【復刻記事】上位機種に匹敵する動力性能がある?

小さなスーパーバイク選手権!?『手の内にある超絶』をもう一度[4気筒250cc vs 2気筒320cc #03]

前回までのホンダ同士のニーゴー対決では、予想通りというか予想以上の差で4気筒パワーが炸裂した。ならば、禁断の排気量アップで勝負に挑めばどうなる!? かつて4気筒は750ccまで、2気筒は1000ccまでとされていたスーパーバイク世界選手権になぞらえ、ヤマハFZR250RとYZF-R3が対決する!


●まとめ:伊丹孝裕 ●写真:真弓悟史

『手の内にある超絶』をもう一度:第1回 第2回 第3回 第4回 第5回

気筒数か、排気量か? 小さなSBKが開幕!!

時代が違うとはいえ、排気量が同じニーゴーなら、そりゃあ気筒数が多い方が有利でしょ。出来レースにもほどがある……という批判をかわすべく、次なる戦いとして用意したのが、1990年型のFZR250Rと最新のYZF-R3という新旧ヤマハ対決である。

そう、ご存じの通り、R3は2気筒ながら320ccの排気量を持つR25の強化バージョンだ。高回転型の4気筒と、排気量を拡大したトルキーな2気筒との対決は、さながら小さな世界スーパーバイク選手権である。

リアルな戦いでは、排気量に勝る2気筒のドゥカティが国産4気筒勢を蹴散らす場面が多かった。果たしてこのクラスでも同じことが起こるのか? ホンダ対決の時と同様に、0-1000m加速のタイムを計測した結果はグラフに示した通りだ。

ヤマハ FZR250R(4気筒250cc・1990) × YZF-R3(2気筒320cc・2019)

格上にも喰らいつける!

いや、実にいい戦いだった。スタートから100km/hまでの加速ではR3が前に出るも徐々にFZRが追い上げて逆転。そのまま振り切るかと思いきや、R3もねばりにねばり、1000m通過時点でのタイム差はわずか0.6秒ほどだった。排気量アップに勝るチューニングはないと言われるが、それぞれの特性を存分に活かした、見ごたえのある勝負で盛り上がった。

ただし、冷静に考えてみるとFZR250は70ccも排気量が少ないだけでなく、29年も前のモデルである。それで勝ってしまったのだから、やはり当時のマシンの本気度には驚かされる。

「パワーで車速をゴリゴリと押し上げるのがホンダで、ヤマハは洗練されていてスムーズに回り切る。いつの時代もそういうイメージだけど、この頃のニーゴーもやっぱりそうだった、とあらためて実感できた。クラッチをいたわりながらの走行だったにもかかわらず、R3に勝てたという事実にちょっとした凄みを感じる。タイム差はわずかながら、スピード感やパワー感はまったく違い、レーシングマシンを思わせるダイナミックなフィーリングが心地よかった。対するR3はトルクに頼れるから断然楽。CBR-RR対決以上にそれぞれのキャラクターが立っていて楽しかったね」と丸山は語る。

「あまり高回転まで引っ張るよりも、トルクのピークを逃がさないように早めにシフトアップすれば、R3のエンジンの特性は活かせますね。でも爽快なのはやっぱりFZRの4気筒。ホンダよりパワーの発生回転は低いものの、バイブレーションがほとんどなく、上質なマシンに乗っている感覚が強い」とは伊丹。ニーゴー4気筒の底力が見えた対決だった。

ヤマハ FZR250R(4気筒250cc・1990) × YZF-R3(2気筒320cc・2019)

0-1000m加速:発進でつまづくが伸びで上回る

トルクに勝り、その発生回転数も低いR3はクラッチミートが楽なことも加わって、鋭いスタートダッシュを披露。車重はFZRより重いがそれを相殺するだけ力強さで400m付近までならリードすることが可能だ。ただし、ギヤが上がっていくとFZRのパワーが逆転。1000mラインを超えてもまだジワジワと車速が上がっていく、底知れない伸びしろが印象的なエンジンだった。

トルクに勝るYZF-R3がスタートダッシュを決めるが……。

出力&トルク:極端に異なる出力特性

ホンダ同士の比較はパワーもトルクもピークの発生回転が異なるだけで、カーブ特性自体は似ていた。ところがヤマハ同士はまったく違い、R3は低中回転域に特化。トルクがいきなりドンと発生し、それが鋭く、力強いスタートを支えていることが分かる。

’80年代を謳歌したテスターふたりはやはりニーゴー4気筒がお気に入り?

4気筒はクラッチミートの回転数があまりに高く、テスターも最初はとまどい気味だったが徐々に昔の感覚を取り戻していった。

スペックでFZR250RとYZF-R3を比較!

車名1990 ヤマハFZR250R2019 ヤマハYZF-R3 ABS
全長×全幅×全高1990×685×1100mm2090×730×1140mm
軸距1375mm1390mm
シート高735mm790mm
車重146kg(乾燥)170kg(装備)
エンジン型式水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ
総排気量249cc320cc
内径×行程48×34.5mm68×44.1mm
圧縮比12:111.2:1
最高出力45ps/16000rpm42ps/10750rpm
最大トルク2.5kg-m/12000rpm3.0kg-m/9000rpm
変速機常時噛合式6段リターン
燃料タンク容量14L14L
タイヤサイズ前100/80-17110/70R17
タイヤサイズ後130/70-17140/70R17
ブレーキ前油圧式Wディスク油圧式ディスク
ブレーキ後油圧式ディスク
乗車定員2名
価格59万9000円(1990年当時)67万5000円(2019年当時)
Specifications ヤマハFZR250R(1990) & YZF-R3(2019)

パワーチェック&車両協力(FZR):モトアップ

JSB1000に参戦する「テルルMotoUPレーシング」の母体ショップで、最新SSを得意としつつ、広い店内には’80~’90年代レプリカがズラリと並ぶ。今回はFZR(販売済)の借用に加え、取材車両4台のパワーチェックもお願いした。

モトアップ■埼玉県さいたま市岩槻区加倉4-25 TEL:048-812-8040 https://moto-up.com

車両協力(MC22):Iさん

エンジン絶好調のMC22を借用。以前は写真の後期型MC22(40ps仕様)に乗っていたが、1年ほど前に今の前期型に乗り換え。足着きがよく乗りやすいとお気に入りで、旦那さんのNSRとツーリングやサーキット走行を楽しんでいる。

GPS計測器:デジスパイスⅢ

加速データの計測はおなじみ、超小型GPSロガーのデジスパイスⅢ。今回は中間加速の速度を正確に把握するため、速度を表示できるスマホアプリ「DigSpice SPEED」も併用。計測には代表の田口幸宏さんも立ち会って下さった。

■デジスパイス:http://dig-spice.com/


※本記事は2019年8月13日に公開した記事を再編集したものです。 ※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

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