Z900RSの”匠”に聞く:その1

ヨシムラに聞く:カワサキ「Z900RS」という存在【超一流ブランドを動かした稀代のモデル】

ヨシムラに聞く カワサキ「Z900RS」という存在

「Z=黒いショート管」という絶対的なイメージは、そのままZ900RSにも繋がる。ヨシムラはそんなライダーの想いに呼応し、現代に対応したショート管をはじめ、新カテゴリーのカスタムパーツ開発にも着手。日本を代表するコンストラクターに聞いた、カワサキの大人気車種、Z900RSの存在とはいかに……。


●文:ヤングマシン編集部(伊藤康司) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ヨシムラジャパン

ヨシムラを大きく動かした1台

「カワサキのZ1/Z2は旧車として揺るぎない人気があり、ヨシムラにとってもかつてZ1でアメリカのAMAレースに参戦した歴史があります(’76年〜)。そんなZ1/Z2イメージを受け継いだZ900RSは話題性も高く見過ごせない車両です」

日本を代表するレーシングコンストラクターでありパーツメーカーでもあるヨシムラ。Z900RSが発売されて最初の’18年東京MCショーでは、プロトタイプのレース用ストレートサイクロン(いわゆる”手曲のショート管”)を装着展示していた。

「ヤングマシンさんのスクープ記事(予想CG)も手伝って、発売して欲しいという声がとても大きかったですね。やはり車両を購入したら、最初にカスタムしたくなるのはマフラーですよね。そして”Z1には黒い集合管”というイメージが定着していますから、Z900RSも、まずはレース用のT-SPECを発売し、次に公道用マフラーに着手しました。そして完成したのがデュプレックスシューターです」

Zと言えば、やはり黒い集合管というイメージがある。Z900RSに関しても、まずはマフラーの開発に着手した。

そして、ヨシムラと言えば”エンジンチューン”。近年はエンジン本体にまで手を入れるカスタムを施すユーザーは減っているというが……。ヨシムラはZ900RS用にST‐1Mカムシャフト(末尾のMはマシニングによる削り加工の意味)を、デュプレックスシューターと同時に’19年に発表し、すでに販売している。他にも、エアボックス内の吸気ファンネルの長さを最適化することで、扱いやすく理想的なトルク特性を生み出す”TMS(トルク・マネジメント・システム)ファンネルKIT”もリリース。

「カムを開発している時点で、Z900RSのエンジンは高回転・高出力化でのポテンシャルは大いにあるという評価でしたので、チューンする楽しみがあると思います。また、TMSも見た目のカスタムではないので、社内でも「本当に売れるのか?」という声はありましたが、マフラー等で性能に拘るユーザーが多いという確信があったので、吸気系のカスタムで何とかできないかと考えた末に、レース技術の実績から製品化にたどり着きました」

デュプレックスシューターやTMSファンネルKITはZ900RSを起点に開発が始まり、現在はスズキのKATANAなど他車種にも発展する。

「Z900RSは外装パーツなども含め総合的な性能に繋がる新規カテゴリーを立ち上げるキッカケになりました。車両全体をコーディネートするカスタムパーツ群ですね。そこにはヨシムラの新たなステップキット”X‐TREAD”や、フェンダーレスKIT、スライダーなども含まれます」

その集大成ともいえるのが、’21年春に発表されたヨシムラ・ヘリテイジキットAMAエディションだろう。

「’19年の東京MCショーで展示した、’79年のAMAスーパーバイクに参戦したヨシムラZ1をオマージュしたカラーリングがベースです。展示当初からこのカラーの販売を望む声があったので。そして実際に社内で外装パーツキットの企画案が出たのが’20年の夏でした。そこから製品版のカラーリングや商品の構成など1年近くの準備期間を経て、受注を開始することが出来ました」

Z900RSは、超一流ブランドをも動かした、稀代のバイクと言える。

ヨシムラ×Z900RS ヒストリー

Z900RS誕生から間もない’18年の東京MCショーで、ヨシムラがストレートサイクロン(プロトタイプ)を発表すると聞きつけ、ヤングマシン本誌’18年4月号でスクープ。そしてMCショー会場で目にしたファンから、発売を望む多くの声が上がったことからも、エキゾーストシステムを筆頭にZ900RSのパーツ開発に本格的に着手したのだ。プロトタイプのストレートサイクロンは’18年5月のTOTでデモランを行い、開発を進めレース用のT-SPECとして発売。さらにこのマフラーをモチーフに、新機構のサブサイレンサーを備えた政府認証マフラーの手曲ストレートサイクロンDuplex Shooterを世に出した。さらに外装パーツなど多岐に渡り製品ラインナップを拡大し続けている。ここからはその開発パーツを、順に見てみよう。

ヤングマシン本誌において、予想CGを交えたスクープ記事を掲載。

’18年3月

MCショーでショート管お披露目!

’18年3月の東京MCショーでストレートサイクロン、いわゆる”手曲のショート管”のプロトタイプを発表。そして5月のテイストオブツクバでは、車体をAMAカラーにリペイントしてデモランを敢行し、大いにファンを沸かせた。

’19年8月

待望の公道用ストレート管!

プロトタイプの手曲ストレート管のフォルムはそのままに、政府認証マフラーを新開発。熟練職人による美しい曲線を描くエキパイは、集合部の手前でバンク角をしっかり確保するレイアウト。サブサイレンサーが迫力を醸し出す。

新開発1:デュプレックスシューター

純正、アフターパーツも含め、”膨張室”付きのエキゾーストは珍しくないが、デュプレックスシューターは消音と最適な排気効率を狙ったサブサイレンサーで、ピークパワーを大きく向上させている。最大の特徴はテールパイプに連結された、このサブサイレンサーにも排気口を設けている点だ。エキゾーストパイプは管長を吟味し、集合部は一見すると4-1だが、内部構造を4-2-1とすることで中速域の扱いやすさも向上している。STDより2.4kg軽量だ。

【手曲ストレートサイクロン Duplex Shooter 政府認証】●価格:21万2300円

’20年4月

カーボンパーツでショーアップ

アルマイトの差し色が小粋なスモールパーツも装備。エキゾーストは機械曲チタンサイクロンDuplex Shooter TTB FIRE SPEC(24万2000円)を装着。デモ車はオーリンズのリヤショックやカーボン外装も装備している。

新開発2:カーボン外装類

サイドカバーやフェンダーは軽さと強度に長けたドライカーボンで製作。一般製品よりも折り目が太い特注の綾織りのためアピール度が高く、ひと目でカーボン製パーツと分かる。フロントフェンダーはステー部もカーボンで製作し、ラジエターのサイドパネルやスモールパーツも用意する。これら外装パーツ製作のノウハウも、ヘリテイジキットに繋がっている。

その後、アルミタンクも登場

純正タンクの形状をキープしながら、STDの17Lから3Lアップした容量20Lを実現。重量はSTDの4.99kgに対して3.25kgと大幅に軽量。タンクの側面にはヨシムラのレーシングマシン同様にプレスで押し出したロゴが映える。

【アルミフューエルタンク】●価格:26万1800円

新開発3:吸気系パーツ

TMS(トルク・マネジメント・システム)は、吸気ファンネル長の変更により、トルクの急上昇を抑え滑らかに上昇させ、コントロールしやすく開けやすいエンジン特性を生み出す。

【TMSファンネルKIT】●価格:5万3900円

’21年6月

外装セット+限定マフラー

’76年のAMAスーパーバイク選手権で活躍したヨシムラZ1をオマージュした外装キットを発売。SPEC2の機械曲ストレートサイクロンは、通常製品のステンレスと異なるフルチタン製で、ヘリテイジキットのみの限定品だ!

新開発4:ヘリテイジKIT

限定50セットのSPEC2は、SPEC1に加え、機械曲チタンストレートサイクロン、X-TREAD(ステップキット)、ケースガード左右、ラジエターコアプロテクター、フレームキャップ、カーボン製リヤフェンダーをセット。

【Yoshimura Heritage KIT SPEC1】●価格:STD/40万1500円、Cafe/53万3500円
SPEC1は塗装済みのタンクとドライカーボン外装一式、クランクケースエンブレムとリザーバタンクバンドをセット。

【Yoshimura Heritage KIT SPEC2】●価格:STD/91万3000円、Cafe/104万5000円


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