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KTM RC390がフルモデルチェンジを遂げた。エンジンはユーロ5に適合し、新フレームと空力性能を向上したカウルを採用。モト3の血統を感じさせる仕上がりだ。本記事ではイタリアにて行われた試乗レポートをお届けする。
●文:ヤングマシン編集部(和歌山利宏) ●写真/取材協力:KTM
【テスター:和歌山利宏】車両メーカーやタイヤメーカーのテストライダーを経てジャーナリストに。コロナ禍以前は毎月のように海外取材に飛び回っていた。ライテクにも一家言アリ。
軽さと安定感を両立し、コントロールが楽しい!
正常進化形とも思える新型RC390だが、はっきり言って従来型とはキャラが異なる。スーパースポーツスタイルのデュークと言えなくもない従来型に対し、新型は純粋なスーパースポーツといった印象なのだ。
お断りしておくが、先鋭化されたという意味ではない。公道への順応性や一般走行での快適は、従来型に勝るとも劣らない。つまるところ、接地感/挙動/マシンへの手応え/操るコントロール性がスーパースポーツそのものということなのである。
9.2kgも軽量化されたことで、これまで以上に扱いやすく、操る可能性を感じさせる一方で、軽量級車にありがちな悪い意味での軽さはなく、しっかりとした安定感がある。
ベースに安定性があるところへ、ライダーが積極的に働きかけ、マシンコントロールしていく。マシンを操るのはあくまでもライダー、といったレーシングマシンに通じる特性を感じてしまうのである。その辺は、モトGPやモト3で独自のマシンで活躍するKTMらしいところでもある。
【KTM RC390】■全長/全幅/全高:未発表 軸距1343 シート高824mm 車重164kg(装備) ■水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 373cc 44ps/9000rpm 3.77kg-m/7000rpm 変速機6段 燃料タンク容量:13.7L ■ブレーキF=φ320mmディスク+4ポットキャリパー R=φ230mmディスク+2ポットキャリパー ■タイヤサイズF=110/70ZR17 R=150/60ZR17 ●色:青×橙 橙 ●発売時期:’22年春 ●価格:未定
【ライディングポジション】従来型から燃料タンク後端が8mm後方になり、シート高も4mm高く、ライポジは微妙にレーシー傾向になったが、決して先鋭化していない。足着き性もまずまずと言える。[身長161cm/体重57kg]
それにしても、ガソリン満タン時で164kgという軽量な車体と、細いサイズのタイヤで、よくもまあ、このような特性を獲得したものである。聞くと、やはり、これは車体のあらゆる要素をひとつずつ綿密に詰めていった結果であるようだ。
特に私が注目したのは、車体のレイアウトだ。新型はシート下の重心近くにあるエアボックスの容量が40%拡大され、その上部にバッテリーや電装品類が収められ、容量が4L以上拡大された燃料タンクはその前方にある。バッテリーを前部に、燃料タンクを後部に置く従来型とは異なる。
新型はマスの集中化には不利だが、これを逆手に取っているのだろうか。あくまでも私の推測ながら、マスが分散することで挙動はダルになり、そのことで安定感を得て、情報を掴みやすくさせているのではないか。
1.5kg軽量化されたフレームは、縦曲げ剛性を同等に、ねじりと横曲げ剛性を落としているという。このしなやかさが豊かな情報や接地感にも貢献しているのかもしれない。
そして、フロントフォークのストロークは125mmから120mmに詰められている。前荷重を掛けた状態で安定させる狙いだろうか。
ちなみに、車体ディメンジョンは、2次減速比の違いから実スイングアーム長が短くなり、フォークオフセットが拡大されるも、基本は従来型から受け継いでいるという。
おかげで、ワインディングでは、軽量車にありがちなイージーさはなく、操っている実感があって、楽しめる。サーキットでも、積極的な荷重コントロールにしっかり応えてくれる。ライディングに取り組み、スポーツする気にさせられるわけだ。
ここイタリアのワインディングには、驚くほど荒れたところもあったが、意外なほど挙動を乱さず、快適に通過することもできた。これには、リヤサスのストロークが150mmと、従来型の値を踏襲していることが生かされている印象である。
そんなわけで、新しいRC390にはマシンへの感触に存在感があって、普通二輪免許で乗れる外国車としての期待を裏切ることはないと思う。
ただし、お断りしておきたいのは、エンジンが373ccの単気筒であることだ。最高出力44psを得たことで、やはり本来の性能を得るには6000rpmからレッドゾーンが始まる1万rpmまでの高回転域をキープする必要がある。一般道を3000rpmでスムーズに流すのに何の問題もないが、必要に応じてギヤダウンして高回転域を使わなくてはいけない。
コーナーではあらかじめ然るべきギヤ段数にセットされていなければならないし、車体にミドルクラスであるかのような安定感が備わっているため、慣れないうちはややもするとレブリミッターを働かせてしまうこともあった。
だが、これは決してネガではない。性能を引き出す軽量級ならではの面白さに溢れ、過剰なパワーに慣れた身には、本来バイクにあったはずの魅力を思い出させてくれるのである。
【エアロダイナミクスが大進化】空力を向上したボディや折り畳み可能な幅広ミラー、大きくなった燃料タンク(9.5→13.7L)、10mmの高さ調整が可能なハンドルバー、幅広シートなどを新採用。
スタイリングは全面刷新。厚みを増したフロントフェイスにはDRLと一体化したLEDヘッドライトや、アッパーカウルに組み込まれた新型ウインカーを採用した。
373ccの水冷単気筒はエンジンマッピングを改良し、トルクを増強。トラクションコントロール完備で、上下対応クイックシフターはオプションだ。アシストスリッパークラッチも備える。
【全体で9.2kgも軽量化】フレームは前モデルから1.5kgの軽量化を達成。スチール製トレリス(格子状)フレームとボルトオンサブフレームに分割(従来は一体型)した新作だ。ブレーキはバイブレ社製で、進入スライドも可能な「スーパーモトABSモード」も備える。フロントディスクはインナーディスクを省略し、960gの軽量化を達成した。
サスペンションはWP製で、ボトムエンドを軽量化したφ43mm倒立フロントフォークは、伸/圧ダンピングの調整も可能になった。リヤショックは伸び側減衰力とプリロード調整が可能なスプリットピストンのWP APEXを装備する。
前後で3.4kgもの軽量化を果たした新作ホイールを採用。
TFT多機能パネルを新採用したメーターは、スマホと接続することで「KTMマイライド」アプリも利用可能。表示内容もカスタマイズでき、環境光センサーで自動調光される。
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