’20年モデルで生産終了となったフルカウルのGSX-S1000Fの後継として、新たに誕生したのが「GT」だ。SIRS(スズキインテリジェントライドシステム)の導入によりマシン全体の電脳化を促進。果たして打倒ニンジャ1000SXなるか!?
●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:スズキ
スズキ GSX-S1000GT 概要
[◯] 直列4気筒の味わいを再確認。これぞシリーズの集大成
秀作が誕生した。先代に当たるGSX-S1000Fは、フルカウルでありながら防風性能は必要最小限であり、スーパースポーツをアップハンドル化しただけのような割り切ったキャラだった。これに対して新型は、グランツーリスモの頭文字「GT」を冠するだけあって、高い運動性能と快適な巡航性能を併せ持つ、正統派スポーツツアラーへと生まれ変わっており、その完成度に驚かされた。
ベースとなっているのは’21年にフルモデルチェンジしたネイキッドのGSX-S1000で、フレームや足まわりなどの基本骨格、最高出力150psの水冷直4エンジンは共通である。最も大きな違いを感じたのはハンドリングと防風効果で、特に前者はこのGTありきでメインフレームを設計したのではと思うほどにバランスがいい。フルカウルでありながら、GSX‐S1000の持つ倒し込みや切り返しの軽快感はほぼ失われておらず、そのうえでカウリングによる重量増や空力特性が加わり、フロントの接地感および前輪から向きを変えるという印象が高まっている。さらに、高速巡航時の前後サスの作動性も優秀で、路面の継ぎ目で跳ねがちだったS1000よりも明らかに乗り心地がいい。
防風効果については、適度にヘルメットをかすめるぐらいに減じられるレベルで、完全に無風状態になるわけではない。とはいえ、風圧によるストレスはS1000よりも圧倒的に少なく、またスクリーンの上端が目障りになることもない。コンセプトに合致したバランスなのだ。
エンジンは、S1000と同様に電子制御スロットルを筆頭とするSIRS(スズキインテリジェントライドシステム)を導入しており、このGTではクルーズコントロールを追加している。全体の印象はS1000と大差ないが、今回感じたのはツアラーとしての味わい深さだ。一般道で多用する4000rpm以下に大排気量直4ならではの豊かな脈動感があり、これが高速巡航中に心地良く感じられた。移動距離が長いツアラーはエンジンとの対話も楽しみの一つであり、これもGTの美点だ。
スズキ GSX-S1000GT ディテール解説
[△] 初期タッチがやや甘いフロントブレーキが気になる
ブレーキレバーを引いてから制動力が発生するまでのタイムラグが大きく、峠道はもちろん街中でも早めに握り始める必要あり。その先の制動力の高さとコントロール性はさすがブレンボキャリパーで、フル積載+タンデムでも不足はないはず。
[こんな人におすすめ] 本当の意味で万能的に使える、実直なモデル
先代F比で価格は32%もアップしたが、カワサキケア付きのニンジャ1000SXより7万2000円高いだけであり、十分に競争力はある。少数派になりつつある大排気量並列4気筒を、どんな場面でも扱えるように磨き上げたスズキ会心の一撃だ。
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