ホンダが誇るスーパースポーツのトップエンドCBR1000RR‐Rファイアーブレードがマイナーチェンジ。厳しさを増す排出ガス規制に対応しながらもスペックを下げず、加速とレスポンスをいっそう向上。CBRが掲げる「トータルスポーツ」の進化を、ヤングマシンメインテスターの丸山浩がストリート&サーキットで徹底チェック!
【テスター:丸山浩】台風接近による路面のウェット化にも負けず、果敢にヒジを擦るヤングマシンメインテスター。試乗の模様はヤングマシン本誌やYouTubeのMOTORSTATION TVでも公開!
●文:ヤングマシン編集部(伊藤康司) ●写真:山内潤也 ●外部リンク:ホンダ
厳しい規制に対応しながらコントロール性能を向上
CBR1000RR‐Rファイアーブレードがマイナーチェンジを受けて3月10日に発売された。カラーリングは前モデルを踏襲し(じつは細部のデザインが変わっているが)、ルックスに大きな変化がないので、その存在に気付かなかった方もいるかも知れない。
大きな変更点は、ユーロ5に準じる令和2年排出ガス規制に適合させたところ。しかし単純に排ガスを絞ると出力なども低下してしまうが、新型RR‐Rは様々なリファインによってスペックを落とさず、かつ中低速の加速性能やスロットルの応答性も高めたという。今回はストリートと袖ヶ浦フォレストスピードウェイにSPを持ち込み、実力を確かめてみた。
主な変更点
・エンジンを令和2年排出ガス規制に適合
・中速域の加速性能向上のため吸排気をリファイン
・ドリブンスプロケットを加速寄りに変更
・スロットルレスポンスを向上
・トラクションコントロールの制御プログラムを変更
ホンダ CBR1000RR-R ファイヤーブレード SP公道/ストリートダブル試乗インプレ
まずはストリート。ポジション系や車体は前モデルから変わりなく、シートが若干幅広なため足が広げられてしまうが、足着き自体は比較的良好。ただハンドルが低い上に幅広なのでかなり前傾姿勢を強要され、街中では手首に負担がかかるのでストリートならもう少し絞っている方が扱いやすいと思われる。またテスト車はピレリのディアブロスーパーコルサSPを履いており、これもストリートでは少々ハードルが高い気がする。
…が、ともあれ走り出すと非常に扱いやすくなっている。ドリブンスプロケットを3丁増やした43Tに変えて二次減速をショート化したことも功を奏し、公道もキチンと走れる。また前モデルはエンジン回転が上がっていく途中で、マフラーの排気バルブがいきなり全部開いたような大音量に変化したが、そこが抑えられている。4~6000rpmくらいでかなり音量が大きくなるのは従来通りともいえるので、公道では分かりにくいが…。
話は前後するが、スマートキーをもって車両に近づいてメインスイッチを押すと色々な「音」がする。エンジンをかけずにスロットルを捻っても作動音が聞こえる。それだけ電子制御が満載なワケだが、ライディングモードやトラクションコントロールなどによって、スロットルの開け方に対して実際のエンジンが立ち上がってくるところも、バイク自身が作り出している。だからこそ218psもの出力を持ちながら普通にストリートを走れる、電子制御の恩恵を改めて感じる部分である。
それでは袖ヶ浦フォレストレースウェイに走りのフィールドを変えよう。まず、パッと乗っても感じるのが、全体的な安心感やグリップ感、シフトフィーリングも向上し、サーキットでの乗りやすさが俄然上がっているところ。
ところが、自分の中では「あ、ちょっと牙をもがれたかな?」と思う部分もあった。それはストリートでも触れた「音」だ。CBR1000RR‐Rといえば、あの劇的に変わる排気音も大きな特徴のひとつだった。袖ヶ浦フォレストレースウェイのストレートで、RR‐Rを駆る自分だけがパッカーンと痛快なサウンドで目立つ…というのが、新型ではなくなっているのだ。
しかし、前モデルでは排気音の激変と同時にパワーがドンッと出るフィーリングがあった。これは排気音のイメージで増長されていたかもしれないが、新型RR‐Rはコーナリング中に高回転に持って行ってもドンッと出るところがないので、明らかに走りやすい。
そして二次減速のショート化も効果大。前モデルだと袖ヶ浦フォレストレースウェイでも1速で曲がらざるを得ないコーナーがあったが(それでも大変)、新型なら2速で曲がれるようになっている。もしレースで走るならさらにショート化するところだが、これでも十分に効果があり、街中の渋滞路でも乗りやすさが増したと思う。
なので音こそ変わったものの、絶対的なタイムアップやコントロール性、収束性は新型で確実に向上している。ちなみに国産スーパースポーツのライバル車の中で、CBRは馬力を出すための「ゴリゴリ感」がもっとも強い。このフィーリングは新型でも変わらないことを忘れずにお伝えしておきたい。
そしてSPならではのオーリンズ&ブレンボの足まわりは、やはり最高峰のセット。今回は最終的にウェット路面になってしまったが、その前にはヒジをガッと握るところまで行っても路面への「吸い付き感」がピタッと安定し、これは素晴らしいの一言だ。
厳しい規制に対応しながら出力などスペックを落とさずに乗りやすさを向上させ、しかもプライスは据え置き。これは非常に良心的だと思うし、ホンダがこのマシンにかける意気込みは、まだまだ続くのだろうと強く感じた。
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