陸上の花形? 短距離走だ!

ゼロヨン最速はZX-14R[’13]! YM歴代実測ランキング〈0→400m加速タイム〉

YM歴代実測ランキング〈0→400m加速タイム〉

ひと昔前に比べれば絶対視されなくなったとはいえ、”速さ”がバイクのパフォーマンスを示す重要な指標であることに変わりはない。そこでヤングマシンが長年に渡って取り続けている実測走行データを総ざらい。本記事では停止状態から400mまでの加速タイムを競う”ゼロヨン”の歴代ランキングをお届けする。


●まとめ:ヤングマシン編集部(沼尾宏明)

※当記事に掲載されている各テストは、路面状況/気温/ライダーなどが異なり、厳密な同一条件ではありません。すべて参考数値とお考えください。また、『ヤングマシン』本誌以外の計測データが一部含まれています。ご了承ください。

トルクもパワーも必要。ゼロヨン=使える”速さ”の勝負

バイクの加速性能を知るメジャーな手法が”ゼロヨン”だ。最高速とは異なり、普段の走りでも感じられる”速さ”に直結しており、ひと頃はカタログにもタイムが記載されていた。また、この距離で行われるドラッグレースも多く、米国を中心に人気を博している。

クルマの世界では1000万円超の高級スポーツカーで11秒台だが、バイクなら10〜11秒台がズラリ。しかも100万円台から買えるのだから、コスパを考えれば圧倒的に優秀だ。

さて、歴代の『ヤングマシン』誌実測記録では、驚異の10秒切りを果たしたカワサキ ニンジャZX‐14Rが1番時計を叩き出した。各車はすべてノーマルながら、気温や路面状態など同一条件ではないため、あくまで参考数値として捉えてほしいのだが、9秒台は圧巻。頭ひとつ抜けた加速力だ。ゼロヨンは、トルクの太さや車重の軽さが重要ながら、400m地点では250km/hに迫り、最高速も求められる。ZX-14Rの10秒切りは、これらをバランスよく備えた賜物だろう。

2位は、’21年4月に登場したばかりのスズキ新型ハヤブサ。1位とは0.11秒差に過ぎず、あとわずかで9秒台が見えてくる。新型は3位の先代ハヤブサを上回っており、ダッシュ力が確実に進化していることを証明した。

これらに僅差で続くのは、ホンダとヤマハによる自慢の旗艦スーパースポーツ(SS)。大排気量のトルクでタイムを稼ぐZX-14Rとハヤブサに対し、1000ccの中高回転パワーで勝負している。以降の順位についてもジックリ見比べてほしい。

第1位〈9.907秒〉カワサキ ニンジャZX-14R[’13]:打倒ハヤブサのために磨き上げた弾丸超特急が、唯一の10秒切り!

旗艦ZZR1400の後継機として、’12年にデビューしたメガスポーツ・ZX-14Rが歴代唯一の9秒台でゴール。カワサキの旗艦は、長年ゼロヨンでハヤブサの後塵を拝してきたが、当時トップ級の200ps+16.6kg-mで打倒ハヤブサに見事成功した。’20年型を最後に日欧では生産終了したが、新型登場の噂も根強い。

【’13 KAWASAKI Ninja ZX-14R】

ハヤブサを上回る1441cc直4に、空力フォルムやトラクションコントロールを融合。丸山浩をして「新幹線のグリーン車」と言わしめるほど走りはスムーズだ。

ヤングマシン実測データ唯一の9秒台は、仙台ハイランドのドラッグコースでマーク(’13年10月号)。ゼロヨンタイムは、スーパーチャージャー搭載で後発のニンジャH2(写真右)すら上回る。

第2位〈10.017秒〉スズキ ハヤブサ[’21]:9秒台目前! 9ps減でも新型の方が速い。現役最強は譲らない!

’21年に復活を遂げた現行の3代目ハヤブサが銀メダルを獲得。体感では先代より明らかに中間パワーが増強されており、最新の電脳アシストやクイックシフターも記録に貢献したようだ。記録はAモードだったが、さらに設定を煮詰めれば9秒台もイケそう!

【’21 SUZUKI HAYABUSA】

’13年ぶりに刷新。馬力は9ps減の188psだが、幅広い領域でパワー&トルクが増し、実用的な速さがアップした。タイムは日本自動車研究所(JARI)で測定(’21年7月号)。

第3位〈10.052秒〉スズキ ハヤブサ[’13]:旧型も今だ超速。13年前デビューながら実力は一線級

ZX-14Rの登場までゼロヨン無双を誇った2世代目ハヤブサが3位を獲得した。デビューは’08年で、日欧では’18年型で生産終了。最新モデルのような電脳デバイスもないのに、並み居る強敵を退けてこの順位なのだから驚異的。10秒を切っても不思議ではない。

【’13 SUZUKI HAYABUSA】

’08年に全面改良を受け、1299→1340ccに進化。197ps+15.8kg-mをマークし、加速性能では初代を上回る。ZX-14Rと同時、’13年10月号でテストした際、このタイムを記録した。

第4位〈10.088秒〉ホンダCBR1000RR-R[’20]:怒濤のパワーが途切れない

4位は、’20年に投入されたホンダの入魂作・CBR1000RR-R。直4SS最強の217psを誇り、シフトアップでも加速の落ち込みが少ないのが特徴だ。測定は冬のJARI(’20年4月号)で、路面温度が高ければもっと記録が伸びそう。

【’20 HONDA CBR1000RR-R】

第5位〈10.166秒〉ヤマハYZF-R1M[’17]:8耐4連覇の実力

低回転からフラットに伸び上がり、200psを発生する唯一無二のクロスプレーン直4がタイムに直結。会場はウエットのJARI(’17年11月号)で、この記録は立派だ。なお、5年ぶりにマイナーチェンジした’20モデルは未測定。

【’17 YAMAHA YZF-R1M】

0→400m加速タイム トップ20:直4カウル付きが大挙ランクイン。中にはネイキッドも

200ps級が居並び、空力で有利な直4フルカウル勢が上位を独占。カウルを持たないVMAXが14位、ロケットIIIが20位と健闘した。ともに問答無用の大トルクで押し切った成果だろう。3気筒ではMT-09が最高位だ。

※ランキングは、原則的にヤングマシンが過去に測定した公道走行市販車のみを掲載。同じモデルで複数回テストをしている場合、最速タイムを掲載している。

番外編:気になる面々をピックアップ

〈10.426秒〉カワサキ ニンジャH2R[’15]:十分速いが真価はまだまだ

レーサーなので対象外だが、公道走行可能なH2に対し、本来の性能を引き出した仕様がH2R(写真右)。驚愕の310ps+αを叩き出すが、本領を発揮するには距離が足りず、まずまずのタイムに収まっている。

〈11.198秒〉ミライ 韋駄天ゼロ[’15]:電動バイクも侮れない!

’15パイクスピークで部門優勝した、モーター+バッテリーで走る完全電動レーサー。瞬時に最大トルク14.7kg-mを発揮するため、タイムは上々だ。なお、ハーレーの発表ではライブワイヤーが電動バイク最速の11.156秒を記録したという。

〈13.009秒〉ホンダNSR250R[’93]:やっぱり2ストは速い!

現行250より20kg以上軽く、45psの2ストレプリカ。社外品のJhaチャンバーを装着したテスト車は12秒台間近で、ZX-25Rを大きく上回る。

〈14.253秒〉カワサキ ニンジャZX-25R[’21]:4気筒パワー炸裂! 現行250最強だ

現行唯一のニーゴー直4とシフターにより、クラス最速を記録。ちなみに2気筒のCBR250RRは14.4秒、ニンジャ250は15.2秒。ニンジャ400は13.5秒だった。

参考:”速い”は絶対的真理なり

4輪で史上最速は3.58秒:ロケットでブッ飛べ!

世界最大のドラッグレース団体=NHRA(全米ホットロッド協会)における公認の史上最速タイムが3.623秒。ただし’09年から事故防止のため、計測距離が1000ft(304.8m)に短縮されていた。さらに調べると、非公式ながらロケットエンジンの4輪が、’84年に英国でゼロヨン3.58秒を記録している。

’19年9月、ジョンフォースレーシングのマシンがNHRA公認の世界記録3.623秒を達成。ロングノーズの車体にニトロガスを搭載する最高峰のトップフューエルクラスに属し、1万馬力超&500km/h超をマークする。※画像はNHRAより

バイクの世界最速は5.507秒:やっぱりニトロ!

ギネス世界記録でバイクのゼロヨン最速は、ピーター・スヴェンソンによる5.709秒(’12年8月)。その後まだ認定されていないが、’19年11月にラリー・マクブライドが5.507秒で記録を更新している。ともにニトロを使用したトップフューエルマシンで、1000馬力超だ。

“スパイダーマン”ラリーが、プーマ製1511cc直4マシンで記録更新。※写真はサイクルドラッグより

自然吸気の最速は6.720秒:心臓はハーレー製

自然吸気(NA)マシンで争うNHRAのプロストッククラスでは、ゼロヨン6.720秒がギネス世界記録。当時のマシンは、専用フレームにハーレーFXDRベースの2621ccVツインを積み、400ps&24.4kg-mオーバーを誇る。このクラスではハヤブサエンジンも活躍中だ。

’19年3月、バンス&ハインズのアンドリュー・ハインズが世界記録をマーク。※画像はNHRAより


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