
ニーゴー界の最強にして唯一無二の4気筒・カワサキ ニンジャZX-25Rの’23モデルは、吸排気系にプラスして圧縮比も高めるなど、エンジン内部まで手を加えて、’22モデルからさらなるパワーアップを実現。カラーメーターなど装備もさらに充実だ。今まででもっとも厳しいとされるユーロ5相当の新排出ガス規制に対応しても、その戦闘力はしっかり高められていたぞ。
●試乗:丸山浩 ●まとめ:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史
【TESTER:丸山浩】本誌メインテスターを務めるWITHME会長。これまでZX-25Rにはノーマルから究極カスタム仕様まで数知れず乗ってきており、現在ではWITHMEで従来型向けのフルチューニングサービスを行うまで入れ込んでいる。
排ガス規制対応+パワーアップ! 規制対応となっても変わらぬ速さとフィーリング
ニーゴー最強のZX‐25Rの’23モデルと’22モデル。新旧2台を並べてみると、外観上でもっとも変化したマフラーが印象的。’23モデルは存在を大きく主張する別体サイレンサーを採用し、エンジン下のプリボックスもなくなって、よりスポーティーな雰囲気になっている。これは排気音もさぞかし変えてきたのかなと思いながら、セルスイッチをオン。意外やそこに関しては、音量も音質もほとんど違いはない。荒々しさを強調したり、逆に静かにしたりすることなく、’22モデルと変わらぬ印象で攻めてくる。ほほぅ、こう来たか。
それでは、気になる走りそのものをチェック。テストに先立ちシャシーダイナモで測った出力では、’23モデルが全域で従来を上回っていた。これがどんな変化をもたらしているのか。街中はもとより高速道路に入った後も、加速感/スピード感/レスポンスといったすべてにおいて、さすが最強ニーゴーにふさわしいフィーリングを25Rは見せてくれる。やっぱり4気筒は速いなと思ったところで、’22モデルに乗り換えてみた。
すると…、こちらもなかなか。走りのフィーリングはほとんど同じで、試しに別の場所で6速での全開加速比較も行ってみたが、これもほぼ互角。吸排気系だけでなく圧縮比を高めるなど、エンジン内部まで変えてきたにしては驚くほどキャラも速さもそっくりなのだ。まあ、もともとニーゴー最強だけに、走りそのものについては一切不満なし。逆に’23モデルは、最高出力が上がっても低中回転が犠牲になるなど、キャラが変化していたとしていたらガッカリしてしまったところだ。
ではパワーアップの恩恵はないのかと言われると、しっかり反映されている部分も峠ではちゃんと見つかった。急な坂道では、発進で’23モデルの方がワンテンポ早くスピードが乗ってくれる。たしかにこれは下のトルクが勝っていることの証明だ。
’23モデルで大きく変わった動力設計の大部分は、厳しい排ガス規制を受けても、従来の速さや爽快感を一切失わなせいことに注がれた印象だ。
音もパワーも体感的にほぼ同フィール。牙は抜かれず装備面はぐぐっとアップ
’22モデルが予想以上に互角の走りをみせる今回のテスト。ただ、これはあくまで公道での話。これが高回転域をブン回し続けるサーキットに場を移すとしたら、’23モデルの勝利で間違いないだろう。シャシーダイナモで計測されたパワー差は、確実にタイム差として表れる。圧縮比も大きく上がっているので、チューニングによる効果もかなり期待していい。
それにサス交換が認められていないワンメイクレースのグリーンカップなんかだと、追加されたフロントフォークのプリロード調整機能は決定的な差だ。この調整については、標準状態と最大まで強めた状態でのストローク差は実測で1cm。停止状態で車体を前後に揺すってみても、かなり踏ん張るようになるのが分かる。あまり強めすぎると、フロントが沈みこまなくなるぶん旋回力が相対的に下がってしまうおそれがあるものの、ブレーキングでもっと粘れるようになる方が嬉しいというサーキットファンも多いのでは? 峠でも、より自分好みの走りに近づけさせることができるという点で大きなアドバンテージとなるだろう。
またメーターもカラーTFTとなり、従来はなかったスマホ接続機能も追加されるなど、クラス頂点にふさわしい装備となった。このメーターは、新たにラップタイマーの付いたサーキット走行用画面に切り替えることまで可能となっている。
電子制御については、パワーモード2段階&トラクションコントロール3段階+OFFと、機能は従来と同じだが、それぞれ個別に設定する必要があった従来型に対して、「SPORT/ROAD/RAIN/RIDER(任意設定)」と4つのモードに統合されて分かりやすくなった。ちなみにSPORTとROADはトラクションコントロールの効き具合のみが異なり、パワーモード的には同じ「F(フルパワー)」扱いだ。
トータル的に新旧を眺め直してみると、これまで新排出ガス規制に対応してきた様々な車種を体験してきた身としては、排気量はそのままに乗り味を一切スポイルすることなく厳しい規制をクリアしてきただけでも、十分過ぎるほど高い評価を与えたい。動力面で大がかりな設計変更をしていることからも分かるように、性能を下げないようにするだけでも大変だったと思う。特に25Rは4気筒だし、このクラスは規制の影響も大きいからね。
それなのにしっかりと向上させる部分も忘れていないし、規制対応にスマホ接続機能付きのカラーメーターやプリロード調整も加えながら、
車両価格は2万7500円高に抑えてくれた。もう、よく頑張ってくれたの一言だ。’23 ZX-25Rは、着実に商品力を高めて期待を裏切らないマシンに仕上がっていた。
同時に、フィーリングがそのまま継承されてきたことからも分かるように、先代の完成度の高さにもあらためて驚かされた。唯一無二のニーゴー4気筒の爽快感は不変だぞ!
カタログのパワースペック以上に、新型と互角のフィーリングを見せてくれた’22モデル。走りの面ではすでに完成の域に達していた。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ニンジャZX-25R SE/KRT)
通勤からツーリング、サーキット走行まで使えるカウル付き軽二輪スポーツ 日本の道に最適といえるサイズ感や、通勤/通学からツーリングまで使える万能さが軽二輪(126~250cc)の長所。スクーターやレジャ[…]
250ccクラスは16歳から取得可能な“普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は全部で7種類ある。原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制[…]
ラムエア加圧時は49psの4気筒エンジン、オートブリッパー付きクイックシフターも装備 カワサキのニンジャZX-25R SEは、2023年モデルで令和2年排出ガス規制に適合しながら、最高出力&最大トルク[…]
250ccクラスは16歳から取得可能な“普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は全部で7種類ある。原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制[…]
通勤からツーリング、サーキット走行まで使えるカウル付き軽二輪スポーツ 日本の道に最適といえるサイズ感や、通勤/通学からツーリングまで使える万能さが軽二輪(126~250cc)の長所。スクーターやレジャ[…]
最新の関連記事(試乗インプレッション/テスト)
ホンダCBR250RR(2021) 試乗レビュー 全方位にスペックアップした2021年モデル 2020年モデルからの変更箇所は多岐に渡る。 ピストン、ピストンリング、コンロッド、バランサーシャフト、バ[…]
カワサキW800(2022) 試乗レビュー カワサキW800(2022) 概要 ■全長2190 全高1075 軸距1465 シート高790(各mm) 車重226kg ■水冷4スト2気筒SOHC4バルブ[…]
交換するだけで愛車がスポーツバイクにもツーリングバイクにもなる タイヤは、すごい。バイクのパーツで唯一路面に接しており、その接地面積は、たったクレジットカード1枚分と言われる。たったこれだけでバイクを[…]
※この記事は別冊モーターサイクリスト2010年11月号の特集「YAMAHA RZ250伝説」の一部を再構成したものです。 ヤマハ RZ250のエンジン「2ストロークスポーツの純粋なピーキー特性」 ヤマ[…]
従順で力強いエンジンと軽快な旋回性を生む車体 2024年はついに全日本ロードレース選手権で表彰台に立ち、次の目標はもちろん初優勝なのですが、先輩たちから「レースは積み重ねが大事。開幕から優勝狙いではな[…]
人気記事ランキング(全体)
4気筒CBRシリーズの末弟として登場か EICMA 2024が盛況のうちに終了し、各メーカーの2025年モデルが出そろったのち、ホンダが「CBR500R FOUR」なる商標を出願していたことがわかって[…]
インフレの今、価格破壊王のワークマンがまたやってくれた! 春から初夏にかけ、ツーリングのシーズンがやってきた。爽やかな空気を全身に浴びてのライディングは最高だ。しかし…この期間はジメジメ・シトシトの梅[…]
ネオクラシックながら”新しさ”で対抗 ヘリテージやネオクラシックと呼ばれるカテゴリーで、登場以来絶対的な人気を誇るカワサキのZ900RSシリーズ。現代スポーツネイキッドをベースに、名車Z1を絶妙にアレ[…]
実は”ホンダエンジン”時代からの愛車だった マンセルがF1のパドックで乗っていたのは、ホンダのダックス70(CT70)でした。1988年モデルとも、1987モデルとも言われていますが、いずれにしろ当時[…]
◆今回のPRO解説者:以前にはネオクラ車の解説記事もお願いしたバイクデザインのプロフェッショナル。1980年代前半に某社に入社したベテランで、オンロード系をメインに排気量の大小を問わずさまざまな機種を[…]
最新の投稿記事(全体)
二輪事業では、世界6000万台の時代に世界シェア5割を狙う! ホンダが発表した2025年3月期における二輪販売台数は、世界シェア約40%の2057万台。37の国と地域において過去最高を達成したという。[…]
空冷Zと日産のL型エンジンに特化したパムス カワサキのZ1やZ2など空冷Zのオーナー、あるいはファンの方にとってパムスは有名すぎるほどのファクトリーに違いありません。 レース畑だった私(今井伸一朗)で[…]
RZ誕生の契機は「北米から欧州市場への転換」 ──1979年にプロトタイプが公開され、1980/1981年から発売が始まったRZ250/350は、当時としては非常にエポックメイキングな車両だった。まず[…]
構造もデザインも新設計! アールズ・ギアでは、すでにホンダGB350/S用のスリップオンマフラーを販売しているが、よりクラシックテイストのGB350Cがラインナップに追加されたことを受け、C専用のマフ[…]
定期的に開催するオフロードコースでのオフロードトレーニング 2023年のデビュー以来、大好評を博しているBMW R1300GS。2024年には待望の”アドベンチャー”も登場し、その圧倒的な存在感とパフ[…]