ホンダは9月22日にダックス125を発売し、翌月には新型CT125ハンターカブを発表(発売は12月15日)。注目度の高い2車はいずれもAT小型限定普通二輪免許から運転でき、価格は同じ44万円だ。間違いなく超売れっ子になるであろう、ダックス125とハンターカブを比較してみたい。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●外部リンク:ホンダ
昭和の名車を現代に甦らせた2台、強力なライバルになりそう!
ブランニューモデルながら超人気車の資質十分と思えるダックス125が、2022年9月22日に発売された。その数週間後には、年間1万5000台ペースで販売絶好調のCT125ハンターカブの新型が発表され、12月15日の発売を控えている。
これら2車は、ホンダが『クラシックウイング』と名付けるシリーズに属し、最新の125cc横型エンジンを搭載しながら、昭和の名車を現代の技術で開発し直したものだ。燃料タンク(またはその付近)に配置されたウイングマークにレトロ調のものが使われているのが、『クラシックウイング』たるゆえん。
ほかにスーパーカブC125とモンキー125も同じシリーズであり、いずれも44万円に統一されているのが大きな特徴だ。これは、些細な価格の違いで迷うよりも、統一価格とすることで「本当に欲しいと思ったやつを選べるように」というホンダの配慮にほかならない。
まず、気になるライディングポジションを比べてみると、シート高775mmのダックスに対し、ハンターカブは800mm。しかし、シート高25mm差から想像するよりも足つき性は異なっている。シートがスリムで脚をまっすぐ下ろしやすいダックス125は数値以上に安心感が高いのに対し、シート幅がそれなりにあるハンターカブは、わずかではあるが“オフロード車”を感じさせる。とはいえ、車体が軽いのであまり不安を感じることはないだろう。
写真で比較すると以下のような感じだ。※ハンターカブは従来型/シート高は新型と同じ
バイク好き以外もウェルカムなダックス125と、ライトウェイトな本格派のハンターカブ
ダックス125は、いわゆる“バイクバイクした機能性”を外観からなるべく排除しているのが特徴だ。これは1969年に発売された初代ダックスから受け継いだコンセプトでもあり、今までバイクに親しんでこなかった層を新規ユーザーとして想定しているから。初代ダックスの開発にあたっては、ホンダの創業者である本田宗一郎が「いろんな人が取っつきやすい、機械を感じさせないシンプルなデザインを作れ。フレームも1回の成型で出来るようなシンプルなものがいい」と言葉をかけたことも、このデザインの完成に大きな追い風となったそうだ。
最新のダックス125は、前後12インチのホイールを履き(初代は10インチだった)、前後に長いシート(実測約63cm)でタンデム走行も快適にこなす。車体はコンパクトながら、ソロでもタンデムでも安定した走りを見せてくれる。そして、意外にもスポーティな走りさえ得意にしている。見た目はカワイイながらもオールマイティな性格なのだ。
もう一方のCT125ハンターカブは、新型で最新世代共通のロングストローク単気筒エンジンに切り替わり、従来の8.8psから0.3ps増の9.1psにパワーアップ。リヤショックには5段階のプリロード調整機構が追加され、キャンプツーリングなどで荷物満載になったときも自然な操縦性になるよう、ライダーの好みに合わせてセッティングできるようになった。従来型から基本デザインは大きく変わらず、新カラーバリエーションの追加やリヤキャリアの色使いの組み合わせ、エンジンガードパイプの形状などが見た目に判別できる程度だ。
ハンターカブも乗車定員は2名でタンデムステップも備えるが、リヤシートの代わりに大型のキャリアを装備していて、このままでもタンデムできなくはないが快適さを求めるなら追加のカスタムが必須。その代わりに、たくさんの荷物を積載することが可能で、ソロの走りではアドベンチャーモデルさながらに悪路へと分け入っていくこともできる。というか、気軽にUターンして帰ってこられるという強みも足せば、大型バイクとはまた違った立ち位置でのリアルアドベンチャーが可能ですらある。
搭載するエンジンは両車ともベースを共有しており、低中速で力強いハンターカブ(9.1ps/6250rpm)に対し、街乗りでの伸び感とスムーズな吹け上がりが持ち味のダックス125(9.4ps/7000rpm)と言えそうだ。いずれも自動遠心クラッチ+4速トランスミッションを搭載し、AT小型限定普通二輪免許で運転することができる。
どんな時も穏やかで一定の反応を見せるダックス125
ダックス125は、反応が常に一定な感じが好ましい。この“一定”というのは、速度域やソロ/タンデムを問わず、バイクのレスポンスが乗り手の想像する延長線上にの範囲内あるということ。どのように乗ってもライダーの操作に絶妙な遅れをもって反応し、乗り手の感覚を追い越さない。まるで忠実な愛犬のようであり、まさしく“ダックス”の面目躍如である。
タンデムを前提とした足まわりは、前後12インチホイールながらクイックというよりは安定志向。モンキー125よりもホイールベースが長く、サスペンションも無駄な動きを抑制したフラットライド感が持ち味だ。エンジンにもブレーキにも唐突感はなく、必要十分なパフォーマンスと優れたコントロール性を持ち合わせている。
荷物があまり積めないといった構造上のものを除けば、本当に欠点や不満が見当たらないのがダックス125だ。デザインが気に入って、自動遠心クラッチが好みじゃないといったことがないのなら、選んで後悔することはないだろう。
その気になったとき本領を発揮するハンターカブ
ハンターカブについては新型の試乗ができていないので、従来型のフィーリングと、スペックの違いから想定されるキャラクターについて触れていきたい。
従来型は、旧排出ガス規制に適合したモデルということもあって、低回転からパンチのあるエンジンが特徴だった。新型は令和2年排出ガス規制に適合していることから、極低速(アイドリング付近)ではややソフトなキャラクターになっているかもしれないが、高回転域ではしっかりパワーアップを果たしているので、実用領域ではその恩恵が感じられるはず。半クラッチを勝手にやってくれる自動遠心クラッチなので、極低速に違いがあったとしても、それほど気になることはないだろう。
ハンドリングはダックス125と対照的だ。前後17インチのスポークホイールを履いており、ダックス125ほど勝手に曲がっていく感じはない。のんびり走ると緩やかな反応になり、積極的に走ると鋭く曲がろうとする二面性がある。とはいえ原付二種クラスの範疇ではあるので、それほど極端な違いではない。新型になっても、キャラクターはこのハンターカブらしさの延長線上にあるはずだ。
バイクそのものが好きなソロ気質ならハンターカブ、お出掛けやお散歩の“相棒”ならダックス125
さて、じっさいにどちらを選ぶかとなると、ここまでで答えが見えてきている方も多いと思うが、ようするにご自身の使い方に合う方を選ぶのが正解ということになる。エンジンはベースが同じだけあって、それほど大きな違いにはならず、自動遠心クラッチ+4速トランスミッションは変速比まで同じである。
“バイクらしさ”を重視せず、タンデムや街乗り、ちょっとしたお出掛けに使うなら、ダックス125ほど気がねなく走り出せる125ccバイクもあまりない。ちょっとそのへんを走っているだけでシアワセな気分になる。その名の由来(ダックスフンド)のとおり“忠犬”と呼びたくなるキャラクターなのである。
ハンターカブは“バイクを操縦している”という実感が強めで、少し元気に走ったほうがリズムが合う。大きな荷物も積めて、遠くまで走ることも射程範囲。ビッグバイクほどガチじゃないが、本格派の雰囲気が味わえるはずだ。
もちろん、置き場所が限られるなら全長の短いダックス125が有利だし、取り回しもやや有利。シート高も身長によっては気になる可能性があるので、検討するなら実際に跨って比べてみたほうがいいだろう。車重の違いは跨れば気にならないが、狭い場所での取り回しでは違いを感じることもあるかもしれない。
ちなみにツーリングにおける快適性では、シートのクッション性が豊かなダックス125と、比較的ソリッドなフィーリングのハンターカブといった違いがあり、意外とダックス有利な部分も。スペックから見る燃費とワンタンクでの航続距離については、WMTCモード燃費65.7km/L×タンク容量3.8Lのダックス125が航続距離249.7km、WMTCモード燃費63.4km/L×タンク容量5.3Lのハンターカブは航続距離337.6kmと90km弱の違いがある。
HONDA DAX 125[2022 model]
主要諸元■全長1760 全幅760 全高1020 軸距1200 最低地上高180 シート高775(各mm) 車重107kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 123cc 9.4ps/7000rpm 1.1kg-m/5000rpm 変速機4段リターン(停止時のみロータリー式) 燃料タンク3.8L■キャスター24°54′/トレール84mm ブレーキF=φ220mmディスク+2ポットキャリパー R=φ190mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70-12 R=130/70-12 ●価格:44万円 ●色:赤、灰 ●発売日:2022年9月22日
HONDA CT125 HUNTER CUB[2023 model]
主要諸元■全長1965 全幅805 全高1085 軸距1260 最低地上高165 シート高800(各mm) 車重118kg(装備)■空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 123cc 9.1ps/6250rpm 1.1kg-m/4750rpm 変速機4段 燃料タンク容量5.3L■タイヤサイズ=前後80/90-17 ●価格:44万円 ●色:銀、赤、緑 ●発売日:2022年12月15日
※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
「パールネビュラレッド」と「パールカデットグレー」の2本立て 車体は、ダックスらしい胴長スタイルをつくり出す鋼板プレス製のT型バックボーンフレームの中に燃料タンクやエアクリーナーボックスを収め、足まわ[…]
乗り手に寄り添うダックス125 ホンダから満を持して登場した「ダックス125」の乗り味は、とても普通だった。そう言ってしまうと、つまらないバイクなのかと思う人もいるかもしれないが、けっしてそんなことは[…]
新エンジン搭載で3.4%パワーアップ、2kgの軽量化も達成 ホンダは待望の新型「CT125ハンターカブ」を発表。現行グロムからはじまったロングストローク設定(50.0×63.1mm)の新型エンジンは、[…]
大人気過ぎて生産が追い付かず…… 二輪車新聞は、10月14日号で2022年上半期の二輪車総需要を総括した。これは毎年発表されるデータであり、どの排気量クラスが盛り上がっているのか、売れた機種はなんだっ[…]
レブル250[59万9500円~] vs GB350/S[55万円~] ホンダドリームを訪ねると、新車の購入時にレブル250とGB350で迷う方が多いという話を聞くことがけっこうな頻度である。GB35[…]
最新の記事
- ホンダが電動トライアルバイク「RTLエレクトリック」で全日本トライアル参戦! ライダーは元世界チャンピオンの藤波貴久
- 独尊の水冷V型2気筒クルーザーに待望の250が登場! ヒョースン「GV250」シリーズ3機種を一挙発売
- ヤマハの新型モデル「YZF-R9」日本発売は2025年春以降! ウイングレット装備の3気筒スーパースポーツ
- 【正式発表間近】カワサキが「W230/メグロS1」「KLX230/S/SM」の発売時期を明らかに!
- 【SCOOP特別編】ホンダ新型CB400は…こうなる!! プロがその姿を大胆予想〈③装備&デザイン編〉
- 1
- 2