ホンダ ジャイロキャノピーe:試乗インプレッション【堅実な走りの業務用電動3輪スクーター】

ホンダ ジャイロキャノピーe:試乗インプレッション

働く原付3輪スクーターの代名詞=ジャイロキャノピーに電動車「ジャイロキャノピーe:」がラインナップされた。すでに日本ではビジネス用の電動3輪スクーターが走っており、同車は後発となる。でも、やっぱりホンダは何もかもが堅実な作りだった…。


●文:ヤングマシン編集部(近藤スパ太郎) ●写真:輪 ●外部リンク:ホンダモーターサイクルジャパン

近藤スパ太郎[タレント/プロデューサー]:環境番組のパーソナリティを担当したことを機に、電動バイクの強烈なパワーにひと目ぼれ。俳優/MCの他、企画プロデューサー/芸能制作プロダクションSPANCHOOSの代表を務める。[URL]近藤スパ太郎SPANCHOOSTwitter

エンジン車から乗り換えても違和感なく乗れるのがいいね

ビジネスシーンで人気が高い、3輪スクーターのジャイロシリーズ。EV化の波を受け、’21年3月にホンダ初の電動3輪スクーター・ジャイロe:が登場した。低い荷台はスイングをせず、重いものや割れやすいものを運ぶ酒屋などのデリバリーに向いた車両だ。

一方、同年10月発売の「ジャイロキャノピーe:」は、車体と一緒にスイングする荷台が高い位置にあり、路面からの衝撃も軽減されるため、フードデリバリーなどに向く。車体の前部はベンリィe:をベースに、後部はジャイロキャノピーの構造。サイドスタンドはなく、停車時にパーキングロックレバーを引けば自立する。さらに新開発の”ホンダ モバイルパワーパックe:”を搭載して、スペック上の走行距離は1.2倍の77kmに向上した。

【’21 HONDA GYRO CANOPY e:】■全長×全幅×全高:1870×700×1710(mm) ■シート高:715mm ■ホイールベース:1360mm ■車体重量:168kg ■原動機:交流同期電動機 (EF13M) ■定格出力:0.58kW ■最大出力:3.2kW/5800rpm ■最高速度:50km/h ■最大登坂角度:14°≧ ■駆動用バッテリー:リチウムイオン(ホンダモバイルパワーパックe:またはホンダモバイルパワーパック) ■バッテリー電圧/容量/充電時間:50.26V/26.1Ah(1311Wh)/約5h ※ホンダモバイルパワーパックe:の場合 ■ブレーキ:F/R=機械式リーディングトレーリング ■タイヤサイズ:F=90/90-12-44J R=130/70-8-42L ■航続距離:約77km※1 ■車体色:ロスホワイト ファイティングレッド ■車両区分:原付一種 ■運転免許:原付免許~ ■乗車定員:1名 ●価格:71万5000円(法人向け販売価格。ホンダ モバイルパワーパックe: および専用充電器の価格は含まれていない) ※1「ホンダモバイルパワーパック e:」を2個使用した場合で、30km/h定地走行テスト値

【ライディングポジション】シート高は、エンジン搭載のジャイロキャノピーよりも15mm高い715mm。シート下にバッテリーを2個横並びで搭載するため、幅広なシートではあるが、腿が当たる部分が削ぎ落された形状で、前側に座ることで足着きが良くなる。肉厚で少し固く、ハードな業務でもヘタりにくそうだ。ホイールベースが1360mmと短くなり、より取り回しやすい車体サイズに進化したが、キャノピー内の空間に窮屈さは感じられない。 [身長173cm/体重77kg]

実際に走ってみると、168kgもある車重はまったく気にならなかった。むしろ強いトルクによる加速のおかげで、クルマの流れに乗ることにストレスがない。30kgの荷物を積んで傾斜14度の急坂もグイグイ上る登坂性能を持ち、さらに後進機能もあるので、駐輪場の出し入れや狭い場所での切り返しもとても楽チンだった。左手と右手のスイッチ操作を同時に行わないと後進しない仕組みは、安全性を考慮した結果だろうね。直進安定性の良さや電動ならではの静かな走行音も、デリバリー業務では恩恵が大きいだろう。

なお、後ろ2輪の構造は、コーナリング時にネガティブな特性が出やすいけど、これも違和感がなく、2輪車に乗っている感覚で楽しい! 車体の前部と後部をつなぐジョイントに採用されている技術=ホンダ独自の「ナイトハルト機構3輪システム」の恩恵だ。スイングして傾いた車体を元に戻すのは、ゴムの反力を活用するだけというから、技術のシンプルさにも驚く。また、やっぱりホンダは違うな… と痛感したのが、ブレーキング中でもモーターパワーが遮断されないコト。ブレーキを掛けながらスロットルを開けられることも、既存のバイクと同じ感覚で走行できる理由だ。

高評価できる点が多いジャイロキャノピーe:だが、法人向けのリース販売のみ。’22年度は国によるEV車購入補助金額が6万円、東京都からの補助が原付一種/3輪で最大48万円の助成だから、事業者の方は導入を検討する価値がありますよ!

【新型は容量が増えて航続距離が伸びた】新型バッテリー「ホンダ モバイルパワーパックe:」は、容量が263Wh増え、ジャイロキャノピーe:の走行距離が、65kmから77kmと約1.2倍に(30km/h定地走行試験値)。

【最大登坂角は14度。力強い電動トルク】最大積載量30kgの荷物を積んでも、14°の登坂性能を持つ。加速や上り坂での力強さは、エンジン搭載のジャイロキャノピーよりもこちらに軍配が上がる。

ジャイロキャノピーe::ディテール写真解説

【独自のナイトハルト機構。違和感のないスイング】ホンダ独自のナイトハルト機構が、2輪車のような違和感のないスイング走行を実現する。

スイングする車体は自立はしないが、ハンドル右下のレバーを上げることでスイング機構と後輪軸を同時に固定するパーキングロック機能を備えている。

【専用設計サスペンション&後進機能も装備する】リヤブレーキは両輪ともドラム式。モーターは外部から見えないが、覗くと2本のリヤサスペンションと、モーターの回転を両輪に伝えるデフが見える。前後の車体構造は、スイング機構を持つジョイントでつながれている。


停止状態で左手のリバーススイッチと右手のスタータースイッチを同時に押すと後進する。重量物を積んでも取り回しが楽だ。

前後ブレーキにパーキングレバーを装備。

ワイパー付きウインドスクリーンは、ウインドウォッシャー液も出る。ヘッドライトはLEDだが、他の灯火類はコストパフォーマンスの高い白熱電球を採用。

シンプルで見やすいメーター。2AのDCソケットもある。


膝まわりを雨風から守るディフレクター。

幅広なシートだが、腿が当たる部分を細くし足着き性を確保。

ステップボードが広く、足の自由度が高い。

荷掛けフックもしっかりと装備する!

車体と一緒に大型デッキもスイングする。コーナリング時にGがかかる時でも、搭載荷物には負担がかからない仕組みだ。荷掛けフックは4本備える。

ホンダモバイルパワーパックe:を2個搭載。満充電まで約5時間

ジャイロe:と同じ96VのEVシステムだが、バッテリー容量が50.26V/26.1Ahに増えた新型の「ホンダモバイルパワーパックe:」を2個直列に繋いで、モーターを駆動させている。バッテリーを収納して固定レバーを倒すと、BOXの底にあるコネクターが持ち上がって接続される。容量は増えたが、フル充電時間も約1時間伸びた。

1個約10.3kg。従来品と比べると、約300g軽くなった! ※筆者実測値

バッテリーと充電器は本体価格には含まれず別売りのため、事業ニーズに合わせて揃えられる。

空状態からフル充電までは約5時間。2個同時に充電したい場合は、充電器も2個必要となる。

充電状態は、充電器のインジケーターに表示される。緑になったら充電完了!


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