[Q] カワサキZ1などの昔のエンジンは、堂々としていて格好いいなと思います。対して、現代のスーパースポーツのエンジンは、コンパクトなつくりになっています。なぜ、こんなにも前後が短く、コンパクトになってきたのでしょうか?
●文:ライドハイ編集部(根本健)
[A] 長いスイングアームで、安定したトラクション効果を得るため
1970年代に入ると、750cc以上の大排気量の並列4気筒エンジンを搭載する、さまざまなバイクが誕生しました。
当時はまだ空冷エンジンが主流で、右側にはクラッチハウジングの大きな膨らみがあるなど、迫力があるものが多かったですよね。いま見ても美しく、威風堂々としていて、ボクも大好きなカタチです。
それに比べて、近年の、とくにスポーツモデル向けのエンジンは、とてもコンパクトに仕上がっています。クラッチは膨らみが小さくなり、しかもクランクシャフトの真後ろではなく、シリンダーの背後に迫る高い位置に設置されています。
そして、反対側のドライブチェーンを駆動するエンジン側のスプロケットが、クランクシャフトの真後ろにあります。
エンジンの前後長を短くした“その狙い”とは?
この変化の大きな理由は、エンジンの前後長を短縮するため。
昔のエンジンのように、横から見てクランク軸+ミッションのカウンター軸+ミッションのドライブ軸を一直線に並べるのではなく、カウンター軸を上に配置することで、ドライブ軸を下へ配置する逆V時配列として、前後長の短縮化を実現しているのです。
記事冒頭の写真はBMW S1000RRの並列4気筒エンジンですが、ご覧のように前後長がずいぶんと短くなり、縦長になっているのがわかります。
安定したトラクション効果を得るため
では、なぜエンジンの前後長を縮めているのでしょうか。おもな狙いは、スイングアームを長くしたいから…。それは、速度域の高いところから低いところまで、トラクション効果を広範囲で得るためです。
エンジンの後端にあるドライブスプロケットの位置と、スイングアーム付け根にあるピボット位置との関係を見てください。ピボットよりやや低い位置に、ドライブスプロケットがあるのがわかります。
そしてチェーンが、スイングアームの上にある樹脂やゴム製のスライダーに触れているはずです。これが、トラクション効果を左右する大事な位置関係なのです……
※本記事は2021年8月12日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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