新型ダックスを筆頭に、今まさにホットなホンダの原付二種モデル。中でも125cc横型エンジンを共有する5台はそれぞれ異なるキャラクターを持ち、比べると特に楽しい。本記事では、ヤングマシンで長年テスターを務めてきた大屋雄一氏にこの5台の兄弟シリーズを乗り比べてもらい、その乗り味の違いを検証してもらった。
●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ホンダ
【テスター:大屋雄一】新型クロスカブ110の完成度に感激し、購入を検討中のモーターサイクルジャーナリスト。原付二種クラスは国内外メーカーの多くのモデルを試乗しており、思い入れも人一倍強いぞ!
ホンダ グロム:12インチか17インチか、操安性は大きく異なる
ダックス125とその兄弟モデル4台は、ホイール径の違いによって12インチと17インチグループの二つに分けられる。それではまず、12インチグループで最も歴史の長いグロムから述べよう。
HRCがグロムカップを開催するなど、レースベース車としても活躍しているこのスポーツモデル。ブレーキングでフロントフォークが沈むと同時にリヤサスがスッと伸び、そのピッチングモーションの中心にライダーがいるという感覚は、完全にオンロードスポーツのそれだ。
バンク角主体で旋回するという分かりやすいハンドリングであり、ステップを擦るほど寝かせても全く不安がない。エンジンは、5台の中で最もハイパワーな10psを発生。現行モデルよりミッションが4速から5速となり、特にスポーティに走らせたい場面で任意の回転域をキープしやすくなったのは大きなメリットだ。ハンドリングと合わせ、適切な操縦技術を教えてくれる稀有なモデルなのだ。
このグロムをベースに、リヤサスペンションをツインショックとして80偏平タイヤを与えたのがモンキー125だ。グロムよりもホイールベースが55mm短いこともあり、クイックに向きを変える印象は50cc時代の先代モンキーを彷彿とさせるものだ。
最高出力9.4psのエンジンは、高回転域まで引っ張ってもグロムほどの力強さは感じられず、その手前でシフトアップしたくなる特性となっている。低中回転域でトコトコと流す方が心地良く、この作り分けは見事だ。なお、このモンキー125とグロムはハンドクラッチを採用し、シフトも1ダウン4アップなので、他車から乗り換えたときの戸惑いはゼロだ。
ホンダ C125スーパーカブ/CT125ハンターカブ:上質フィールのC125。CT125はワイルドだ
続いては、17インチグループで先に登場したスーパーカブC125だ。この5台の中では、エンジンの基本設計が共通とは思えないほど低振動かつ低騒音が際立っており、高回転域まで回すほどその差が顕著に。そして、何より感激するのはシフトフィールで、スムーズかつ節度良く変速できる。
加えてスロットルレスポンスも優しく感じられ、最高出力はグロムに次いで2番目に力強い9.8psだが、モンキーと同等かそれ以下の速度域で流すのが心地良いと感じる。ハンドリングは、速度が増すほど12インチ勢よりも安定性が高まり、スムーズに作動するサスとしなやかなフレームが外乱をうまくいなしてくれる。上質という言葉が似合う、まさにカブシリーズの頂点だ。
このC125と対照的なのが、CT125ハンターカブだ。外観はワイルドで、エンジンもそれに見合う低中回転域での力強いトルクフィールが特徴的だ。最高出力はこの中で最も低い8.8psで、車重120kgは最も重いのだが、そんなことは微塵も感じさせずに未舗装路をガンガン進むことができる。なお、リヤのホイールトラベル量はC125より7mm短いのだが、それをネガに感じる場面はほぼない。
ホンダ ダックス125/モンキー125:ダックス125は「普通」。出力特性はモンキーに近い
個性豊かな兄弟たちをじっくり味わったあと、いよいよダックス125に試乗。その第一印象としてパッと思い浮かんだのは、特別や特殊などの対義語である「普通」という言葉だった。ホイール径は12インチだが、同じグループに属するグロムのようなスポーティさを訴えかけるわけでも、またモンキーのようにクイックな旋回力を主張するわけでもない。そしてエンジンフィールは、C125の上質さとも、ハンターカブのワイルドさとも異なる。
このダックスならではのキャラ作りに大きく貢献しているのはやはりフレームで、兄弟4機種よりも明らかに剛性が高く、180ccクラスのパワフルなエンジンを許容できそうなほどしっかりとしている。裏を返せば、ダックスに乗ったことで兄弟モデルのフレームがしなやかであることを実感できた。エンジン特性はモンキーに近いが、こちらは自動遠心クラッチの4速ミッションなので、常用する回転域はわずかに違うという印象だ。
個性派フレームがスタイルだけでなく走りも支配。それがダックスだ。
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