
’21年8月16日にカワサキのSNS上にて、突如その姿が公開されたZ900RS SE。簡単に言ってしまえば、ブレンボのブレーキシステムとオーリンズのリヤショックを奢った、Z900RSの上級仕様という立ち位置の新グレードだ。それらを装備することなどで”より上質なライディングフィールとコントロール性を提供する”と、メーカーは謳っている。ここではSTDとの違いを細部に至るまで比較解説しながら、メーカーに直撃取材した”SEの疑問 Q&A”もお届けしよう。
●文:ヤングマシン編集部 ●外部リンク:カワサキモータースジャパン
ファーストロットはほぼ瞬殺?!
SEをぱっと見て目に留まるのは、初期型Z1の”イエローボール”を彷彿させるグラフィックや、各部にゴールドカラーを配した華やかな佇まいだろう。それらに加えて、ブレンボのブレーキシステムやオーリンズのリヤショックなどの豪華装備も大きな魅力。
価格はSTDの22万円高だが、公開と同時に注文が殺到し、今や予約も受け付けていないとの噂もチラホラ…。ただでさえ人気で品薄のZ900RSに追加されたファン垂涎のこのモデル、STDとの違いについて詳しく見ていこう。
【’22 KAWASAKI Z900RS SE】■全長2100 全幅865 全高1150 軸距1470 最低地上高140 シート高810(各mm) 車重215kg(装備) ■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 111ps/8500rpm 10.0kg-m/6500rpm 変速機6段 燃料タンク容量17L ■キャスター25.0°/トレール98mm ブレーキF=φ300mmダブルディスク+4ポットキャリパー R=φ250mmディスク+1ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●価格:160万6000円 ●色:黒×黄 ●発売日:’22年春頃
特別装備その1:ブレンボのブレーキシステム
フロントのブレーキシステムは全面変更。ブレーキキャリパーはSTDのニッシン製と同じラジアルマウントのモノブロックながら、ブレンボ製のM4.32キャリパーに換装し、ブレーキパッドやブレーキディスクもブレンボに統一。このブレーキディスクのフローティングピンがSTDの5本に対し、10本へと大幅に増えているのは、ディスクハウジングの素材変更(STDの鉄に対しSEはアルミ)に伴い、強度を確保するのが目的だ。
さらにステンレスメッシュホースの採用やブレーキ有効径の拡大、マスターシリンダー径などのきめ細かなチューニングも施され、レバー操作に対するリニアな動きや高いコントロール性を獲得。こうした変化に対応して、SEはABSのセッティングも見直されている。
【SE フロントブレーキ】
【STD フロントブレーキ】STDのキャリパーは異径4ピストンだが、SEのブレンボは同径4ピストン。SEブレーキシステムの隠れた注目点は”有効径”の拡大だ。
STDにSEのブレンボは付けられない!
フロントフォークのエンドピースは、ブレンボキャリパーに形状を合わせたSE専用品(左)。つまりSTDのフロントフォーク(右)にSEのブレンボは装着できない。STDのZ900RSオーナーには少々残念かも…。
特別装備その2:オーリンズのリヤショック
SEのリヤショックはΦ46mmピストンを持つオーリンズS46タイプ。セッティングはカワサキとオーリンズ両社の手によるもので、バネレートはほぼ同じ(STD:99N/mm、SE:100N/mm)ながら伸び側減衰をやや弱めに設定、フロントフォークの設定変更と併せて、スポーツ走行を意識しながらも乗り心地を向上させているという。
セッティングだけでなく、プリロードアジャスターホースの取り回し方を変更したり、シリンダーの密閉性を高めるダブルリップ式ダストシールの採用など、一般市販品のZ900RS用とは仕様が異なるのもSEオーリンズの特徴だ。
【SE リヤショック】
【STD リヤショック】調整機構がプリロードと伸び側減衰の2箇所なのはSTDも同じだが、SEはリモート式プリロードアジャスターを装備し、減衰力も工具不要で変更可能。
一般市販版のオーリンズがコチラ
【オーリンズ KA739 type S46DR1LS】
逆にアフターマーケット品のZ900RS用オーリンズの特徴は、SEには装備されない車高調整機能。より広範囲のセッティング変更が楽しめる。
●価格:15万4000円
まだまだあるぜ!SEだけの特別装備
フロントマスターの小径化
【SE フロントブレーキマスター】ニッシン製のラジアルポンプ式マスターシリンダーは、ピストン径をSTDの19.1mm径から17.5mm径に小径化。ブレンボキャリパーに合わせた最適チューニングが施されている。
専用設定のフロントフォーク
【SE フロントフォーク】金色のアウターチューブでオーリンズと色味を揃えたフロントフォークは、STDよりバネレートを高め、伸び側の減衰を弱めたSE専用セッティングとされる。
眩しいゴールドホイール
【SE ホイール】SEのゴージャス感を引き立たせる金ホイール。部品自体はSTDと共通だが、とにかく映える!
SEだけの赤エンブレム
【SE エンブレム】
【STD エンブレム】エンブレム自体は共通だが、SEは”RS”の文字に赤い差し色を入れることで差別化。ちょっとしたアクセントが心憎い!
3つのブラックアウトパーツ
【SE ブラックアウトパーツ】SEはFIカバーとラジエーターのサイドカバーにブラックアルマイト加工を施し、フロントフェンダーのステーも黒仕上げ。
【STD シルバーパーツ】これらの部分、STDではシルバー仕上げとなっていることがわかる。SEは各部をブラックアウトすることで、車体全体を引き締めているのだ。
飾りじゃない!”オーリンズ”プレート
【SE リヤインナーフェンダー】
【STD リヤインナーフェンダー】STDとは異なり、SEのリヤインナーフェンダーにはオーリンズの刻印入りプレートが装着される。これは加飾に加えて、タイヤの飛び石などからリヤショックをガードし、傷付きやオイル漏れを防ぐための防泥用カバー。前述のダブルリップ式ダストシールの採用と併せ、SE用オーリンズは耐久性向上への配慮が伺える。
SE用のオプションも登場
【ラジエータスクリーン】
SEの登場に併せて設定された純正オプションパーツ。大文字の”KAWASAKI”が存在感を主張!
●価格:1万7490円
気になるSEの疑問をカワサキに聞いてみた!
まだまだ気になる、Z900RS SEの”あれこれ”。カワサキに直撃取材したので、一問一答形式でお届けしよう!
Q1:イエローボール”は’72年の初期型Z1に採用された車体色です。これを’22年モデルのZ900RS SEに採用したのは「Z1生誕50周年」を意識してのことでしょうか?
A1:特に50周年は意識しておりません。
Q2:Z1のイエローボールは黄×緑メタリックのツートーンでしたが、SEのツートーンは緑メタリック部分をブラックに置き換えています。この理由を教えて下さい。
A2:SEは機能面を大幅にバージョンアップし、さらにゴールドフォークや黄色のオーリンズサス、通常モデルではクラシックなイメージを強調しているシルバーパーツのブラック化などの差別化も行っています。車体色にもヘリテイジ寄りのグリーンを持ってくるのではなく、黒で締まりを良くした方が、戦闘力を高めたモデルとしてはマッチすると考えました。”イエローボール改”のイメージです。
Q3:フロントブレーキとリヤショックが変更されたSEは、STDのZ900RSに対し、どのように走行性能やフィーリングが変化しているのでしょうか?
A3:スポーツ走行を意識しつつ乗り心地を向上させています。
Q4:SEはSTDのZ900RSに対し、最低地上高とシート高がそれぞれ10mmずつ増加しています。この数値変化の理由を教えて下さい。
A4:オーリンズ製リヤショックを採用し、A3で述べたフィーリングを達成するためです。乗車1Gの沈み込みが多いため、足着き性はSTDとほぼ同等です。
Q5:SEは多くのプラザ店で既に受注上限に達していると聞きますが、台数限定のモデルなのでしょうか?
A5:台数限定ということではありません。その他のモデルと同様です。
とくに編集部が気になったのは5問目。SEは既にディーラーに割り振られた台数を大幅に上回る注文が入っており、新規の注文を受け付けていない店舗が多い。このことから「SEは台数限定だ」という噂が流れているものの、コロナ禍で生産の見通しを立てることが非常に難しく、メーカー側もこれ以上の台数が作れるのか否か、確定的なコメントが出せない…というのが現状と推察される。
少なくとも世界限定500台を謳うZX-10RRのような限定生産車ではないことは確か。ということは、欲しい人にはまだチャンスがある!?
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