2022年シーズンの世界耐久ロードレース選手権(EWC)の最終戦、ボルドール24時間レースで、それまでランキング2位につけていた「F.C.C. TSR Honda France」が、逆転で年間チャンピオンを獲得した。2017-2018シーズン以来、4年ぶり2度目のタイトル獲得だ。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:Honda France ●外部リンク:TSR/TECHNICAL SPORTS RACING
闘将 藤井正和監督率いる「F.C.C. TSR Honda France」が2度目の栄冠
「2回目のチャンピオン? 僕は3回結婚しているからね、もう1回!」
100回目の開催となったボルドール24時間耐久レース(フランス・ポールリカールサーキット/2022年9月17日~18日)のインタビューでおどけてみせたのは、チャンピオンチームになった「F.C.C. TSR Honda France」の藤井正和監督だった。
藤井監督が率いるTSRは、日本のモータースポーツの聖地・鈴鹿に本拠を構え、WGPへの参戦を経て、鈴鹿8耐では2006年、2011年、2012年と3度の総合優勝を飾っている名門プライベーターチームだ。世界耐久ロードレース世界選手権(EWC)には2016年から参戦をはじめ、3季目となった2017-2018年シーズンには日本国籍のチームとして初めてル・マン24時間耐久レース(フランス・ブガッティサーキット)で優勝を遂げ、その勢いで年間チャンピオン争いも制してみせた。
いつだって「勝つためにやっている」と眼光鋭い藤井監督は、翌2018-2019年シーズン開幕戦のボルドール24時間を制し、ドイツ開催のオッシャースレーベン8時間耐久でも優勝したが、最終ランキングは2位。
2019-2020年シーズンは、コロナ禍で渡航もままならない中、延期となった8月のル・マン24時間耐久レースで2勝目を挙げ、新型RR-Rに世界初優勝をもたらした。ランキングは3位。2021年シーズンは第2戦エストリル12時間で勝利するも、4戦中2度のリタイアや響いてランキングは5位に終わっている。
そして2022年シーズン。第3戦まで未勝利のランキング2位で最終戦ボルドール24時間レースを迎えた「F.C.C. TSR Honda France」は、ライバル勢がトラブルで脱落していくなか着々と周回を重ねて4位でフィニッシュ。年間総合154ポイントを積み上げ、ランキング2位になったヨシムラSERTモチュールに24ポイント差をつけたことで、逆転の年間チャンピオンに輝いた。鈴鹿8耐でタイトル獲得を決めた2017-2018年シーズン以来、4年ぶり2度目の世界チャンピオンだ。
今シーズンは「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」のデビューから3年目でもあるが、今夏の鈴鹿8耐総合優勝までメジャータイトルに恵まれなかったRR-Rにとっても栄冠のシーズンになったと言えるだろう。
F.C.C. TSR Honda Franceは、ライダーにジョシュ・フック選手(オーストラリア 29歳)、ジーノ・リア選手(英国 33歳)、マイク・ディ・メリオ選手(フランス 34歳)の3名を擁して2022年シーズンに参戦開始。第1戦ル・マン24時間耐久レースでは3位表彰台、第2戦スパ・フランコルシャン24時間で再び3位表彰台、そして第3戦 鈴鹿8耐ではジーノ・リア選手の転倒、戦線離脱から、残り2名による粘り強い走りによって10位で完走した。最終戦は3人目のライダーにアラン・テシェ選手を加えて臨んでいた。
以下、最終戦を終えたライダーおよびチーム監督のコメント。
ジョシュ・フック選手
『過去の経験からチェッカーを受けるまでは油断はできないと思っていました。僕たちは過去にもさまざまなシチュエーションから復活してきましたが、確実なことはどこにもありません。皆がそうであるように、諦めずに自分たちのレースをしてきました。3人とも特に夜間走行が速く、いい走りをしたと思います。この大会で優勝するのは難しいと分かり、チャンピオン獲得を最優先としました。他の多くのチームが直面したトラブルを避けるために、可能な限りエンジンを労りながら走行し、最後まで走り切ることができました』
マイク・ディメリオ選手
『ついに世界耐久ロードレース選手権のチャンピオンになることができました! 過去にもチャンピオンまであと一歩のところにいったこともありましたが、長い間求め続けていたタイトルをやっと獲得することができてとても誇りに思います。とてもタフなレースでした。周りが1台、また1台と止まっていく中、僕たちもトラブルに見舞われていました。TATI TEAM BERINGER RACING(カワサキ)が上位で争っている時、トラブルを避けるために追っていたマシンと十分な距離を取ることにしました。彼らのタイトル争いが難しくなった後は、ストレートでの早めのシフトアップでエンジンを温存する計画へと変更しました。表彰台を獲得するよりもタイトルの獲得が大事だったので、正しい選択をすることができたと思います』
アラン・テシェ選手
『メカニカルトラブルに見舞われた時もあり、チームの皆にとって大変なレースになりました。チームスタッフはピット作業で時間短縮に勤しみ、僕たちライダーはレース戦略の実行にベストを尽くして走りました。Yoshimura SERT Motul(スズキ)がリタイアした後は、僕の元在籍チームであったTATI TEAM BERINGER RACING(カワサキ)とのタイトル争いになりました。2018年にタイトルを獲得したチームだったので、複雑な気持ちでした。このタイトル獲得に大きく貢献したジーノ・リアの回復を心から願っています』
藤井正和監督
『今シーズンの目的だったチャンピオンになる事ができた。しかし、失うものも大きく厳しい2022年となった。ボルドールのレースは荒れると予想していた通りになった。我々に出来る事は決まっていてその中でベストを尽くせる準備をしてきたんだ。だから生き残る事が出来たんだろう。早い段階で上位陣がいなくなってから、トラブルでイレギュラーな作業を強いられたこともあり、確実にタイトルを獲得することだけを考えることにした。その結果、逆転でタイトルを獲得できたから非常にうれしい。ライダーはもちろん、メカニックやチームスタッフ、サポートいただいたすべての皆さんに感謝します』
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