“普通二輪免許で乗れるBMW”として’17年に登場した「G310R」が、ユーロ5に対応するのと合わせてビッグマイナーチェンジを実施した。電子制御スロットルやスリッパークラッチを採用し、灯火類をオールLEDとしたのがポイントだ。ヤングマシンのメインテスター・大屋雄一氏による試乗インプレッションをお届けする。
●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:BMW Motorrad
[◯] 電子制御スロットルの反応は良好。軽いクラッチも美点
’17年6月から日本での販売がスタートした「BMW G310R」。インドのTVSモーターカンパニーで製造されており、BMWながら63万7000円という低価格で登場し、大きな話題となった。今回試乗する’21モデルは、ユーロ5に対応するため大がかりなマイナーチェンジを実施。スタイリングの刷新をはじめ、電子制御スロットルやスリッパークラッチの採用など、従来型オーナーが嫉妬するような変更を受けているのだ。
まずはエンジンから。前方吸気&後方排気、後傾シリンダーというユニークな構造の312cc水冷シングルは、最新の排ガス規制をクリアしながら従来と同じ最高出力34psを維持する。1万rpmから始まるレッドゾーンまでフラットにパワーが盛り上がり、シフトダウンをサボっても力強く加速する。電子制御スロットルのレスポンスはワイヤー時代との差が分からないほど良好で、もう少しリターンスプリングが軽くてもいいとは思うが、基本的には問題なし。この新型には「オートマチックアイドルブースト」という、発進時のエンジンストールを抑止する機能が採用されており、特にUターンなどで心強かった。スリッパークラッチのおかげでレバーの操作力が軽いのもポイントで、付け加えるとそのレバーに調整機構が付いたのも実に嬉しい。
ハンドリングは、極めてニュートラルで扱いやすいものだ。フロント141mm/リヤ131mmという長めのホイールトラベル量、前後のラジアルタイヤ、そしてしなやかなスチールチューブラーフレームの組み合わせにより、微速域から接地感に優れており、峠道でペースを上げてもそれが続くのだ。決して排気量が大きいわけではないので、スロットルのオンオフだけでは車体のピッチングは発生しにくいが、それが巡航時の疲れにくさにつながっており、ネイキッドながらロングツーリングにも十分対応できそうだと感じた。
ブレーキは、この車重とパワーに対して必要十分な制動力を有しており、コントロール性も良好。車両全体の印象を良くしているのは、調整可能となったレバーのおかげだろう。
[△] 不満は特に見当たらず。良心的なプライス微増
’20モデルは62万3000円~だったので、価格は1万4000円しか上昇していない。ヘッドライトとウインカーのLED化で質感がアップしたにもかかわらず、この値付けは良心的と言えるだろう。不満らしい不満は特に見当たらなかった。
[こんな人におすすめ] BMWの哲学を小さなボディに詰め込んだ1台
ライバルはKTMの390デュークやヤマハのMT-03あたりか。同じロードスターのS1000Rに近い攻撃的な外観を手に入れたが、扱いやすいこと、また旅にも使えるという軸足はブレていない。これでほぼ価格据え置きというのは驚きだ。
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