“特定原付”として認められ、16歳以上なら無免許でも乗車可能になった。一体どんな乗り味なのか。レンタル拠点を拡大しているLuup(ループ)の特定原付版電動キックボードを試した。
筆者はキックボード自体が初めて(笑)。恐る恐る走り出そうとしたが、進まない。メーター下の説明を見ると、足で地面を蹴り、助走しないと、スロットルレバーを押しても加速しないことがわかった。
最初は少しフラフラしたが、5分も走ると慣れた。もっと不安定かとイメージしていたが、想像以上に安定感があって爽快。加減速でギクシャクすることなく走りはマイルドで、特定原付の最高速度である20km/hに到達するとリミッターが作動する。段差がなく交通量が少ない道路は、実に快適だったと言える。
一方、バイパスや幹線道路のようにクルマの交通量が多く、他車の平均速度が速い状況はキビしい。上限20km/hなので、後続のバイクなどの障害物となった上に、同じ車線を横からクルマにビュンビュン抜かれて怖い。これはミラーが非装備で後方確認しにくいのも要因だろう。
また、バイクのような一体感がないのも気になった。車体を足でホールドできないことに加え、タイヤが10インチと小径。フロントにサスペンションはあるが、路面からの衝撃がかなりダイレクトに伝わる。路面に大きな凹凸があったり、路肩から歩道への段差などで転倒の可能性もあるだろう。
特定原付はヘルメットが“努力義務”となるが、今回の取材ではご覧の通りバイクに乗る装備で臨んだ。自分としては大正解だったと思う。
とはいえ、やはりこのお手軽さは特筆すべき。目的地が公共交通機関から離れており、クルマの少ない街中や住宅街を走るなら、実にいい交通手段だと思う。一度でも登録してしまえば簡単に利用できるし、リーズナブルなのもいい(1時間無料だったこともあり、今回は約3時間20分利用して2100円だった)。
個人的には、免許とヘルメットは必須で、安全性に関してもまだ修正の余地があると思う。そして原付一種スクーターの方が乗り物としては断然ラクチンと言いたい。とはいえ、移動手段の選択肢が増えるのは歓迎。用途次第ではまた利用したい。
特定原付の新ルールを改めておさらい
電動ボードは、新しい乗り物だけにルールが浸透していないのが現状。そこで道交法や保安基準をまとめた。知らず知らず違法ボードに乗っていたり、違反したりして、取り締まりを受けないようにしよう!
モーター定格出力は600w以下がキマリ
原付一種と同様に、モーター定格出力600w以下が条件。Luupの場合、長い急坂(平均斜度4°)では速度が落ちたが、問題なく登れた。また長さ1900mm/幅600mm以内が条件で、それ以上は原付一種扱いに。
基本的に左車線の路肩側を走行する
車道では一番左側の車線を道路左側に寄って通行するのが原則。写真のように、幹線道路の走行では背後から迫るバイクや自転車にご注意。以前行われた社会実験では小回り右折が可能だったが、二段階右折が基本だ。
“特例特定原付”なら、歩道を走ってもOK!
特定原付は車道走行が基本だが、上限6km/hの歩道モードを備えるモデルは“特例特定原付”として歩道走行が可能。ただし「普通自転車等及び歩行者等専用」の標識がある歩道に限る。路側帯も走れるが、2本の白線で区画された歩行者用路側帯は通行禁止だ。
保安部品の多くは後付けしても認可されない
国内に流通している電動ボードは、グローバル規格の海外製品が多い。日本の法規を遵守しておらず、「公道走行できる」と謳った電動ボードが実は保安基準を満たしていない事例も。また、前照灯/ウインカー/尾灯などの多くの保安部品を後付けしても、特定原付として認可されず、製造段階での装備が前提となる。
“適合済み”モデルとは?:モーターや足まわりに違いアリ。折り畳み式も
2023年9月現在、国土交通省に認可された特定原付は、以下に紹介する9車種。いずれも日本で公道走行できる基準を満たしており、安心して購入でき、公道を走れる。
選ぶ際の基準として、モーターの定格出力は大事な要素のひとつ。最高速は20km/hが上限ながら、定格出力が大きいほど到達速度が速く、坂道でパワフルだ。後輪駆動が多いが、中には前輪駆動や3輪があり、自転車タイプも準備されている。
乗り心地を左右する足まわりに関しては、大半がフロントにサスペンションを採用。中にはバイクと同じテレスコピック式だったり、前後にサスを備える車種もある。ブレーキはドラム式が多いが、前後ディスクも。また、モーターで電気的に減速する“電子ブレーキ”は、エンジンブレーキのように補助的な存在と考えたい。
ハンドル部分をボード側に畳める“折り畳み機構”も、電動ボードならでは。この機能があるモデルは、運搬する際やクルマに積む時に便利だ。
[適合済みモデル#1] Luup KK-254DJ-WT:都市部でよく見るレンタル専用ボード
Luupのレンタルはこんなカンジ!!
[適合済みモデル#2] YADEA KS6 PRO:世界最大の電動ブランドが送る自信作
YADEA(ヤディア)は、2001年に創業した世界最大の電動モビリティブランド。累計販売は7000万台以上を数える。本作はパワフルな500wモーターが特徴。高強度アルミフレームを使用し、最大荷重110kgとタフ。配線露出を最小限に抑えることでデザイン性を高めつつ、引っかかりを防ぐ構造だ。ユーザー登録してパスワードでロックを解除しないと乗れないなど、防犯性能も高い。
[適合済みモデル#3] E-KON City:前後ディスクと80kmの航続距離が自慢
国内で設計&開発を行うメーカーによる電動キックボードは、登坂用に独自プログラムを搭載。同デザインで原付一種扱いの「grandePLUS」と同等の登坂性能を実現した。バッテリーは大容量の20Aで、最大航続距離は約80kmと最高レベル。さらに珍しい前後ディスクブレーキで制動力も高い。タイヤは10インチのワイド仕様を履き、パンクに強いチューブレス仕様だ。
[適合済みモデル#4] KINTONE Model one S:歩道モード付きでアンダー10万円を実現
“筋斗雲”のような乗り心地から命名されたブランドで、2015年から電動モビリティを販売している。本作は、必要十分な機能を備えつつ10万円を切る価格を実現。別売の9.6Aバッテリー(2万4800円)で航続距離を15→30kmにまで伸ばせる。茨城県の自社工場で生産され、故障やメンテナンスにも対応してくれる。
[適合済みモデル#5] STRIEMO S01JT:ホンダ発・自立&3輪で安定感バツグン
ホンダの社内起業制度から生まれた電動ボードで、自立機構と前1+後2輪が最大の特徴。路面の影響を受けにくく、安定感があり、独自のバランスアシスト機構によって、停止時に足を着く必要もない。フレームは高剛性のアルミ製で、スマホと接続すれば3種類のモードが選択できる。今後、2輪用品店のナップスでアフターサービスを受けられる予定。最高速25km/hの原付一種版も選べる(30万5000円)。
[適合済みモデル#6] LAIL グレードL:スマートな外観と前後ディスクの脚が魅力
発電システムや小型モビリティを供給する日本の“正解”社が開発。共同発売したコトブキが法人向けに導入を提案。スタイリッシュな外見、前後ディスクブレーキとワイドな100mm幅の8インチタイヤによる足まわりが魅力だ。定格出力500wで、登坂勾配15°まで対応。スマホアプリから開錠&施錠でき、便利な荷掛けフックも標準装備する。
[適合済みモデル#7] Carmate e-FREE01:自転車タイプも準備中!
現在登場している特定原付はキックボードタイプのみだが、初の自転車タイプが準備中。座って運転でき、安定してラクに走行できるハズだ。前後にディスクブレーキを備え、大径ホイールやカゴも魅力的。すでに国土交通省の認可済みで、登場が待たれる。
[適合済みモデル#8] SWALLOW ZERO9 Lite:前後サスで乗り心地優秀、手頃な価格にもこだわる
神奈川県に本社を持つ電動キックボード専門ブランドが販売。後輪駆動+9インチタイヤなどでトルクを重視し、勾配15%以下の坂もパワフルに走る。前輪はスプリング式サスペンション+ディスクブレーキ、後輪はスプリング式サス+ドラムで脚も充実。あえて歩道モードを省くことで、高品質ながら控えめな価格を実現したという。
[適合済みモデル#9] Fiido Q1S:ミニバイクの特定原付もあるぞ
原付一種のミニ電動バイク「Fiido」が、特定原付として9月に発表された。12インチタイヤと軽量アルミボディで取り回しがラク。車体中央はA4サイズが入るバスケットで便利そうだ。
適合済み特定原付:主要スペック比較
最新適合車種一覧
ここで紹介したモデル以外にも、続々と認可された新モデルが登場している。最新の適合車種については、国土交通省HPにある”保安基準適合性等が確認された特定小型原動機付自転車の型式“をチェックしてみよう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(特定原付)
一方通行逆走で、ひき逃げ事故も発生! 電動キックボード不要論も再燃している 昨年の7月1日に施行された改正道路交通法によって、一定の基準を満たした電動キックボードを含む電動モビリティは「特定小型原動機[…]
安全に運用できるなら、そりゃあ乗ってみたいわけで ジャパンモビリティショー2023、EICMA 2023と続いたニューモデルラッシュも一段落。ここらでバイクのメインストリームではなく、周辺で取材してき[…]
16歳以上が免許なしで乗れる“特定小型原付”の誕生によって、原付新時代が到来 2023年の大ニュースとして、運転免許不要で運転できる原動機付自転車が新設されたことが挙げられます。そのこと自体について賛[…]
日本には持ち込まれないはずだった? ホンダはジャパンモビリティショー2023に、アメリカホンダが開発した新型電動モビリティ「「モトコンパクト(Motocompacto)」を展示する。すでに会場で手に触[…]
左右へリーンするバイク的な特定原付 トヨタ自動車は、10/28から一般公開されるジャパンモビリティショーで、電動3輪のコンセプトモデル「ランドホッパー」を公開する。16歳以上なら免許不要で乗れる特定原[…]
最新の関連記事(新型EV/電動バイク)
電動二輪パーソナルコミューター×2機種発表に加え、バッテリーシェアリングサービスも展開 ホンダはインドで、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック […]
50ccクラスは16歳から取得可能な“原付免許”で運転できるほか、普通自動車免許でもOK バイクを運転するための免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大[…]
新エンジン、電動スポーツ、電動都市型バイク、全部やる! ホンダは新しい内燃機関と電動パワーユニットの両方で行く! そう高らかに宣言するかのような発表がミラノショー(EICMA 2024)で行われた。ひ[…]
123年以上の歴史で迎える大きな節目として電動バイクの新ブランドを構築 250~750ccのミドルクラスバイクで世界的に存在感を放っているロイヤルエンフィールドが、新しい電動バイクブランド「FLYIN[…]
タイトル争いを制したのはエンジン車の「RTL301RR」 11月3日、全日本トライアル選手権(JTR)の最終第8戦、City Trial Japan 2024 in OSAKA 大会が大阪市中央公会堂[…]
人気記事ランキング(全体)
4気筒CBRシリーズの末弟として登場か EICMA 2024が盛況のうちに終了し、各メーカーの2025年モデルが出そろったのち、ホンダが「CBR500R FOUR」なる商標を出願していたことがわかった[…]
1位:「Z900RS SE」火の玉グレーが2024秋登場か インドネシアでは「Z900RS」および「Z900RSカフェ」の2025年モデルが発表済み。ともに北米や欧州はもちろん、日本でも発表されていな[…]
完全なMTの「Eクラッチ」と、実質的にはATの「Y-AMT」 駆動系まわりの新テクノロジー界隈が賑やかだ。以前からデュアルクラッチトランスミッション=DCTをラインナップしてきたホンダはクラッチを自動[…]
【第1位】ホンダ モンキー125:49票 チャンピオンに輝いたのは、現代に蘇ったホンダのかわいい”おサルさん”です! 初代は遊園地用のファンバイクとして、1961年に誕生しました。以来長く愛され、20[…]
ポイントを取りこぼしたバニャイアと、シーズンを通して安定していたマルティン MotoGPの2024シーズンが終わりました。1番のサプライズは、ドゥカティ・ファクトリーのフランチェスコ・バニャイアが決勝[…]
最新の投稿記事(全体)
メンテナンス捗るスタンド類 ちょいメンテがラクラクに:イージーリフトアップスタンド 2890円~ サイドスタンドと併用することで、リアホイールを持ち上げることができる簡易スタンド。ホイールの清掃やチェ[…]
電熱インナートップス ジャージタイプで使いやすいインナージャケット EK-106:1万5000円台~ ポリエステルのジャージ生地を採用した、ふだん使いをしても違和感のないインナージャケット。38度/4[…]
全国170店超のHonda Dreamで開催中 Honda CBR650R/CB650Rに搭載された世界初のクラッチ自動制御メカ「Honda E-Clutch(イークラッチ)」。その実力を誰でも気軽に[…]
欧州で登場していたメタリックディアブロブラック×キャンディライムグリーンが国内にも! カワサキモータースジャパンが2025年モデルの「Z900RS」を追加発表した。すでに2024年9月1日に2025年[…]
軽快性や機敏性だけでなく安心感にも優れるのが長所 2024年の夏はジムに通ってトレーニングに取り組むことを決意したのですが、私にしては珍しく、飽きることなく続いています。さらにこの夏休みは、ロードやモ[…]
- 1
- 2