BMWが誇るスーパーバイクマシン、S1000RRが刷新。ホモロゲーションモデルM1000RRに迫るトップパフォーマンスとともに、最新の電子制御がさらにアップデートされて搭載。まさに死角なしのハイスペックマシンとなっていた。本記事では、スペインで行われた試乗会で体験したその性能についてレポートする。
●文:ヤングマシン編集部(鈴木大五郎) ●外部リンク:BMW
‘22 BMW S1000RR【進化したS1000RRをスペインにて体感】
スペイン・アルメリアサーキットのパドックに整然と並べられたマシンにはブリヂストン製スリックタイヤが装着され、タイヤウォーマーがしっかり巻かれている。
コース上では世界耐久選手権に参戦するBMWのワークスチームが甲高いエキゾーストノートを響かせながら凄まじい勢いでラップを重ねているが、我々ジャーナリスト陣もその中に入っていかねばならない。
否が応でも緊張するシチュエーションからの走り出しであるが、マシンの印象はいきなりポジティブなもので拍子抜けするほどであった。
’09年のデビュー以来初となるフルモデルチェンジを行った’19年に比べれば、マイナーチェンジとも言える今回の変更内容。それでも確実に、着実にレベルアップしてきたのがいかにもBMWらしい。
もともとS1000RRに課された命題はスーパーバイクでの栄冠だった。しかし、M1000RRがラインナップに加わったことで、ハイパフォーマンスながらスペックだけに頼らないマシンに仕上げることが可能となった面もあるかもしれない。
STD(といっても、BMWのラインナップにはかなり多くの仕様違いがあり、どれが本来のSTDと言えるのか分かりにくいのであるが)からカーボンホイールに換装、ミラーやタンデムステップが外されバックステップが装着されたテスト車であるが、なにより目を引くのは新たに装着されたウイングレットだろう。
もちろん、単純に羽だけが装着された訳ではなく、フロントフェアリングはすべてニューデザインとなり、シートカウルも変更されている。やや腰高のマシンに跨がり、ピットロードを走り出す。
BMW S1000RR 試乗インプレッション:ワークスチームと一緒に走らされる…が怖くない!
アクセル操作に対するマシンの反応はリニアで軽いものの、唐突感はない。ライディングモードはデフォルトの4つに加え、任意で好みのセッティングを作ることができるレースプロモードが3つ。いくつかのセットアップをエンジニアに作ってもらい(自分でも簡単に設定可能だ)途中で違いを確認していく。
パワー特性の違いははっきりと認識出来るものだが、高回転まで回せばどれも底なしとも思えるほどパワフルで、バックストレッチではメーター読み290km/hを超える勢いだ。
ギアは5速でまだまだ吹け上がりは衰えないものの、ブレーキングポイントに到達してしまうので最高速をチェックすることは出来ない。
しかし、そんなハイスピード域であってもフラフラとフロントタイヤが離陸してしまいそうな兆候もない。BMWらしい安定性とも言えるかもしれないが、これはウイングレットの効果といえるものだろう。
そこから一気にハードブレーキングに入る。Mキャリパーを標準装備とするブレーキシステムはハイスピードからの減速に自信を与えてくれる。発熱によるフィーリングの変化が少ないこともサーキット走行における大きなメリットだ。
速度調整をしながらターンイン。絶大なるグリップ力を逃さないようにフロントを押さえながら倒し込んでいくのであるが、想像以上によく曲がる。フレームを改良し、剛性バランスを見直したことが功を奏しているようだ。
これはフルモデルチェンジされてからのセールスポイントでもあったが、そのキャラクターにより磨きがかけられたということだろう。
BMW S1000RR 試乗インプレッション:次世代の電子制御
しかし、これだけハイパワーでハイパフォーマンスなのに乗りやすいとは何ごとであろうか?
そこには、やはり最新の電子制御が大きな役割を果たしている。
ABSプロはさらに進化し、スリックタイヤ対応となる設定も追加。量産市販モデルとして初となるステアリングアングルセンサーにより、進入ドリフト状態を安定してキープする機能まである。このようなトライすることが難しい走りを安全にマスターすることをサポートしてくれる機能は有意義といえるだろう。
エンジンブレーキの強さも調整可能。ある程度強めのほうが旋回性は高くなる傾向があるものの、高回転でのバックトルクによってリヤが抜けてしまうような危険性もある。
スリッパークラッチ側だけでなく、エンジン側のコントロールを併用して制御してくれている安心感がライディングをより積極的にしてくれるのだ。
立ち上がりでのトラクションコントロールもアップデートされ、より制御が細かくなっている。最弱にすれば、絶妙なスライドアングルで放たれた弓矢のようにダッシュしていく。
スムーズで自分のコントロールが上手くなったかのような介入具合に驚かされる…(介入などしていないと感じるものの、データ上で確認)これはM1000RRをテストした時と似たようなスムーズなフィーリングでもあった。
今回の変更内容は、どちらかといえばエキスパート向けといえるものかもしれない。プラスαで攻め込んだときに恩恵をより受ける制御系。しかし、それと同時に全方位に妥協のないパフォーマンスをあらためて示してくれた。
フルモデルチェンジの際には従来モデルよりも尖ったキャラクターに変貌したように感じさせたが、ハイパフォーマンスさはそのままに、扱いやすさもさらに盛り込まれたマシンは、まさにスーパーバイクの指標となる存在になっていたのだ。
BMW S1000RR ディテール写真解説
※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(BMWモトラッド)
世界屈指のバイクを味わい尽くすには、日本最高峰の鈴鹿サーキットをおいてほかにない 近畿/東海圏でBMWディーラーを展開するミツオカグループ(光岡自動車)。店舗ごとにさまざまなイベントを随時開催している[…]
ブランド・ストア『FREUDE by BMW』内「CAFÉ & BAR B」にて10月28日まで ビー・エム・ダブリュー株式会社は、本日10月3日(木)から10月28日(月)の期間[…]
過去最大人数が白馬村に大集結! 仲間と楽しむ最高の2daysイベント 美しい北アルプス連山が特徴的な長野県白馬村。信州屈指の絶景スポットとして有名な地域だが、BMWオーナーにとっては聖地とも言える特別[…]
なぜこのタイミングでR1250GSアドベンチャー? 2024年春、ディーラー店頭にはR1300GSが並び、R1300GSアドベンチャーの正式発表を今か今かと待っている中、あえてR1250GSアドベンチ[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
最新の関連記事(新型スーパースポーツ)
兵庫県西明石発、エンジニアリングの宝石がここに まだまだ続くよ北米で! 国内では2021年モデルの予約受注をもって販売終了が宣言されたニンジャH2/H2カーボン、およびクローズドコース専用のモンスター[…]
カテゴリーを独走する400スーパースポーツに新色 北米では出力未発表となっているが、日本で販売されるフルパワー仕様では最高出力77ps/14500rpm、ラムエア加圧時には驚異の80ps/14500r[…]
ライダーを様々な驚きで包み込む、パニガーレV4S 5速、270km/hからフルブレーキングしながら2速までシフトダウン。驚くほどの減速率でNEWパニガーレV4Sは、クリッピングポイントへと向かっていく[…]
欧州仕様に準じた仕様で新型フォーク、ウイングレット、ブレンボキャリパーなどを新採用したR1 2024年9月19日に欧州で発表された「R1 RACE」に続き、日本国内でもサーキット走行専用モデルの新型「[…]
R1とR1Mで変更内容は異なる ファイナルエディションが登場しそうとか、スーパーバイク世界選手権でのパフォーマンス向上のためモデルチェンジするのではないかなどさまざまな情報(憶測?)が飛び交っていた「[…]
人気記事ランキング(全体)
日本で登場したときの想定価格は60万円台か カワサキはタイに続き北米でも「W230}を発表。空冷233cc単気筒エンジンはKLX230のものをベースとしているが、レトロモデルにふさわしいパワー特性と外[…]
1441cc、自然吸気のモンスターは北米で健在! かつてZZ-R1100とCBR1100XXの対決を軸に発展し、ハヤブサやニンジャZX-12Rの登場からのちにメガスポーツと呼ばれたカテゴリーがある。現[…]
通勤エクスプレスには低価格も重要項目! 日常ユースに最適で、通勤/通学やちょっとした買い物、なんならツーリングも使えるのが原付二種(51~125cc)スクーター。AT小型限定普通二輪免許で運転できる気[…]
車検のある機種は熊本製作所で作る? 新開発の400cc4気筒エンジンを搭載し、CB400スーパーフォアの後継機として、開発中のホンダ新型CB400。WEBヤングマシンでの注目度もとても高く、2025年[…]
国内導入予定はないけれど……のZ125プロ カワサキは北米で2025年モデルを続けざまに発表している。ここで紹介するZ125プロは、金色に輝く倒立フロントフォークに加えて2025年モデルの濃緑にはゴー[…]
最新の記事
- 【動画インプレ】ヤマハ XSR125vsホンダ モンキー125 原付二種MT異種格闘技戦?! 同時に乗り比べると…アレもコレも全然違う!!
- 【SCOOP特別編】ホンダ新型CB400は…こうなる!! プロがその姿を大胆予想〈②エンジン&車体編〉
- 今が見頃!一生に一度は絶対に見たい500万本! 曼珠沙華群生地〜巾着田(埼玉県日高市)へ行ってみた
- カワサキ新型モデル「ニンジャ1100SX」登場! 排気量アップで新生、ブレンボ&オーリンズのSEも同時デビュー
- 黒玉虫とグリーンボール! カワサキ「Z650RS」の2025年もモデルが10月1日発売
- 1
- 2