
GSX-S1000に続き、ブランニューモデルとして登場したGSX-S1000GTは、2005年モデルからはじまるGSX-R1000の並列4気筒エンジン、通称“K5”を磨き上げたパワーユニットを搭載する。基本的な構成は変わっていないものの、ユーロ5排出ガス規制に適合しながらパフォーマンスを向上しているという。
スムーズなトルクデリバリーと、ロー&ミッドレンジの増強を両立
SUZUKI GSX-S1000GT[2022 model]エンジン
2015年にGSX-S1000シリーズが登場した際、そのエンジンが2005年モデルのGSX-R1000に端を発した並列4気筒だったことが話題になった。2005年当時でも178psという高いパフォーマンスを発揮し、スーパースポーツとしてはロングストローク傾向の設定で、ストレートなトルク特性はレースでも武器となっていた。最新のエンジンに比べれば洗練の度合いではかなわないかもしれないが、ライダーの意思に忠実かつ力強く反応するこのエンジンを、今も名作と評するライダーは少なくない。
そんなK5ベースのエンジンを、新作カムシャフトや新作キャタライザーなどでユーロ5排出ガス規制に適合させつつパフォーマンスを向上、さらに電子制御スロットルを核としたエレクトロニクスで扱いやすさや利便性まで全方位に強化し、新型GSX-S1000/GSX-S1000GTに搭載している。
目指したのは、混合交通など全ての状況における扱いやすさの追求、そして長距離ラン快適性とスポーティさの両立だ。
エンジンは幅広い回転域でのトルク増強とスムーズなパワーデリバリーを追求。従来あった特定の回転域でのトルクの谷を全面的に解消し、スペック上の最大トルクはやや下がっているものの2000~11500rpmにおける平均トルクはむしろ1.9%強化された。極低回転域のトルク増強も目覚ましい。
ベースはK5エンジンだが、カムシャフトは吸気/排気側とも新しいプロファイルが与えられ、バルブスプリングも新作。新しいアシストスリッパークラッチを採用し、エキゾーストシステムには新作膨張室に2つのキャタライザーを内臓する。SET(スズキエキゾーストチューニング)システムの位置も変更された。
ライドバイワイヤになったスロットルは、ボアサイズを従来のφ44mmからφ40mmに縮小。エアクリーナーボックスは新形状になり、容量をやや縮小するとともに軽量化した。これらにより、ユーロ5適合に貢献するとともに低中速域のトルクを増強しただけでなく、2psのパワーアップも達成している。吸気音も従来のような迫力を継承しているというから楽しみだ。
黄色い部分が従来モデルからの変更箇所。具体的には、2次エアリードバルブにはじまり、吸排気カムシャフト、バルブスプリング、カムチェーンテンショナーまわり、クラッチシステム、ギヤシフトカム、シフトカム、クラッチリリースカムシャフト、マグニートカバーだ。
スズキの社内テストでは、GSX-S1000Fに対し0-200m加速で0.06秒、0-400m加速で0.1秒短縮している。
カムプロファイルは吸気/排気ともにわずかにローリフト化し、オーバーラップも小さくすることで未燃焼ガスの吹き抜けを低減した。これによりローエミッションとしつつパフォーマンスとコントロール性のバランスを向上している。
スズキクラッチアシストシステム(SCAS)を新採用。いわゆるアシストスリッパークラッチで、加速/減速により生じるトルクによってクラッチの圧着力を高めたり、過大なエンジンブレーキでリヤタイヤがスリップするのを防ぐ。レバー操作が軽くなるのもメリットだ。
SUZUKI GSX-S1000GT[2022 model]
主要諸元■全長2140 全幅825 全高1215 最低地上高140 軸距1460 シート高810(各mm) 車重226kg(装備)■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 999cc 152ps/11000rpm 10.81kg-m/9250rpm 変速機6段 燃料タンク容量19L■キャスター25°/トレール100mm タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/50ZR17 ※諸元は欧州仕様
※欧州仕様の現行GSX-S1000Fは150ps/10000rpm、11.02kg-m/9500rpmで、国内仕様とは表記が異なっている
SUZUKI GSX-S1000GT[2022 model]
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