
ロイヤルエンフィールドのミドルクルーザー「スーパーメテオ650」が東京モーターサイクルショーで国内初披露された。国内でヒットしているメテオ350の上級版とあって、注目を集める1台だ。ショーに合わせて来日したデザイナーの話を織り交ぜつつ、解説したい。
●文:ヤングマシン編集部(沼尾宏明) ●写真:編集部 ●外部リンク::ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
レブル500を超えるレトロ感とサイズで堂々登場へ
1901年に創業し、古きよき英国車の薫りを今に伝えるインドメーカーのロイヤルエンフィールド。同社が久々に送り込むミドルクルーザーが「スーパーメテオ650」だ。
国内で人気のメテオ350の上級モデルで、独自設定のSOHC4バルブ648cc空冷パラツインを専用フレームに搭載。脚は同社初のショーワ製SFF-BPで固める。ホンダのレブル500を上回るレトロ感や堂々とした車格、質感の高い仕上がりが魅力だ。
優雅なシルエットと高い質感が見事なスーパーメテオ650。排気量、サイズとも同社の最上級モデルに君臨する。価格は未定で、6月頃発売予定。
足まわりも充実。同社初となるショーワ製の倒立フォーク「SFF-BP」を採用。LEDのヘッドライトとテールランプも同社で初めての試みだ。
アナログ+液晶メーターに加え、スマホと連動できる簡易ナビ「トリッパー」を右側に標準装備。メテオ350やヒマラヤにも装着されていたが、半導体不足の影響で、現在は非装着となっていた。
堂々とした車格で、身長177cm&67kgのライダーでもゆったり。ステップはかなり前方ながら、車体がホールドしやすい印象。足着きはベッタリで良好だ。
「全体のシルエットと質感にこだわった、本物のクルーザーです」
MCショーに合わせ、来日したロイヤルエンフィールドのデザイナー、アドリアン・セラーズ氏に話を伺った。これまでロイヤルエンフィールドでは将来向けのアドバンスドデザインを担当し、車両としてデザインを手掛けるのはスーパーメテオ650が初めてという。
アメリカ出身のAdrian Sellers氏。’16年からロイヤルエンフィールドに在籍し、以前はUSヤマハなどでVスター、ボルトなどを手掛けてきた人物だ。
──デザインでポイントとなる点を教えて下さい。
「ポイントは2つあります。まず1つは、リヤタイヤの位置です。この位置によって全体のプロポーションが変わってしまうので、とてもデザインする際に重要です。最初にデザインスケッチを書いた時の「いいな」と思ったイメージを大切に開発しました。
2つ目は仕上げです。ロイヤルエンフィールドのラインナップで車格的にトップモデルとなるので、金属パーツの使用をはじめ、メッキなど各部の仕上げ、塗装など全体的に造りが凄く綺麗です。
例えば、スイッチボックスは同社初の鋳造アルミ製で、鉄製フェンダーも採用しました。ロイヤルエンフィールドの従来モデルに比べて一回りも二回りもレベルの高い造りをしています。開発の際は「オーセンティック(本物、正統派)クルーザー」というキーワードをよく使いました。(セラーズ氏)」
──車格が大きく見えますが、これは狙い通り?
「競合の650~800ccクラスと比べて特別大きいわけではありませんが、所有する方にとっては、大きく見える方が満足度は上がるので、そういったデザインをしています。ただし実際に乗ってみるとコンパクトというバランスを重視しました。凄く自信を持って操れて、取り回しや倒し込みも簡単です。」
──エンジンは、既存のINT650やコンチネンタルGT650から変更していますか?
「様々な部分が変わっていますが、まず大きいのは吸排気系です。これに合わせてエンジンのセッティングを変えてします。あとはワイドなリヤタイヤに合わせてフロントスプロケットの位置を変更しました(※注 INT650とコンチネンタルGT650はリヤタイヤ130/70-18、スーパーメテオ650は150/80-16とワイドになっている)。
クルーザーとして、ある程度リヤタイヤを太くしないとバランスが取れませんからね」
セラーズ氏の話すとおり、リヤタイヤを軸に均整の取れたフォルム。タイヤもインドメーカーのシアットと共同開発した専用品だ。
270度クランクの648cc空冷SOHC4バルブ並列2気筒を搭載。INT650やコンチネンタルGT650と同系ながら、吸排気系やエンジンマウントを変更し、独自設定としている。
アルミ鋳造のスイッチボックス。細部まで手を抜かず、質感の高い造りだ。
無骨なカスタムも注目、目指したのはロックな’70~’80s公道レーサー
ブースでは、カスタムバイク「Royal Enfield-改」も注目を浴びた。これは、名古屋を拠点とするカスタムファクトリー「アンブカスタムモータース」とのコラボによって生まれた1台で、コンチネンタルGT650がベース。空冷4スト並列2気筒エンジンを採用したカフェレーサーが、フルカウルのスポーツモデルへと変貌している。
カスタムバイク「Royal Enfield-改」は無骨でロックなイメージ。三つ又やフレーム、カーボン製カウルは全て専用設計だ。Fフォークは、’80年代レーサーに多いφ38mm径のKAYABA製。
本作を手掛けたセラーズ氏とアンブカスタムモータースの藤田浩一氏(写真左)。アンブは愛知県名古屋市に店を構え、ハーレーのストリートカフェなどで有名だ。
──こちらのコンセプトは?
「名古屋のアンブカスタムモータースの藤田浩一さんと一緒に手掛けたのですが、昔ながらの純粋なレーサーの形を取り入れました。’70~’80年代のレーサーをイメージしており、オフセットしたヘッドライトは耐久レーサーがモチーフです。(セラーズ氏)」
──公道走行も考えている?
「目的としてはサーキット走行です。公道も考慮していますが、実際登録は難しいと思います(笑)。元々は藤田さんが「ショーで展示するバイクって、あまりかっこいいと思っていない」という考えがあって、「自分が乗って街を走れるレーサー」というのがコンセプトです。藤田さんは、音楽のロックやパンクが好きで、そういう世界観も入っています」
──カスタムで最も苦労したポイントは?
「エキゾーストのとぐろと、切断して作り直した燃料タンク下のメインフレームですね。また、燃料タンクはアルミ鋼板から手で叩き出しました。わざと手で叩いた感じを残してします」
──今回のカスタム車は、ロイヤルエンフィールドの公式カスタムプログラム=Custom Worldの一環。このプログラムに日本で初めて参加した車両となる。今後もこうした入魂のカスタムが発表されることに期待したい。
前後とも超スリム。見事なまでに流線形を描く独自のカウルが美しい。ヘッドライトは’70~’80年代の耐久レーサーをイメージし、オフセットしている。
スリムな燃料タンクは、アルミ鋼鈑から叩き出して成型。あえて手で叩いた表情を残している。
メインフレームはオリジナル。燃料タンクに合わせた形状で、往年の耐久レーサーらしくパイプ製ダブルクレードルとしている。
ミニマムな装備のコクピットはまさにレーサー。タコメーターとセパハンを採用する。
ツインショックの奥に見えるナンバープレートは冗談でつくったもので「不合格」の文字が(笑)。
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