事前情報の時点で大きな反響があり、発売開始後も話題が尽きないホンダのダックス125。現代では唯一無二と言えるこの個性的な姿はどうやって再現されたのか。開発スタッフたちに直撃質問させてもらった。
●文:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:真弓悟史 ヤングマシン編集部 ホンダモーターサイクルジャパン ●外部リンク:ホンダモーターサイクルジャパン
熱烈なファンの思いが復活につながった【ホンダ ダックス125開発者インタビュー】
YM:ダックス125の開発はいつ頃、どういった経緯で始まったのでしょう。また他の機種を復刻した可能性は?
ホンダ:具体的な年数は言えないのですが、スーパーカブC125やモンキー125のヒットを受けて、日本そして特にタイの方から次なる復刻系モデルの要望や検討が高まっていました。逆に質問なのですが、皆さん次に来るとしたら、やはりダックスだと思いました?
YM:もちろんです。スーパーカブにモンキー、ハンターカブに続く横型代表機種といったら、やっぱり!
ホンダ:そうなりますよね。旧型が現地でそんなに広まっていなかったはずのタイからも熱烈な要望がありました。我々としては復刻人気に、昔のモデルであっても時代を超えて通用するコンセプトがそこにはあると感じていました。
そこで単にリバイバルするということではなく、そのコンセプトを現代の技術でどうカタチにするか。様々な可能性を検討しました。そのひとつが今回のダックス125につながったと捉えて下さい。
そうした機運が高まる一方で、国内では昔のダックスをはじめとする旧車を集め、個人的に研究を続けていたマニアな開発者が朝霞の研究所におりました。趣味が嵩じてついにはスチールモノコックフレームの先行開発を業務として行うまでになったのですが、こうした素地もあってダックスは再び登場することができたのです。
パイプフレーム案を検討も、やはりダックスはプレス式
YM:しかし、プレスフレームではなかった可能性もあったとか。
ホンダ:そうなんです。実は開発が決まった後もフレーム形式については完全に決まってはおらず、パイプフレームも検討していました。というのも、現代では生産性ほか色々な面でパイプフレームの方が優れているんです。ただ、パイプでモデリング試作してみると、これは違うなと。結局ダックスらしいプレス式を採用することとなりました。
YM:プレスフレームの設計ではどういったところが大変だったんでしょうか。フレームの曲面の付け方には温かみが感じられて、いかにも手作り風な印象を受けたのですが。
ホンダ:そう言っていただけると開発者冥利に尽きます。ですが、設計自体はコンピューター上でほとんどシミュレーションできましたので、かなり効率良く行えたと思います。実を言うと今回は開発段階でのいわゆるデザインスケッチも存在しませんでした。なにしろオリジナルという素晴らしいモチーフもありましたから。
特に気を遣ったのは、デザインのキモとなるフレーム下側からピボットにかけてのアールの付け方でしょうか。本来であればロール軸に沿って真っ直ぐに骨を伸ばすのがフレーム設計のセオリーですが、そこを剛性バランスを取りつつ、いかにダックスらしく見せるか。そういったところですね。
旧ダックスのイメージを残しつつ、中身は現代型
YM:「ダックスらしさ」のためにフレーム内の配置もまったく新しくしたと聞きました。
ホンダ:そうですね。フレーム内への補機類の収め方は旧ダックスとはまったく違っています。旧型時代になかったABSユニットも必要ですし、昔は筒状にしてフレーム下にレイアウトしていたエアクリーナーボックスも今回はフレーム内にあります。
このエアクリーナーについては最終的にECUなどを収めることとした左サイドのケースにダクトを配置する案もあったのですが、吸気経路が曲がってしまうと狙ったエンジン特性が出せなくなるためボツとしました。
バッテリーと燃料タンクの前後関係も旧型とは逆。これは体積あたりの質量が重いバッテリーを車体重心に近づけた方が理想的であることに加え、火災事故防止のためにバッテリー端子と給油口の距離をある程度離しておかねばならないなどといった理由からです。
マフラーも前方からエキゾーストパイプがグルっと立ち上がるスタイルを絶対に譲りたくなかったのと同時に、エンジン特性を高めるため触媒位置や取り回しなどを工夫しました。
ホンダ ダックス125開発者インタビュー
ダックス125開発責任者 八木崇氏
「発売予定が伸び、お客様にはご迷惑をおかけしましたが、ようやくお届けすることができました。ファミリーで楽しむというところに主眼を置いたダックス125が多くの皆さんを笑顔にすることを願っています」
開発責任者代行 佐藤康氏
「お客様相談室にはモンキーと何が違うのという質問を多くいただいています。カスタム含めた個人のホビー要素が高いモンキーに対して、ダックスは2人乗りや自動遠心クラッチなど扱いやすさを一番に考えています」
吸排設計プロジェクトリーダー倉澤侑史氏
「ダックスにふさわしいエンジン特性の作り込みに注力しました。細かいところではエンジンFIスロットルボディ上の樹脂カバーはフレーム内にあるダクトに効果的に吸気を導く役割を持った形状となっているんです」
デザインプロジェクトリーダー 横山悠一氏
「プレスフレームは絶対に最高のものを作りたく、手に吸い付く工芸品のような感触を追求してデザインしました。ほとんどデータ上でできたのですが、部分的に最後は削り出したモデルを自分の手で触って確かめています」
車体設計プロジェクトリーダー 上坂徹氏
「ダックス125ではCAD上のデータを共有することで効率よくデザインとフレーム設計の開発が進みました。ここの曲線を変えたいなと思ったときでも、コンピューター画面上ですぐに応力解析などの結果が得られるんです」
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