かつてバイク乗りたちのロマンをかき立てた「最速」の2文字。メーカーは威信をかけ、ライダーはプライドをかけてこの戦いに挑んだ。未知の速度域を手中に収めるため、新たな技術が次々に開発された時代である。本記事では、ホンダが誇る水冷V4エンジンを搭載し、実測最高速度246km/hを達成したVF1000Rを取り上げる。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
- 1 V4こそが最速 実測最高速度は246km/h【ホンダ VF1000R】
- 2 ホンダ VF1000Rの系譜
- 3 ホンダ VF1000R 兄弟モデル
- 4 ホンダ VF1000R ライバル機
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V4こそが最速 実測最高速度は246km/h【ホンダ VF1000R】
ホンダが開拓したビッグバイク市場は’70年代から激戦区となり、各社が威信をかけて高度な技術を投入。そんな中、ホンダは他社が追随できない一歩進んだ次世代機種の開発に着手。これが実を結んだのが水冷V4である。
同社はすでにV4エンジンのGPレーサー NR500を開発しており、その技術が市販車に活かされた。V4エンジンは幅が狭いため車体をコンパクトにでき、より深いバンク角が得られ、高出力化にも有利と良いことずくめだが、未知の技術であるがゆえ、これを市販化するのは決して容易な道のりではなかった。
ともあれ、V4第1号車は’82年に完成。4月にVF750セイバーとマグナが発売された。ただし本命はこの年12月に発売されたVF750F。エンジンだけでなく、車体も角パイプフレームやフロント16インチホイールを採用するなど先進的だった。
自社を含めてそれまでの空冷直4とは一線を画す動力性能を発揮し、AMAや鈴鹿8耐でもその実力を見せつけた。サーキットでの活躍もあって、高性能イメージで販売台数もうなぎ登り。もちろん他社にはV4のスポーツ車がなく、まさにホンダの独走状態と言えた。
他社がV4を市販せず、直4にこだわったのにも理由があった。工業製品あるいは道具として優秀であっても、人間の感性に訴える部分となるとV4は必ずしも受けが良くなかったのだ。フラットな出力特性や独特の低い排気音は快感を刺激しにくい。バイクを趣味の乗り物として捉えた場合、この事実は無視できなかった。事実、ホンダもRC30などの傑作V4を生む一方、並行して直4の開発も続けていた。
ホンダ VF1000Rの系譜
’84 ホンダ VF1000R
’85 ホンダ VF1000R
’86 ホンダ VF1000R
’82年のデイトナでフレディ・スペンサーが2位を獲得したRS1000RWの公道版モデル。エンジンはレーシングテクノロジーをフィードバックしたカムギアトレーンV4、車体もフローティングディスク、クイックリリース式アクスルホルダーなどレーサー並みのハイメカを備える。ライバルより3割以上高価で、CB1100Rに代わる当時のステイタスシンボルだった。
ホンダ VF1000R 兄弟モデル
’84 ホンダ VF1000F
’84 ホンダ VF1000F
ホンダ VF1000R ライバル機
’84 ヤマハ FJ1100:ヤマハ渾身のハイスピードツアラー
世界最速を目指して開発されたヤマハ初の大排気量スポーツ。ゼロヨンは10秒681で世界1位、最高速度は233.82km/hで世界2位に輝いた。’86年にFJ1200(130ps)へ発展し、‘91年に国内投入(97ps)。国産車初のABS仕様もラインナップされた。
’84 スズキ GSX1100EF:カタナの跡を継ぐ最速
カタナ(GSX1100S)のエンジンを4mmボアアップして排気量を1074→1135ccに拡大。VF1000RやFJ1100と世界最速を競い合った。ここからハイスピードツアラーというカテゴリーが確立。RF900Rの誕生につながっていった。
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