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コロナ禍が影響して新車の入荷数が増えない一方で、密を避けられる遊びとしてバイクの人気がちょい復活。結果、大量のバックオーダーを抱えている車種も多い。では、注文が殺到する車種はどこに魅力があるのか? 丸山浩氏があらためて試乗して、売れてる理由を再検証! 本記事では実に幅広い層に選ばれている、カワサキ ニンジャZX-25Rについて取り上げる。
●まとめ:ヤングマシン編集部(田宮徹) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:カワサキ
レーサーに通じる雰囲気はリッタークラスよりもむしろ上!?
発売開始は’20年9月で、カウントできる期間は4か月しかなかったのに、それでも’20年に約3000台の新車販売台数を記録したニンジャZX-25R。’20年のランキングは6位だったが、1年をフルに使える’21年はどうなるのか、コロナ禍によるデリバリー問題があるため不透明とはいえ興味深い。
まぁこのモデルに関しては、事前にかなりの反響があったので、スタートダッシュを決めたことになんら驚きはないが、とはいえ実際に購入しているユーザー層を見てみると、若い世代を含めて想像以上に幅広いようだ。
この要因となっているのは、何よりもまず”雰囲気”があることに尽きると思う。本格的でフラッグシップとなるスーパースポーツ、つまりカワサキならニンジャZX-10Rに通じるようなイメージが、しっかり表現できている。
といってもこれ、スタイリングのことだけではない。走りにもスーパースポーツらしさが満ちているのだ!ただし、そこはあくまで250cc。パワーがあるわけでもないし、車体も軽い。その結果、乗りやすさを備える。
【’21 KAWASAKI Ninja ZX-25R SE KRT EDITION】■全長1980 全幅750 全高1110 軸距1380 シート高785(各mm) 車重184kg ■水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 249cc 45ps/15500rpm 2.1kg-m/13000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量15L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=110/70R17 R=150/60R17 ●価格:91万3000円
漠然としているが、この“乗りやすい”はとても重要で、これが確立されていることでそのバイクがターゲットになるユーザー層がグッと広がる。その結果、売れるバイクになりやすい…というわけだ。
このバイクの場合、かつて4気筒250ccレーサーレプリカに乗っていた人から、憧れていたけど(あるいは興味はあったけど)当時は買えなかった人、逆にライダーとなったときにはすでに4気筒250ccの新車がなかったライダーや、そういうかつての4気筒とは一切関係なくこのバイクに興味を持った人まで、購入層はかなりバラバラだろう。しかしどの層であっても、乗りやすければ(あるいは乗りやすそうであれば)、一歩踏み出して手に入れてみようかという気になるのだ。
スポーツバイク好きなら、フラッグシップスポーツに対する憧れを持っている人も多いと思うけど、そうはいっても多くの人が買うことを躊躇していたはず。だからZX-25Rが発表されたときに思ったはずなのだ。「おお、これなら乗れるぞ!」と。
実際のところ、跨がっても足着き性は良好だし、車体はコンパクト。サイドスタンドから引き起こす段階で、もう軽い。ワインディングを走らせると、回してナンボのエンジンだから、中~高回転数をキープしていないと走らないんだけど、それがまたレーシーな雰囲気に磨きをかけてくれる。どんなに回したって、所詮は45ps。気持ちばかりで、車体がロケットのように加速するなんてことはないから、安心して乗ることができるのだ。
身長168cm/体重61kgの丸山氏でも両足の裏が接地する良好な足着き性。ハンドル垂れ角を少しつけることでレーシーな雰囲気を醸し出すが、このコンパクトさなので公道でも疲れない。
そう、ただ乗りやすいだけでは受け入れてもらえない。そこに”楽しさ”が詰まっていないと。そういう意味でZX-25Rは完璧。ストリートでも制限速度を超えない範囲で4気筒エンジンの高回転フィーリングを楽しめてしまうのだ。例えば高速道路では、6速トップギヤでも100km/hで9000rpmオーバー。これがリッタースーパースポーツだったら、2速くらいの話だろう。
これはワインディングでも同じ…というかそれ以上に差が出ると思うが、リッタースーパースポーツを峠道に持ち込んでも、エンジンが気持ちいい領域なんて到底使えない。それを味わいたければサーキットに行くしかないし、そのサーキットですら200psのモンスターにどれくらいの人が気持ちよさを感じられるか…。
でもZX-25Rなら、公道でも”ファオーン…”と気持ちよく吹け上がる4気筒エンジンを堪能できる。最初に“雰囲気”という話をしたけど、むしろレーサーに通じるような”雰囲気”ならリッターよりも250ccのほうが上なんじゃないかと思う。一度でも試乗したら、その虜になること間違いなし!
売れてる理由その1:その気になっちゃうクイックシフター
ニンジャZX-25Rのうち上級版に相当するSEには、シフトアップ&ダウンの双方向に対応したクイックシフターが標準装備されている。フラッグシップと同様の電子制御を250ccで体験できるというだけで魅力なのだが、むしろその恩恵と楽しさのレベルは、リッターより250ccのほうが上。パワー&トルクがあるリッタークラスの場合、公道でシフトチェンジする機会はそれほど多くない。
対して250ccは、とにかく回していないと走らないから、必然的にシフトチェンジの回数は多くなる。高回転域まで引っ張って、シフトチェンジして、また引っ張って…を繰り返すうち、その回数の多さからクロスミッションのバイクに乗っているかのような気持ちになり、これまたレーシーな雰囲気だ。
上級版のSEは、250ccクラスで初めてクイックシフターを標準装備。上下双方向対応で、シフトダウン時はオートブリッピングで回転数を調整してくれる。2500rpm以上で正常に作動するが、公道でもほぼその領域なので実用的でもある。
売れてる理由その2:インナーまで付いたガチ・フルカウルでサーキットも楽しめる
このバイクを購入してサーキットデビューを…なんて考えている人もいるだろうが、そう思わせてくれるのも250ccクラスならではの魅力。200psでトップスピードが300km/hのリッタースーパースポーツを持ち込むとなったら、そこまで出すか否かはともかくそれなりの覚悟というか気持ち的なパワーが必要かもしれないが、ZX-25Rなら最高速は180km/h程度。サーキット走行はもうちょっと敷居が低いものに感じてもらえるはずだ。
でもこのバイク、サーキットを攻める気持ちよさはリッターにも引けを取らないし、むしろアンダーパワーならではの奥深さを味わえる。
ただカウルをまとうだけでなく、フラッグシップと同じようにちゃんと内側までカバーされた本格的な設計。センターラムエアダクトも飾りではなく、インナーカウル左下側のダクトを通じてエアボックスに空気を導いている。サーキット走行を楽しむのにも向いているのだ。
売れてる理由その3:トップカテゴリーにも負けないフェイスのカッコよさ
もちろん、峠道やサーキットを走るとき以外でも、この4気筒エンジンがもたらす面白味は健在。公道の常用域で気持ちよさを感じながら、スーパースポーツの雰囲気を堪能できる。フロントフェイスなど、デザインもトップカテゴリーに負けないものだ。
カワサキは、フラッグシップから250ccまでニンジャシリーズに共通イメージのフェイスデザインを与える戦略を続ける。さすがに今度のZX-10Rはだいぶイメージを変えてきたけど、上との”つながり感”の演出がうまい!
このバイクなら、ロングを含めたツーリングユースのイメージも湧きやすい。「スーパースポーツでツーリング? 」と思うかもしれないが、車体がコンパクトな250ccクラスなら、ツーリングでも存分に使えるはずだ。
スーパースポーツに乗るからといって、全員がサーキットやワインディングを走るのが目的じゃないはず。思いっきりツーリングで使えそうというのも、”売れてるバイク”になるためには重要な要素だと思う。
乗りやすくて、ちゃんと世界観が確立されていて、走らせていて気持ちよく、しかも意外と幅広い用途で遊べそう。こう考えてみると、ヒットの条件は完全に揃っているのだ!
コンパクトながら、本格的なスーパースポーツスタイルを確立。フレームとスイングアームはスチール製で、接地感を得やすい特性に仕上げてある。極端にショートなマフラーは、車体下部にボックスを設けて容量を確保。上級版のSEはフレームスライダーを標準装備。
分析結果:ニンジャZX-25Rが売れているのは ~みんなが乗れるレプリカ~ だから!
スーパースポーツのイメージと走りが、非常によく表現できている。でも、絶対的なパワーがあるわけではない。それどころか、我々の想像からしたら低いくらい。でもだからこそ、乗りやすい。結果的に、誰でもスーパースポーツのイメージに浸りつつ操ることができるのだ。
とはいえ、ただ乗りやすいだけじゃダメ。ちゃんと、フラッグシップと同じスーパースポーツの雰囲気がないと。ZX-10Rを本物とするなら、ZX-25Rはどこかレプリカなんだけど、その楽しさは本物だし、楽しめるかどうかで言えば本物以上だから、多くの人に受け入れられているのだ。
カワサキ×オーリンズの共同開発!! リヤショックアブソーバー登場
カワサキが、ニンジャZX-25R用リヤショックをオーリンズと共同開発。全国のカワサキ正規取扱店で先行発売された。S46Pタイプで、-2mm~+4mmの範囲で車高調整が可能。もちろんフルアジャスタブルで調整範囲が広く、サーキットでも真価を発揮しそうだ。
●価格:19万3600円
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