量産二輪車で世界初採用のブレーキコントロール

ヤマハ新型「トレーサー9GT+」登場! レーダー連動ブレーキ制御って?! 前車追従クルコン、7インチメーターも新装備【欧州】

ヤマハは欧州で、スポーツツアラーモデルのトレーサー9 GTに新バージョンとなる「トレーサー9 GT+」を追加。新たにミリ波レーダーを装備し、各種アシスト機能付きのアダプティブクルーズコントロールや、レーダー連動ブレーキアシスト機能を二輪車で世界初採用している。


●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:ヤマハ欧州

電脳装備で一気にクラストップを狙う!

ヤマハは欧州で、トレーサー9/GTの新バージョンとなる「トレーサー9 GT+(TRACER 9 GT+)」を発表した。これは従来のトレーサー9/GTに追加されるモデルで、ミリ波レーダーを中心とした新しい電子制御デバイスを装備するのが最大のポイントだ。

ベースとなっているのはトレーサー9 GTで、ユーロ5適合の890cc・3気筒エンジンや6軸IMU、ライドバイワイヤスロットル、CFダイキャストフレーム。フルLED灯火類、10段階の調整式スクリーン、グリップヒーター、サイドケース、センタースタンドといった装備は継承。

そして新たに装備するのは、ミリ波レーダーを中核としたアダプティブクルーズコントロール(ACC=前車追従型クルコン)と量産二輪車で世界初採用のレーダー連動前後アシストUBS(Unified Brake System)、新型7インチTFTメーター+コネクテッド機能、ガーミンのナビゲーション対応といった、ライディング体験に大きな変革をもたらす最新デバイスだ。

さらに、ライディングモードやクイックシフター、KYB製セミアクティブ電子制御サスペンションなどもリファインされ、これらの装備に合わせてハンドルバーのスイッチ類も変更を受けている。

ヤマハ欧州はトレーサー9 GT+を2023年5月より、トレーサー9およびGTについては2023年1月より欧州でデリバリーするとしている。また、日本仕様については2023年夏以降の発売予定とされた(11月8日追記)。

各装備の解説は後述したい。

YAMAHA TRACER 9 GT+[2023 EU model]

主要諸元■全長2175 全幅885 全高1430-1470 軸距1500 最低地上高135 シート高820-835(各mm) 車重223kg(装備)■水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ 890cc 119ps/10000rpm 9.5kg-m/7000rpm 変速機6段 燃料タンク容量19L■キャスター25°/トレール108mm ブレーキF=φ298mmダブルディスク+4ポットキャリパー R=φ267mmディスク+2ポットキャリパー■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●欧州発売時期:2023年5月以降 ●色:灰、銀×黒 ●価格未発表 ※諸元は欧州仕様

YAMAHA TRACER 9 GT+[2023 EU model]Power Grey

YAMAHA TRACER 9 GT+[2023 EU model]Power Grey

YAMAHA TRACER 9 GT+[2023 EU model]Icon Performance

YAMAHA TRACER 9 GT+[2023 EU model]Icon Performance

アダプティブクルーズコントロールはコーナリングにも対応!!

従来のトレーサー9 GTも電子制御サスペンションなど先進の装備をリーズナブルな価格で提供するマシンとして人気だったが、さらにライバル勢に先行する電子制御デバイスを盛り込んで追加される上位グレードが、今回発表された「トレーサー9 GT+」だ。

ACCはコーナリングアシスト、パッシングアシストを備える。

まずは待望の装備となったのが、アダプティブクルーズコントロール(ACC)。これはミリ波レーダーで前走車との車間距離を測り、アクセル操作不要で自動的に速度と車間距離を調整してくれるクルーズコントロールシステムのことだ。通常のクルコンは前車と距離が詰まってくるとライダーが自分の操作でブレーキをかけ、その操作でクルコンが自動解除されるが、ACCはスロットルの開閉を自動的に行うことで車間距離を一定に保ってくれる。

さらに、車間距離は任意に設定を変えることができ、周囲の環境やライダーの気分に適した走行が可能。また、前車がブレーキをかけるなどして車間距離が近くなりすぎた場合は警告表示を行い、ライダーにブレーキ操作をうながす。

ACCは30km/h~160km/hで設定可能。1/2速では30km/h以上、3/4速は40km/h以上、5/6速では50km/h以上で作動し、1km/hまたは10km/h単位で設定速度を増減できる。

これらの設定は全て新装備の7インチTFTメーター上で確認できる。

そして、ACCにはコーナリングアシストも付いている。これは6軸IMUと連動することで、システムがマシンのコーナリング状態を検知すると、速度の増加を抑制したり、レーダーが前方の車両を検知すれば加速レベルを制限したりするというものだ。

また、パッシングアシスト(追い越しアシスト)も実装されており、ライダーがウインカー操作をしてバイクが追い越し操作を感知すると、ACCはトレーサー9 GT+をよりスムーズに加速させるというから驚きだ。ACCは電子制御サスペンションにも連動しており、減速時の過剰なピッチングを抑えて車体の安定性を維持する働きを持つ。

これらすべてを統合するACCは、コーナリング/追い越し/前車追従の場面でそれぞれ自動的に最適な介入を選び、速度、スロットル開度、エンジンブレーキ、ブレーキ、サスペンションのレベルを調整してくれるという。

さらに、第3世代とされるクイックシフターはACCと連動しており、ACCが作動している状態でもギヤチェンジが可能。登り坂でトルクが欲しい時やエンジンブレーキを強めたい/弱めたい時などに合わせて、ACCの作動をカットすることなくシフトアップ/ダウンすることができる。

その結果得られるのは、ライダーの精神的/肉体的疲労を減らし、快適さと利便性、ひいては疲れにくいことによる安全性の向上だ。

二輪車世界初採用のユニファイドブレーキシステム(UBS)は、自動ブレーキではなくあくまでも補助……だけど凄い!

ブレーキにもミリ波レーダーと6軸IMUから得た情報で制御が働く。レーダー連動ブレーキコントロール(BC)は、前後の制動力を補助し、また前後比を制御することでライダーのコントロール性を向上するシステムだ。

制動力とコントロール性に優れたラジアルマウント式モノブロックキャリパーをさらに電子制御でアシスト。電子制御サスペンションとも連動する。

BCをONに設定した時のみ作動するレーダー連動UBSは、大きく分けて3つの要素があるという。

1つ目は、衝突が差し迫っていることをシステムが検知した際にブレーキアシストが介入すること。ミリ波レーダーで車間距離を常時分析し、ライダーのブレーキ操作が衝突を防ぐのに十分でないと判断した場合にUBSが制動力を増強してくれるというものだ。あくまでも操作に対する補助であり、これ自体が衝突回避をしてくれるシステムではない。

2つ目は、前後の制動力配分を、加速度や傾斜角度に合わせて最適化してくれるというもの。さまざまなシチュエーションに合わせて、安定した減速を可能にするため制動力の配分を調整してくれる。

そして3つ目はコーナリングブレーキコントロールだ。これは主にIMUからマシンの走行データを得てタイヤの滑りを抑えてくれる、いわゆるコーナリングABSに近いものと解釈してよさそうだ。

これら3つはすべて電子制御サスペンションにも連動し、制動力の補助と調整だけでなく、減衰力特性もリアルタイムに調整して車体の安定性を維持してくれる。

メーターは新型7インチTFTを採用

新しいフルカラー7インチTFTメーターは、3つの表示モードを持ち、それぞれの表示テーマでACCが際立つようになっている。

スマートフォン接続機能も標準装備し、無料のMyRideアプリを使用することで各種着信の通知や、Bluetooth接続のヘッドセットで音楽を聴いたりすることができる。スマートフォンとマシンの接続自体は、BluetoothまたはWi-Fiで行う。

この新しいメーターの採用に合わせて、左側のハンドルバーにあるスイッチも刷新された。

3つの表示テーマを切り替えられる7インチTFTメーター。ガーミンの有料アプリをMyRide経由でインストールすることにより、メーター全画面を使用したナビゲーション機能が使えるようになる。

KYB製電子制御サスペンション「KADS」とライディングモード

KYBと共同開発したKADS(KYB Actimatic Damper System)は、ストロークセンサーやIMUで状態を監視し、スポーツモード/コンフォートモードそれぞれで走行条件に合わせて減衰力をリアルタイム調整する。優れたロードホールディングだけでなく、安定性を増すことでライダーの疲労を抑制してくれるのは前述のACCにも通じるところ。

また、同じく前述のようにACCやUBS、BCなども電子制御サスペンションと統合制御される。

ライディングモードは、4つのモード(スポーツ/ストリート/レイン/カスタム)のいずれかを選択することで、エンジンキャラクター(Dモード)と連動するほか、トラクションコントロール、スライドコントロール、リフトコントロール、電子制御サスペンションの全てが連動して変化する。

このほか、ライダー側のシートは新しいクッションとレザースタイルの表皮を得て快適性を向上。リヤブレーキディスクは直系を約9%増したφ267mmになり、フィーリングをさらに向上している。リヤブレーキキャリパーや&マスターシリンダー、リヤブレーキペダル、クリアスモークのブレーキフルードリザーバーなども新作だ。

バックスキン調の表皮を与えられたシート。

きめ細かなダンピング制御を行う電子制御サスペンション「KADS」。

5km/h以上で走行し、バンク角が7度を超えると作動するコーナリングライト(カーブの先を照らしてくれる)や10段階の調整式ウインドスクリーン、グリップヒーター、サイドケースなどはトレーサー9 GTと同様。

YZF-R1とイメージを共有するLEDヘッドライト+ポジションライト。コーナリングライト機能も備える。ナックルガードや調整式ウインドスクリーンはロングツアラーの必須装備。

サイドケースは標準装備で、3ケースを装着できるステーが最初から備わっている。

YAMAHA TRACER 9 GT[2023 EU model]

こちらは3.5インチTFTメーターのダブル装着など、従来と変わらない装備のトレーサー9 GT。KYB製電子制御サスペンション、クイックシフター、LEDコーナリングライト、グリップヒーターなど快適装備が充実している。2023年モデルは白と黒の2色ラインナップだ。なお、通常モデルのトレーサー9はカラーリングを含め前年度モデルを踏襲する(ここでは割愛)。

ぱっと見はGT+と大きく変わらない。レーダー機能とクルーズコントロールを除けば充実のツアラー装備だ。

左右に同サイズの3.5インチTFTパネルを2連配置した独特なコックピット。表示モードはかなり多彩。

主要諸元■全長2175 全幅885 全高1430-1470 軸距1500 最低地上高135 シート高810-825(各mm) 車重220kg(装備)■水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ 890cc 119ps/10000rpm 9.5kg-m/7000rpm 変速機6段 燃料タンク容量19L■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●欧州発売時期:2023年1月以降 ●色:白、黒 ●価格未発表 ※諸元は欧州仕様

YAMAHA TRACER 9 GT[2023 EU model]Pure White

YAMAHA TRACER 9 GT[2023 EU model]Pure White

YAMAHA TRACER 9 GT[2023 EU model]Midnight Black

YAMAHA TRACER 9 GT[2023 EU model]Midnight Black

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