BMWの4輪スポーツ最高峰モデルに与えられる「M」の称号を冠したスペシャルマシンが、2輪としては初登場した。スーパーバイク世界選手権への参戦も担うこととなったこのM1000RRの実力を、CBR1000RR-RとS1000RRを相手に全開テスト。公道走行のインプレッションも含め、テスター丸山浩氏/神永暁氏が今回のテスト結果を総括する。
●まとめ:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:長谷川徹
スタイリング:チタンマフラーやビレットパーツ満載 ライディングポジション:足着きの厳しさは1番 エンジン:いずれも直4だ サスペンション&ホイール:M1000RRは足まわりもレーシー その他装備 ウイ[…]
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公道走行インプレッション:我慢と引き換えに、手にできる喜びがMにはある
都内にあるヤングマシン編集部から袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県)までは、一般道と高速道路を使って公道での使い勝手もテストした。結論から言うと、公道の走りやすさではS>M>RR‐Rの順。それでもスーパースポーツをツーリング的に使うというのは、どのマシンを取っても正直なところ辛い。今回は高速道路上で大渋滞に見舞われたが、エンジンからの熱さに対しても3車同様に我慢を強いられる。
そんなストリートで、やっぱり一番身体に堪えるのはライディングポジションだ。もっともきつい前傾姿勢を強いられるRR‐Rは、手首がジンジンしてきてしまう。これに比べるとMやSはハンドル位置が若干高めで少しはラクだ。ただ、ライディングポジション的に同じようなMとSだが、Mはサスペンションに加えてスペシャルシートもサーキットにフォーカスした硬めのセッティングになっており、乗り心地ではゴツゴツ感が高め。足も地面に届きにくくなるなど、大きな違いがある。この点、SやRR-Rは電子制御式のセミアクティブサスペンションを持っており、シチュエーションが様々に変わる公道ではその優位性が光った。
それでもMはSと同様に、クルーズコントロール/ETC車載器、それにグリップヒーターまで標準装備しているというところに、単純にレース用に改造されることを前提としたホモロゲーションモデルには終わらせず、公道でもレーシングスペックを乗り回す喜びを楽しんでほしいというBMWの意思を感じとれた。そういった点では、エンジンをレーシング寄りに高回転化したのに低中速域を犠牲にすることなく、街中でもSと遜色なくスムーズに乗れる出力特性になっていたのも評価できる部分だ。
派手なウイングレットの付いた外装やホイールまでふんだんに使ったカーボン素材で、見た目の迫力は満点。そんなスペシャル感あふれるレーシーなマシンを公道で転がす優越感に浸れるのは、Mならではの特権。我慢と引き換えに手にするのもけっして惜しくないだろう。
M1000RRテスト総括
〈丸山〉M1000RRはもはや公道も走れるレーシングマシンだ
今回乗ったM1000RRは、Mコンペティションパッケージが付いて428万円! STDでも約378万円となかなかの価格で、250万円を超える他の2台も十分高価なのが霞んで見えるほど。その中でMを選ぶ理由としたら何だ? レースで勝つためのコンマ1秒を求めるため? でも、タイム的にはホンダと互角。それにSBKで強いのはBMWでもホンダでもなく、カワサキだ。やっぱり突き詰めていくと、「装備しているものはどれもレーシングスペックの豪華品、そんなスペシャルマシンを公道で乗り回せる」という優越感に収斂していくのではないだろうか。走りだけならS1000RR+オプションもコスパ的に魅力だろう。
〈神永〉豪華装備好きにはたまらない
3台とも200ps以前のスーパースポーツよりパワーは上がっているものの、電子制御の進化で乗りやすさも同時に上がり、攻め甲斐のあるマシンに仕上がっていた。そんな中でM1000RRは、高回転まできれいに回るエンジン特性や、サーキット走行にセッティングが整ったサスペンション、ひと際軽さが感じられるハンドリングと、いかにもレーシングチューニングを受けたスペシャルマシンという感じが全面に表れていた。それでいて公道性能を完全に捨て去ったというわけでもなく、スーパースポーツなりの乗り心地の辛さはあるものの、ちゃんと公道もスポーツ性能を感じて走ることができるようにまとめられており、そんなところがBMWの「M」らしい部分。丸山会長も言っていたが、今回の中でもっともサーキット寄りだったのは、ライディングポジション的にもRR-Rだったかも。どんな人がM1000RRを買うかと言ったら、もうカーボン大好き/鍛造大好きといった豪華パーツに目がない人たちじゃないかな。かく言う僕も、おカネがあったら3台の中で一番欲しいと思えるのがM1000RR。やっぱり、こんなスペシャルなマシンを一度は自分で所有してみたいですよ。ウイングレットも大きくて目立つしね。
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