普段使いからダート走行まで! ホンダX-ADV試乗インプレッション【電脳化促進で魅力底上げ】

ホンダX-ADV試乗インプレッション

アドベンチャースピリッツを持つモーターサイクルとして’17年に登場したホンダ「X-ADV」がフルモデルチェンジ。共通プラットフォームを持つNC750Xと同様の変更を受け、さらに音声操作機能のHSVCSを750ccクラスで初実装。追加されたグラベルモードも含めてチェックしたぞ!


●まとめ:大屋雄一 ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ホンダ

グラベルモード追加で走りがさらに瑞々しく

NC750Xが’21モデルで新世代プラットフォームへと進化したことを受け、同シリーズのX‐ADVもフルモデルチェンジした。フレームは軽量化とスペースの拡充をテーマに新設計となり、270度位相クランク採用の745cc水冷パラツインは最高出力を4psアップするとともに、電子制御スロットルを新採用。ライディングモードは新型NCの4パターンに対し、グラベルを追加して5種類となった。

【’21 HONDA X-ADV】■全長2200 全幅940 全高1340 軸距1580 シート高790(各mm) 車重236kg ■水冷4スト並列2気筒SOHC4バルブ 745cc 58ps[43W]/6750rpm 7.0kg- m[69Nm]/4750rpm 電子式6段変速(DCT) 燃料タンク容量13L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70R17 R=160/60R15●色:灰(艶無) 黒 ●価格:132万円

【ライディングポジション】シート高は、コンセプトの近いNC750Xの800mmに対して790mmとわずかに低いが、ボディの幅が広いので足着き性はややつらい。ハンドル幅は本格的なデュアルパーパス並みに広く、フラットダートで抑えが効きやすい。[身長175cm/体重:62kg]

まずはエンジンから。走行モードはスタンダード/レイン/グラベル/スポーツ/ユーザーが選択でき、それぞれで出力レベル/エンジンブレーキ/DCTの変速プログラム/トラクションコントロール/ABSの設定が連動して切り替わる。グラベルモードはスポーツに対して変速プログラムとABSモードがよりフラットダート向きになる設定だ。実際に未舗装路で試してみると、高めの回転数を維持しながら多少のスライドを許容してくれるし、エンジンブレーキも強めに発生するのでコントロールしやすいのだ。そして、どのモードでも印象的だったのは開け始めのレスポンスの優しさで、特にUターンのような微細な操作が求められるシーンでそれを実感。電子制御スロットルの調律が行き届いていることの証だ。

続いてハンドリング。フロントホイールは17インチだが、穏やかな舵角の付き方は19インチのようで、これがフラットダートでの安定性に寄与しているようだ。舗装路の峠道では、ホイールベースが長いこともあって積極的に向きを変えるタイプではないが、ブレーキングで発生するスムーズなピッチングやギャップ通過時の衝撃吸収性はモーターサイクルのそれであり、スクータータイプとは一線を画す。特に気に入ったのは乗り心地の良さで、NC750Xよりも明らかに前後サスの動きがスムーズだ。加えて、5段階に高さを調整できるウインドスクリーンの防風効果が驚くほど高く、ロングツーリングでの快適性ならNCシリーズでナンバー1と言っていいだろう。

実装された音声操作機能のHSVCS(ホンダスマートフォンボイスコントロールシステム)は、まさに時代のニーズに応えた便利なシステムだ。実際にナビを試したところ、声で目的地を入力でき、メーターに経路を表示させるまでの流れもスムーズ。触っているうちに慣れるというイージーな操作性も好印象だ。

普段使いからフラットダート走行まで許容するNCシリーズのプレミアムモデル。実に侮れない1台だ。

NC750X〈DCT〉よりも軸距が45mm長くバンク角も深くはないので、旋回力はそれなりだ。とはいえ、それを恨めしく思うほどに前後サスの動きがNCよりもいいのは美点だ。

【新設計フレーム採用。単体で約1kg削減】右側クランクケースを強調した新デザインに。フレームはNC750Xと同様にパイプ構成の変更や肉厚最適化などを受け、単体で約1kgの軽量化を達成。アルミHPDC(高圧鋳造)のスイングアームは先代からそのまま継承。

【パワーアップ&燃費性能向上】エンジンは軽量ピストンの採用やカウンターウェイトの重量最適化、バランサー軸径や吸排気系の見直しなど、NC750Xと同じ内容の変更を受け、単体で1.4kg軽量化。最高出力は54psから58psへ向上。

【足まわりは従来型から変更なし】標準装着タイヤがBSのトレイルウイングから同AX41に変更された以外、足まわりは先代から継承。サスは前後ともプリロード調整が可能で、前は伸び減衰力も。

【新設のDRLは自動切り替え式】設定を”自動”にすると、周囲が明るい時にはDRLが点灯し、暗くなるとロービームが点灯。DRLは減光する仕組みだ。新型スクリーンは調整幅が136→135mmへ。エマージェンシーストップシグナルが追加された。

コンソールのデザインを一新。パーキングブレーキはフロントインナー右下からハンドル右に移設され、操作性が格段に向上した。ナックルガードは小型化。

シート高790mmは変わらないが、前方をスリム化して足着き性を向上。収納スペースは容量が1L増えて22Lに。この内部にある電源ソケットはシガーソケットからUSBタイプCとなり利便性が大幅にアップした。

音声で操作できるHSVCSを新たに導入

国内ではCB1000Rに続いてHSVCS(ホンダスマートフォンボイスコントロールシステム)が採用された。車両とスマホをブルートゥースで接続し、ヘッドセットによる音声入力とハンドル左側の4ウェイスイッチで各種コンテンツを操作するシステムだ。このHSVCS導入に伴い、メーターは5インチカラーTFTとなり、表示できる情報が大幅に増えた。

操作できるコンテンツは通話/ナビ(ターンバイターン方式)/音楽/メッセージ送受信の4種類だ。実際にナビを試したところ、目的地検索はしゃべるだけで入力でき、メーターに表示させるまでの流れもスムーズ。非常に便利だと感じた。


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