ライダーが増え、バイクが売れているいま、その背後にある不安や不満を払しょくするために各界のトップはどう考えているのか。EWCに継続参戦するヨシムラの代表である吉村不二雄さんに、今季のレースへの取り組みに加え、来るべきEV時代をエンジンチューニングメーカーとしてどう考えているかをお聞きした。
●取材/文:ヤングマシン編集部(Nom) ●写真:ヨシムラジャパン/Nom/編集部
’23年はEWCの王座奪回が目標、鈴鹿8耐は日本人ライダーを起用したい
昨年7月、数か月前から噂されていたモトGPからの撤退を表明したスズキだが、同時にFIM世界耐久選手権(以下EWC)へのワークス参戦も終了することを発表。日本のレースファンの間には、’21年EWCチャンピオンチームである「ヨシムラSERT Motul」が世界を舞台に活躍する姿が見られなくなるという大きな衝撃が走った。
しかし、年も押し迫った昨年の12月16日、ヨシムラが’23年もスズキの支援を受けてEWCに継続参戦することを発表し、今度は多くのファンから喜びの声が上がった。
撤退表明から一転しての継続参戦、まずは事の顛末をお聞きした。
「(継続参戦)することは確実だったんですよ。というのは、レース活動を止めるとなるとスズキの販売店さんが困ってしまうんじゃないですかね。特に海外の販売店さんは。レースをやらないで、どうやってバイクを売ったらいいんですか、ブランドイメージはどうするんですかと。そのあたりは、日本と海外で考え方が違う部分がありますね」
ヨシムラのウェブサイトには、チームディレクターの加藤陽平さんが、スズキと協議を重ねて支援を受けられることが決定し、スズキの代表として継続参戦することが決まったと書かれている。その背後には、世界中のスズキ販売店の後押しがあったのだろう。
「みなさん継続参戦することをとても喜んでくれましたし、当然ですよねと言う方もいました。日本って地政学的に極東にあって、ヨーロッパの情報がなかなか入ってこない。ヨーロッパの国の間だけでいろいろなことが決められちゃうと、それがインターナショナルルールになって、日本は置いてきぼりになる恐れがある。ですから、自分たちもそういう場所にいないといけないんです。
’23年は、ライダーがザビエル・シメオンからエティエンヌ・マッソンに代わりますが、タイヤのサポートもBSさんですし、体制は基本的にこれまでと変わりません。昨年、問題になった点を潰しながらチャンピオン奪回を目指してやっていきます。シリーズ戦としてもっとも重要なのはボルドール24時間レースですね。そして、ヨシムラとしてはやはり鈴鹿8時間耐久レース。難しさが違います。鈴鹿8耐は現役のGPライダーが出たいというほど格式の高いレースですからね」
EWC、鈴鹿8耐に加え、昨年は元スズキのライダーである加賀山就臣さんがチームマネージャーを務め、ライダーに渡辺一樹選手を起用した「ヨシムラ・スズキ・ライドウイン」チームで全日本JSBクラスに参戦したが、今年はどうなるのか。
「ご存じのように、渡辺選手がチームを離れることになりましたが、加賀山さんとタッグを組む体制で継続していきます。渡辺選手はとてもいいライダーで5年間活躍してくれましたが、5年も経つとチームもライダーもお互いにどうしても慣れが出て、緊張感が薄れていく。だから、モトGPでもライダーの行き来が激しいじゃないですか。目的は優勝ですから、そのためには環境を変える、マシンを代える、ライダーを代えるのが当り前なんです(取材後、新ライダーは亀井雄大と発表された)。それと、8耐も体制はまだ未定ですが、日本人ライダーを走らせたいと思っています」
この企画の第2回に登場したMFJの鈴木会長が言ったように、レースはバイクライフを楽しむうえでの重要なコンテンツ。そのレースを盛り上げてきたのは間違いなくヨシムラであり、ヨシムラが強く速ければレースは盛り上がるのだ。今シーズンも世界で、そして日本でのヨシムラチームの活躍を大いに期待したい。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
"ゼロエミッション東京"実現に向け、非ガソリン化を推進 多くのライダーが知っての通り、東京都は'50年の世界のCO2排出量実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現を目指し、'30年までに温室効[…]
約500万人が便利に利用している原付一種の存続を強く訴えていく 全国オートバイ協同組合連合会(以下AJ)は、日本全国の約1600社のバイクショップが加盟する都道府県単位の協同組合で組織される団体で、大[…]
MFJはレースのためだけの組織ではなくツーリングも事業内容のひとつなんです MFJはレースのための組織で、一般ライダーとは接点がないように思っている方が多いと思うが、事業案内には「ツーリング」という一[…]
高速料金問題は自民党PTの1丁目1番地。12年かかって一歩進んだと思います 2022年4月3日からスタートした“ETC二輪車定率割引”。土日祝日限定/事前に専用サイトで自分のETC機器を登録/片道10[…]
保有台数500万台のユーザーが今もいる! 4月4日に投稿した「令和5年度の課題①高速道路料金」に続く課題②としてお届けするのは、「原付」問題です。 手軽な乗り物として1980年代には年間200万台に迫[…]
最新の関連記事(ヨシムラ)
保険料500円でヨシムラ車、乗り放題ッ!! ヨシムラファンにとって秋の定例イベントとなっている「ヨシムラミーティング」。ヨシムラが那須モータースポーツランドでイベントを行ったのは2014年の60周年記[…]
ポップ吉村は優しくて冗談好きのおじいちゃんだった ヨシムラの新社長に今年の3月に就任した加藤陽平は、ポップ吉村(以下ポップ)の次女の由美子(故人)と加藤昇平(レーシングライダーでテスト中の事故で死去)[…]
ホンダ研究所チームを打ち負かしたCB77の相棒マシン 2024 FIM世界耐久選手権第3戦 “コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第45回大会は、ヨシムラジャパンにとって歴史的な大会になった。……[…]
ヨシムラはライダー2名体制で行く 6月22日土曜日、前日に梅雨入りしたとは思えない快晴の空の下、新東名高速道路NEOPASA清水PAで61回目のヨシムラ・ツーリングブレイクタイムが開催された。 今回は[…]
欧州で公開されたオフィシャルショットを入手!! おかえりスズキ!! おかえり佐原さん!! そんな声が木霊した東京モーターサイクルショー、スズキブースのプレスカンファレンスでサプライズ発表された、スズキ[…]
人気記事ランキング(全体)
4気筒CBRシリーズの末弟として登場か EICMA 2024が盛況のうちに終了し、各メーカーの2025年モデルが出そろったのち、ホンダが「CBR500R FOUR」なる商標を出願していたことがわかった[…]
125ccスクーターは16歳から取得可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限[…]
電熱インナートップス ジャージタイプで使いやすいインナージャケット EK-106 ポリエステルのジャージ生地を採用した、ふだん使いをしても違和感のないインナージャケット。38度/44度/54度と、3段[…]
第1位:X-Fifteen[SHOEI] 2024年10月時点での1位は、SHOEIのスポーツモデル「X-Fifteen」。東雲店ではスポーツモデルが人気とのことで「とにかく一番いいモデルが欲しい」と[…]
コンパクトな車体に味わいのエンジンを搭載 カワサキの新型モデル「W230」と「メグロS1」がついに正式発表! ジャパンモビリティショー2023に参考出品されてから約1年、W230は白と青の2色、メグロ[…]
最新の投稿記事(全体)
Vストローム250SX[59万1800円] vs Vストローム250[66万8800円] 2023年8月に発売された、スズキ自慢の油冷単気筒エンジンを搭載したアドベンチャーモデル「Vストローム250S[…]
126~250ccスクーターは16歳から取得可能な“AT限定普通二輪免許”で運転できる 250ccクラス(軽二輪)のスクーターを運転できるのは「AT限定普通二輪免許」もしくは「普通二輪免許」以上だ。 […]
一般人でも許される現行犯逮捕とは? 「逮捕」とは、犯罪の容疑がある人の身柄を強制的に拘束する手続きです。 原則として、事前に裁判官の審査を受けて許可を取り、令状の発付を得てからでなければ、たとえ警察で[…]
バイクのスピード感をイメージさせる象徴的なグラフィックモデル登場 ネオテック3のグラフィックモデル第3弾となるアンセムは、バイクを走らせているときに感じる風を思わせる、スピード感ある模様が特徴だ。ブラ[…]
バイクのパーツと“夜行”をポップアートに描いたホットでクールなグラフィックモデル Z-8 ヤギョウは、ネオンカラーなどの極彩色で彩られた現代ポップアートなグラフィックが特徴だ。グラフィックにはタイヤと[…]