パワースライドを楽しむ余裕を作る”G”モード〈スズキ Vストローム800DE 海外試乗インプレッション〉
スズキは’14年登場のVストローム1000(現在の1050)で初めて市販車にトラクションコントロールシステムを登用。モトGPマシン由来だというこのトラコンの登場はかなり衝撃的だった。安全装置の意味合いが強かったトラコンの世界に”電子制御で速く走る”という新しい価値観を持ち込んだのだ。
このトラコン、制御が信用できるようになるとABSにモノを言わせてコーナーの奥で超絶減速。そこから無理矢理バイクを寝かし、クリッピングポイントでスロットルをガバ開けすればトラコンが介入して、フロントアップもスリップダウンも起こさずコーナーの出口に向けて最大加速する…なんてトンデモ機構だったが、この”Gモード”はそのオフロード版とも言うべきトラコンである。
コーナーでエイヤッとバイクを寝かし、トラコンを信じてスロットルをガバ開けすれば”スリップダウンしない程度に”パワースライドが楽しめる…という異次元の制御を行ってくれるのだ。これが剛性が高めな車体とのマッチングがよくスライドコントロールしやすく感じる。
スライドするマシンの挙動に慣れてくればスロットルオフによるバックトルクでリヤタイヤを振り出し、侵入スライド。そこからスロットルを開けてパワースライドに移行する…なんて離れ業も可能。まぁ、調子に乗ってそんな走りを右へ左へ試していたら、コーナーとは逆向きにスライドしてしまいコースアウトしてしまったことはここだけの話だ。
Vストロームだから当然ロードの走りもイイッ!!〈スズキ Vストローム800DE 海外試乗インプレッション〉
閑話休題。それほどまでにダートが楽しいVストローム800DEだが、予想外なことにオンロード性能も高かったからさらに驚かされた。
フロント21インチホイールのアドベンチャーは、ダートで踏ん張るしなやかな特性を求めるあまり、車体剛性を落としがちだ。これこそがオフロードバイクでロードセクションを攻め込んだ時に感じる不安定感の正体だが、Vストローム800DEは持ち前のやや剛性高めの車体のおかげでロードセクションもきっちり攻め込めるようになっている。
さらにリヤにアドベンチャーバイクで主流の18インチホイールではなく、17インチホイールを入れたことによってロードセクションでの旋回性能がアップ。またタイヤに関しても舗装路で安定性が増すようなパターンを採用したことで気持ちよくコーナーを駆け抜けられるのだ。
Vストロームシリーズには、元来舗装路での性能に重きをおいたモデルが多く、それこそがアイデンティティとも言えるのだが、フロント21インチのVストローム800DEであってもその方向性は全くブレていない。
アドベンチャーバイクとは、オフロード性能、高速巡航性能、そして旅の相棒としての快適性の3つの要素のバランスで構成される乗り物だ。オフロード性能だけでも単なるオフ車になってしまうし、ロード性能だけでも未舗装路を”なんとか通過できる”程度のアドベンできない乗り物になってしまう。その点、Vストローム800DEは、ワインディングも未舗装路も、楽しいどころか相当攻め込める”DE”。まさに”デュアルエクスプローラー”の名に恥じないマシンに仕上がっている。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(試乗インプレッション/テスト)
クルーザーベースなのに意外にスポーツ性高し! ロイヤルエンフィールドの日本国内ラインナップには、このショットガン650のほかに648ccの空冷パラレルツインエンジンを搭載するモデルが3機種ある。カフェ[…]
シリーズの中心的な存在、語り継がれる名車の予感 昨年3月に発売されたVストローム800DEと、その7か月後に登場した同800は、ともにミドルネイキッドのGSX-8Sとプラットフォームを共有している。 […]
最高出力350psを誇るエンジンはV型8気筒4952cc! まずは今回、ホンダから発売された新型船外機”BF350”の搭載エンジンについて解説しよう。 まずエンジン自体の種類はV型8気筒だ。ホンダマリ[…]
XLCRとはあらゆる点で違う ブラックに統一された精悍な車体の中で、フューエルタンクに貼られたバー&シールドのエンブレムがゴールドで彩られ、誇らしげに煌めいている。 クォーターサイズのコンパクトなフェ[…]
グロムとは違うのだよ、このモンキー125は! 2018年7月、オールドウイングシリーズ第1弾として、スーパーカブC125よりも2か月だけ早く発表&発売されたモンキー125。思えばこのモンキー125とス[…]
人気記事ランキング(全体)
4気筒CBRシリーズの末弟として登場か EICMA 2024が盛況のうちに終了し、各メーカーの2025年モデルが出そろったのち、ホンダが「CBR500R FOUR」なる商標を出願していたことが判明した[…]
一度掴んだ税金は離さない! というお役所論理は、もういいでしょう 12月20日に与党(自民党と公明党)が取りまとめた「令和7年度税制改正大綱」の「令和7年度税制改正大綱の基本的な考え」の3ページ目に「[…]
2025年こそ直4のヘリテイジネイキッドに期待! カワサキの躍進が著しい。2023年にはEVやハイブリッド、そして2024年には待望のW230&メグロS1が市販化。ひと通り大きな峠を超えた。となれば、[…]
CB750/900Fと並んで進んでいた、ホンダが大攻勢に賭けた初の新エンジン! どのクルマメーカーもお手上げだったマスキー法という排気ガス規制をクリアして、ホンダが世界に認められたCVCCエンジン開発[…]
チェーンの張り調整が必要なのは、チェーンが徐々に伸びるからだけど…… バイクのチェーンのメンテナンスといえば「清掃・潤滑」と「張り(あそび)のチェック」。まず、チェーンを長持ちさせるには清掃や潤滑をマ[…]
最新の投稿記事(全体)
1969年の袋井テストコース完成が英国車に負けないハンドリングを生んだ ヤマハ初の4サイクルスポーツ車といえば1970年登場のヤマハスポーツ「650 XS-1」です。XS登場の約1年前にデビューしたC[…]
大型二輪免許は18歳から取得可能! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外には“AT限定”免許も存在する[…]
「もしも出先でヘルメットを盗難されたら、自宅までどうやって帰るのだろう」バイクに乗っていると、こうした疑問も浮かぶのではないでしょうか。そもそもヘルメット窃盗犯は、なぜ人が使った中古のヘルメットを狙う[…]
さすがはヨシムラ、参列者が超豪華! 1954年に創業し、今年で70周年という節目を迎えたヨシムラ。その歴史は常に“挑戦”とともにあった。巨大メーカーや乗っ取り、工場火災といった、目の前に立ちはだかる強[…]
2&4ストロークハイブリッドV3は実質4ストロークV4と同効率! 数々の伝説を残してきたNSR500が2001年シーズンで最後の年を迎えた。これで2ストローク全盛に完全な終止符が打たれたわけだ。対する[…]